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水曜日の水槽

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水曜日に更新している小説が揺蕩う場所
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#小説

根っこ【短編小説】【3500字】

 「アサちゃん、足どうしたの」アサちゃんの足がなくなっていた。正確に言うと、アサちゃんは…

来世で会いましょう【短編小説】【4000字】

 ステンドグラスには聖母の絵。修道服に身を包んだ同級生がゆっくりと黒い袋を抱えて回ってく…

どくどく、と巡る【短編小説】【5500字】

 耳から流れ込んできた毒素がいつまでも体内を巡っている。どういう理屈か毒の棘を持ったこと…

サボテンと猫、育む【短編小説】【5000字】

 また恋人にふられた。目の前の景色にフラッシュバックを起こして、ため息をつく。半年前にも…

滞りなく、流れる【短編小説】【5000字】

海辺の家に住みたいと思ったことは一度もなかった。それなのに、生まれてからずっと海が見える…

夕焼けに煙る【短編小説】#月刊撚り糸

涙が出そうになった。ヤマさんが吐き出す煙草の煙が目に染みる。煙の中にいるのは嫌いじゃない…

ハッピーエンドへ歩く【短編小説】【1100文字】

立ち止まっている間に世界は以前にも増してスピードを上げて回っている。 留学から帰ってきたあの人は甘ったるいバニラの香りがした。駅から目的地までの途中で、日本は狭いと言うので、今日は人が多いねと返すと、そういうことじゃないと言われてしまった。 ◆ 元彼が忘れられないと嘆いていたあの子のSNSを見た。投稿内容が元彼のために作った手料理の写真から、今彼が料理をする動画になった。誰かのいいね〜!というコメントに今彼はとにかく一緒にいて楽だと返していた。彼氏のためなら何でもする!

たまごを割る【短編小説】【6000字】

溶きたまごの中に殻が入っているのを、また見つけた。だれにも気づかれないように、早急に殻を…

星は二度、消える【短編小説】【3000字】

惑星が消失した、というニュースを見た。 その日の深夜、わたしはコウちゃんと消滅した星を観…