マガジンのカバー画像

よりぬき伝奇さん

56
これまでこのnoteに掲載した記事のうち、特におすすめの作品に関するものについて、よりぬいています。
運営しているクリエイター

2023年1月の記事一覧

H・R・ハガード『ソロモン王の洞窟』 秘境冒険小説の古典の消えない楽しさ

H・R・ハガード『ソロモン王の洞窟』 秘境冒険小説の古典の消えない楽しさ

 秘境冒険小説数ある中で、後世の作品に様々な影響を与えた古典にしてマスターピースであります。アフリカ奥地に眠るというソロモン王の秘宝を求めて旅立った三人のイギリス人。彼らを待ち受けるのは大自然の脅威と知られざる王国、そして……

 長年にわたりアフリカで暮らしてきたハンターにして貿易商のアラン・クォーターメンがある日出会った二人の英国人男性――長大な体躯の貴族ヘンリー・カーティス卿と、伊達者の海軍

もっとみる
森川成美『てつほうの鳴る浜』 頼りない少年が元寇に見たもの

森川成美『てつほうの鳴る浜』 頼りない少年が元寇に見たもの

 鎌倉時代の文永年間を舞台に、己の人生に悩む少年の運命と、元軍の襲来が交錯する、ユニークかつ内容豊かな児童文学であります。流されるまま博多の商人に、そして水軍の将となった少年・長種の運命は、元軍の襲来によってどのように変わるのか……

 文永七年、御家人の家に生まれながらも武芸や血を見ることを嫌い、そして将来の展望のない武士に嫌気が差して家を飛び出した少年・竹崎長種。父の友人である水軍の大将・鷹島

もっとみる
赤神諒『はぐれ鴉』 異色の時代ミステリにして裏返しの赤神流悲劇

赤神諒『はぐれ鴉』 異色の時代ミステリにして裏返しの赤神流悲劇

 豊後国竹田で発生した、城代一門二十四名の斬殺事件。本作はそこから唯一生き残り、剣の修行を積んだ青年が、真相を解き明かし、家族の仇を討つべく奔走する異色の時代ミステリであります。事件の下手人にして、今は変わり者のはぐれ鴉と呼ばれる男の正体は。そして事件の背後に潜む真実とは……

 江戸初期の寛文六年、豊後竹田藩城代の一族郎党二十四名が惨殺される事件が発生――唯一その場から逃れた城代の次男は、犯人が

もっとみる