観光客の顔をして地元を歩く
夕暮れ。昼間の暑さの尾を引いたまま、生ぬるく湿った風が裾を揺らす。湖独特の、ぬるっとしつつも爽やかに濡れた匂いが身体を包む。その匂いがなんだかよそよそしく感じられて、ああ、ここは私の「帰ってくる」場所になったんだなあ、と思った。だけどもう、「帰る」場所ではない。
湖岸の道は犬を散歩させる人、凧を揚げる人、湖を眺める人たちで案外賑わっている。きっとこの人たちのほとんどが地元民なのだろう。かつては彼らに仲間意識を感じていたはずなのに、今はなぜか近づきがたい。壁を感じる。決して分