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『感情豊かな子』に育てたいなら、知っておきたい5つのプロセス

感情豊かな子に育って欲しい。
思いやりがある子になってほしい。
子供の気持ちに寄り添った、子育てがしたい。

子どもの感情を大切にした子育てがしたいと願う親御さんは多いです。一方で、「子どもに寄り添いすぎて、わがままな子になるのではないか?」という声も多くあります。

私は幼少スクールの理事長として12年、200組を超える親子を見てきました。

そこで、この記事では、子どもの自己実現に必要な力の1つ「感情性・社会性」について解説します。


子どもの自己実現に必要な5つの力

その他の力を知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

この記事を読めば、感情豊かな子に育つ大人の関わり方、さらには世界に羽ばたける子に育つために知っておきたい、親子関係についてお伝えします。




子どもたちは感情とともに生きている

人間は感情をもつ生き物です。何かが起こるたびに、必ず「感情」が湧きあがります。

嬉しい、楽しい、悲しい、怒り、不安、穏やかさ...

日々の生活の中で、子どもたちはこうした感情を抱きながら、さまざまな物事を経験し、成長します。


感情性とは『自分の感情を理解し、整理し、表現する力』

感情性と社会性は、子どもの成長に欠かせない重要な要素です。

感情性を育むとは

  • いまこの瞬間、自分がどんな感情を感じているのかを認識すること

  • その感情をどのように整理し、向き合うのかを学ぶこと

  • そして、その感情をどのように表現するのかを経験すること

これらの力を育てることを指します。

感情性を深めるプロセス

「感情性」とは、自分の感情を理解し、整理し、表現する力です。

子どもたちは何か物事が起きたときに、以下のプロセスをたどり、感情性を深めます。

①自分の感情と向き合う
→自分自身がどんな感情を抱いているのかを感じる、味わう

②本当の気持ち(感情)に気付く
→その中で、自分自身の本当の感情はどんな感情なのかを味わう、発見する(素直に認める)

③その感情を吐き出す
→自分自身の素直な感情を認め、吐き出す(言葉にすることで感情を顕在化する)

④自分の感情を自分自身が理解する
→自分自身の感情を言葉にすることで、改めて、その感情を自分自身と他者が理解する(他者と共有する)

⑤感情の解放
→自分自身の感情を認め、許す

①から⑤までのプロセスをじっくり丁寧にたどりながら、子どもたちの感情性は育まれていきます。逆を言えば、①から⑤のどこかで止められてしまうと、自分の感情を、無かったことにしたり、見ないことにしたり、自分の感情なのに、本当の気持ちを素直に出せなくなってしまいます。

「自分の気持ちを素直に出していい」と許可を出す。それができることによって、子どもたちは、事実を事実として捉え、感情を味わいながら、感情に飲み込まれることなく、他者と自分を切り分けながら、自分自身の感情と向き合っていけます。


実践編:家庭でできる感情トレーニング

子どものよくある場面を想定して、ご家庭でもできる感情性の深め方をお伝えします。

例)A君が、自分が持っていたおもちゃを取られた!
→A君が泣く

①自分の感情と向き合う
A君が泣いた(どんな気持ちで泣いているのか?)
→取られてびっくりした、取られて悲しかった、まだ遊びたかった、一言声をかけてから取って欲しかった、一緒に遊びたかった、など、今の自分の気持ちを味わう

②本当の気持ち(感情)に気付く
本当の気持ちはどんな気持ちか?
→自分の大切にしている物だったから、取られたくなかった!

