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水曜日の水槽

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水曜日に更新している小説が揺蕩う場所
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記事一覧

どくどく、と巡る【短編小説】【5500字】

 耳から流れ込んできた毒素がいつまでも体内を巡っている。どういう理屈か毒の棘を持ったこと…

サボテンと猫、育む【短編小説】【5000字】

 また恋人にふられた。目の前の景色にフラッシュバックを起こして、ため息をつく。半年前にも…

滞りなく、流れる【短編小説】【5000字】

海辺の家に住みたいと思ったことは一度もなかった。それなのに、生まれてからずっと海が見える…

夕焼けに煙る【短編小説】#月刊撚り糸

涙が出そうになった。ヤマさんが吐き出す煙草の煙が目に染みる。煙の中にいるのは嫌いじゃない…

ハッピーエンドへ歩く【短編小説】【1100文字】

立ち止まっている間に世界は以前にも増してスピードを上げて回っている。 留学から帰ってきた…

たまごを割る【短編小説】【6000字】

溶きたまごの中に殻が入っているのを、また見つけた。だれにも気づかれないように、早急に殻を…

星は二度、消える【短編小説】【3000字】

惑星が消失した、というニュースを見た。 その日の深夜、わたしはコウちゃんと消滅した星を観測するために、近所の公園へ足を運んでいた。どの星かな。あれじゃない?これかもよ。言葉を交わすたびに漏れる息は白い。都会の中でもわたしたちの住まいは明かりの少ない土地のはずだが、それでも星を確認するのは難解なことだった。よく晴れた冬の夜でも、それは変わらない。 公園にいるのは二人だけで、厚手のダウンジャケット着こんだ姿は宇宙飛行士に似ていた。わたしたちは手を繋いだまま滑り台をのぼる。片手