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「焙烙(ほうろく)がくれた煎る時間」 
伝統は今を生きる vol.07

こんにちは。フォトグラファーのたかつです。
2022年いかがお過ごしでしょうか。
仕事や学校も始まり、バタバタしていませんか?
今回は、何かと忙しい年始にほっと一息つけるアイテムをご紹介します。

みなさんは『焙烙』という台所道具を知っていますか?
読み方は(ほうろく)。地方によっては(ほうらく)と言うところもあるそうです。
焙烙は素焼きの平たく浅い土鍋で、中に茶や豆、胡麻や塩などを入れて煎ったりする道具になります。
煎ったものは持ち手の筒のところから出します。
焙烙は焙煎の度合いを自由に調整できるので、これさえあれば自分好みのオリジナルほうじ茶やコーヒーなどをいつでも作れてしまうというわけです。

僕が焙烙の存在を知ったのは、恥ずかしながらつい最近。
年末に名古屋へ仕事で訪れた際に、老舗のお茶屋さんの前を通りすぎると、なんともこうばしい良い香りが鼻腔をくすぐりました。

「こんな寒い季節には、あったかいほうじ茶が飲みたくなるな…」

しかしその時は急ぎの用があったので、泣く泣くその場を後にしたのでした。
スタジオに戻ってからも、ほうじ茶のあの香りが鼻の奥に残っていました。
どうしても美味しいほうじ茶が飲みたい!と、自分で作る方法を調べたところ、フライパンや土鍋でお茶を煎る方法がヒットしました。その中に「焙烙」のこともあって、この古くて新しい道具に非常に興味が湧いてきたという訳です。

焙烙の歴史

焙烙がいつ頃から使われてきたのかはハッキリしていませんが、江戸時代末期には焙烙で蒸された焼き芋が売られていたという記録が残っています。この焼き芋は「最初の焼き芋」と言われており、この時から焙烙は人々の生活に根付いていたとのこと。それ以外にも焙烙は茶器として用いられたり、時には火薬を詰めた武器「焙烙玉」としても用いられていたようです。


いよいよ焙烙とご対面


様々な地域で作られている焙烙ですが、せっかくなので地元に近い「伊賀焼の焙烙」を購入しました。じつはこれ、みなさんご存じ無印良品の商品です。値段は税込み3,990円。Webサイトからポチッと購入しました。
(年末に購入したのですが現在は販売されておらず、不定期販売かもしれません)

急須の注ぎ口がないような、コロンと丸いカタチが特徴的な伊賀焼焙烙。
手に馴染む、とっても可愛いフォルムです…!
さっそくお茶を煎ってみようと思います。

お茶の葉はスーパーなどで手に入るごくごく普通のものを使用しました。

まずは、焙烙にお茶の葉を入れます。お茶の葉は15gが理想とのことですが、だいたいで良かろうとコーヒー豆の軽量スプーンでお茶の葉をセットしました。

お茶の葉を焙烙に入れたら、いよいよ火をいれます。

こうばしさを求めていきなり強火にしてみましたが、これが大きな間違いでした…。

火にかけて、数秒でこうばしい香りが。

うん、いい感じだぞ…!
心の中でそう思っていた矢先…

モクモクモク…!

勢いよく煙が出てきました。
こうばしかった香りも、すっかり焦げ臭くなってしまいました。

あれ!?何かが間違っている??

そうこうしているうちに大量の煙が出てきてしまい、慌てて焙烙をコンロから下ろします。

焙烙からお茶の葉を取り出してみると、見事に真っ黒です。
ファーストトライは完全に焦がしてしまいました。

スタジオ中に焦げ臭い香りと煙が充満し、換気扇は回していましたが危うく警報装置が作動するところでした。

これはイカンと、改めてインターネットで使い方を調べてみたところ、正しくは以下のように使うことが分かりました。

  1. 焙烙にお茶の葉を入れる前に中~弱火で2~3分温める。

  2. お茶の葉を入れて弱火で2~3分煎る。
    時々揺することで煎りムラを無くす。

  3. 最後に強火にして数秒煎る事でこうばしさを引き立たせる。

  4. 好みの煎り具合より若干早めに火から外す。
    (お茶の葉を取り出す間にも火が入るため)

最初から強火でガンガン煎ってしまったため焦がしてしまったようです。
気を取り直して、調べた通りのやり方でもう一度トライしてみました。

心を落ち着かせてお茶の葉に神経を集中します。

優しく…
丁寧に…

徐々にこうばしい香りが立ってきました。
最後に数秒強火にして… フィニッシュ!

今度は綺麗な色に仕上がったのではないでしょうか。

煎ったお茶の葉に80~90度に温めたお湯を注ぎます。

鮮やかな色が出てきました。

本来ならもっときつね色になるそうですが、先の失敗があったため、ちょっと煎りが甘かったかもしれません。ただ、香りはいつもかいでいる ほうじ茶のいい香りです。

焙烙で煎ったフレッシュなほうじ茶の味は?


それでは…苦労して淹れた ほうじ茶を飲んでみましょう!

ズズズっ

はぁ~…うまい


煎りたてのほうじ茶は、香りが澄んでいてフレッシュな感じがしました。
香りが良いと味の輪郭もクッキリ際立つようなイメージで、お茶の甘みを普段より強く感じることができたような気がします。

喉を通るごとにこうばしい香りが鼻腔を抜けていき、すっきりとした甘さが口に広がります。

手間をかけた甲斐があったからこそ、そのぶん美味しく感じたのかもしれませんね。

焙烙のお手入れは意外と簡単


こういう道具は手入れが難しいという先入観がありますが、焙烙のお手入れは簡単です。
急激な温度変化がひび割れの原因になるので、必ず焙烙が冷めたことを確認してから洗います。
洗剤は使わず、水洗いだけで大丈夫。
茶渋や焦げがある、香りの強いものを煎った場合は、柔らかいタワシで洗うのがおすすめだそうです。
洗浄後はしっかりと乾かして、永く愛用していきましょう。


煎る時間=リラックスできる時間


美味しいほうじ茶が飲みたくて購入した焙烙でしたが、実際に自分でやってみると「なにかを煎る」という行為自体にリラックス効果があると気づきました。

余計なことは考えず、
真剣にお茶の葉と向き合って、
立ち登る香りをたのしみ、
揺すった際のサラサラとした音に耳を傾ける…

とてもいい時間なのではないでしょうか。

目まぐるしい現代社会で毎日何かに追われている人にこそ、焙烙がくれる「煎る時間」が必要なのかもしれません。皆さま是非ともお試しください!



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