③その感情を吐き出す
→「自分が大切にしているものだから、貸したくなかった。」と、言葉にする。(相手に伝える。)
子どもが小さい場合には、①〜③のプロセスまでたどると、感情が言葉にされる感覚を体感することができます。

④吐き出した感情を自分自身が理解し、味わう
→③で吐き出した感情は、ただ「嫌だった」ではなく、『こう思っていたから、こんな気持ちを感じたんだ』と、子どもが感じた「本当の感情」。

この感情を理解し、味わうための、親のサポート(言葉がけ)は「オウム返し」が効果的。例えば、「自分が大切にしているものだから、貸したくなかったんだね。」と、子どもの言葉をオウム返しすることで、子どもが感情への理解を深め、味わうプロセスを伴走できる。

⑤感情の解放
→自分自身が抱いた感情を理解した上で、認め、その感情を許す(許可を出す感覚)と、子どもは、その感情から解放され、完全に切り替えられる。

言葉がある程度使えるようになってた子どもたち(4〜5歳以降)は、④〜⑤のプロセスを深めることで、感情性がさらに育まれます。

ただ、子どもたち(大人もですが)が、そのプロセスを1人で踏むことは、極めて困難です。だからこそ、子どもたちの「感情性」を育むために、親がサポートする必要があります。子どもたちの感情教育には、大人自身が感情について学ぶことがとても大切です。


感情を出しづらい環境にある子どもたち

子どものグズりや反抗などに対して、「いい子にして!」や「いい加減にして!」などと言った経験はありませんか?

子どもたちの「感情」は、とても無視されがちです。感じた感情を「見ないこと」にしたり、「自分の気持ちに嘘をつく」を続けていくと、自分の本来の気持ちに気づけずに成長していきます。心の発達には、子どもたちの「感情」を丁寧に扱うことが大切です。

特に、現代の子どもたちは、自分の意見や感情を表現しにくい状況に置かれています。

学校などの集団生活では、先生の指導を尊重する場面が多くあります。

そのため、先生に対して「NO」と言ってはいけない。あるいは、「NO」と思うことさえいけない、という風潮が生まれることがあります。また、学校生活では自分の意見を伝える機会が極端に少ないのが現状です。

感情は、抑え込めば抑え込むほど、より強く外に出したいという欲求が高まります。

しかし、感情を出すこと自体が否定される環境では、子どもたちの心の成長は妨げられてしまいます。

感情を味わい尽くすことが自己理解につながる

感情を思う存分出すことは、とても大切です。
嬉しいなら嬉しい、悲しいなら悲しい。

大人でも、自分の気持ちを見て見ぬふりをしているうちに、「本当の自分」というものが分からなくなることはありませんか?

「今、感じている感情」がどのようなものかを味わい尽くし、それを理解することが自分への理解にもつながります。

学校が感情を出しづらい環境であるならば、家庭では安心して感情表現できる場をつくりましょう。子どもたちの感情を「言葉にし、理解し、承認する」プロセスに寄り添っていきましょう。

こうした考えから、FISでは「感情性・社会性」の分野を非常に重視しています。これは他のスクールにはない大きな特徴でもあります。

FISが大切にしている「感情と事実の切り分け」

FISでは、子どもたちに感情をたくさん味わい尽くすよう伝えています。

一方で、「感情と事実は別ものである」という考えも、しっかりと伝えています。

例えば、子ども同士でトラブルがあった場合。

「◯◯ちゃんが嫌なことをしてきた」「遊びたくない」などの感情が湧いても、その出来事の背景や事実を一緒に整理して考えることを徹底しています。

感情に寄り添いつつ、「何があったのか」「どうしてそう感じたのか」を丁寧に見つめることで、子どもたちは自己理解を深め、トラブルを解決する力を身につけていきます。

「感情と事実を分ける」という考え方は、保護者の方にもお伝えしています。

例えば、お子さんが食事中に立ち歩いている場合。

「集中して食べてほしい」
「遊ぶのをやめてほしい」
「せっかく作ったのに⋯」

といった感情が湧いてくるのは自然なことです。

ただ、このような場面でも「感情」と「事実」を分けて考えることで、より冷静に状況を見つめられるようになります。

たとえば「お子さんが食事中に立ち歩く」という場面で事実を見てみると、

  • 視界に入った物に意識が向いている

  • 大人が席を立つ姿を見て真似している

  • おかわりをしようとしている

といった可能性が見えてきます。

事実を冷静に捉えることで、感情に引っ張られず、子どもの行動に適切な対応がとれるようになります。

その結果、子どもが自分の力を伸ばしやすい環境が整い、成長につながります。

FISでは、こうした考え方を子どもたちや保護者の方と共有し、心の成長を支える取り組みを大切にしています。


社会性を育むためには、身近な社会『家族』から

社会性とは、「社会の中で生きていく力」です。「社会」には、自分が居て、他者が居る。自分の周囲には、身近な世界から、広い世界までが広がっていることを体感し、理解し、実際の社会で生きていく力を付けていく必要があります。

私が理事長を務めるオルタナティブスクール FIS は、「Free+ International School」の略です。「International」とは、「自身と周囲との関係性を築くこと」と定義しています。

定義の基礎は、自身の周囲にある家族・友達・学校などの身近な社会と良好な関係性を築くことにあります。この感覚は、「社会性」と近しい感覚にあります。

スクール名に「International」を採用したのは、ただ、外国語を喋るだけではなく、”National にInterする[(自/他)国の間に在る]人材を育てる”ことがコンセプトです。

「日本人としての誇りを持った人材(Nationalist)が、世界に羽ばたき、世界とつながる」イメージです。

だからこそ、母国語(日本語)を大切にし、そのアイデンティティの上に、「世界で活躍する人材を育てる」という思いのもと、スクールを立ち上げています。

「自身と周囲との関係性を築くこと」は、身近な社会を基礎として、多様な考え方が存在する国際社会でも応用が可能です。

単に外国語が話せるだけではなく、確固たる自身の考えを持ち、周囲と調和を取った上で、自身の考えを行動に移し、自身と周囲の関係性を築いていく人材こそが、FISの考える「International」な人材です。

そして、社会性で最も大切なのは、「小さな社会」から「大きな社会」へ活動の幅を広げることです。

子どもたちは、まず身近な社会での安心感をもとに、社会性と感情性を拡大していきます。

まずは、最も身近な「家庭」という社会。その次に、「公園」や「幼稚園」や「保育園」。そこから、少しエリアを広げて「地域」という社会。

触れる「社会」がどんどん広がった結果、世界へ羽ばたいていくのです。

いきなり広い世界へ羽ばたくことはできません。羽ばたいていく世界を広げるためには、「安心感」が何よりも大切なのです。

「社会性」は、以下のような力で成り立ちます。

・自己理解力(自分自身を理解する力)
・自己管理力(社会で力を発揮するための自己管理力)
・自己表現力(プレゼンテーション力、他)
・コミュニケーション力(周囲との関係性構築力)
・チームワーク(協調性、協業性、共創性)
・適応力(活動フィールド[環境]への理解と環境での力の発揮)
・問いを立てる力・解く力(社会における問題提起と問題解決力)

まずは、最も小さな社会『家庭』で、これらの力をしっかり育みます。「小さい社会」から「大きい社会」へと順々に広げていくことで、子どもたちは社会性を高めていきます。


まとめ:感情と向き合う環境が子どもの成長を支える

子どもたちが感情を自由に表現し、味わい尽くす環境を整えることは、心の成長に欠かせません。そのためには、ご家庭が、安心して感情を表現できる環境であることが大切です。

また、習慣も大切です。感情に寄り添いながら事実を冷静に見つめることで、子どもたちは自己理解を深め、より良いコミュニケーションや問題解決の力を育みます。

FISでは、感情性と社会性を育むことを柱に、子どもたち一人ひとりが持つ力を引き出すサポートをしています。感情を味わい、事実を整理する力を身につけた子どもたちは、心のバランスを保ちながら、自信を持って社会に羽ばたいていくでしょう。

子どもたちが健やかに成長できるよう、感情と向き合い、寄り添う姿勢を大切にしていきましょう。


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