【闘病18年】高難易度スケルツォ第2番|10年練習して、やっと最後まで弾けるようになりました!(動画あり)
noteのお題「#一歩踏み出した先に」に応募したくて、一歩、それも超ド級の一歩を踏み出しました!
自己紹介|宝条実空と申します
はじめましての方もいらっしゃるかと思いますので、簡単に自己紹介させてください。
宝条実空(ほうじょうみそら)と申します。
現在、統合失調症、解離性障害、パニック障害という3つの病気と共に生きています。
幼少のころよりピアノを弾いていた筆者。現在37歳。
6歳から19歳までピアノ教室に通い、発表会やコンクールに出場していました。
ところが、19歳で統合失調症を発症。
病状と薬の影響から、まともな日常生活を送ることができませんでした。
それまで、当たり前に弾けていたピアノも、全く弾けなくなり、気が付けばピアノに触れなくなり8年経過。
「もう私が過去のようにキラキラとピアノを弾くことはないだろう」
と、諦めていました。
しかし、あるとき転機が!
27歳のとき、地元の音楽イベントでピアノ演奏をすることになりました。
ピアノを弾くのは8年ぶり。
それでも、再開の喜びで懸命に練習し、なんとかイベントは成功。
その後は、趣味として簡単な曲を弾いています。
もう弾くことはないだろうと思っていたピアノでしたが、運よく再開ができました。
一度諦めていたピアノがまた弾けるなんて!
再開できたことが嬉しくて、ある曲に挑戦したいと思いました。
その曲とは、ショパンのスケルツォ第2番。
ずっとずっと憧れていた曲です。
でも、スケルツォ第2番は、難易度がとても高い!
どれぐらい難易度が高いかざっくり解説。
全音楽譜出版社の全音ピアノピースでは、曲の難易度がA級からF級に振り分けられているのですが、詳細はこんな感じです。
A級…初級
B級…初級上
C級…中級
D級…中級上
E級…上級
F級…上級上
A級がもっとも簡単で、反対にF級がもっとも難しいということになります。
なんと、このスケルツォ第2番はF級…!!
私は過去にピアノ教室に通っていましたが、当時弾いていた曲の中で最も難易度が高かったのは、メンデルスゾーンのロンドカプリチオーソ。
難易度はE級です。
それ以外は、ショパンの華麗なる大円舞曲や、シューマンの飛翔、ドビュッシーのアラベスク第1番…など、C級からD級の中級クラスの曲を弾くことが多かったです。
スケルツォ第2番を27歳から10年間練習していて、つい先日までは「いつか弾けるといいな」くらいに思っていました。
そんなところに、noteの「#一歩踏み出した先に」のお題を発見。
「これはチャンス!この機会を利用して、憧れのスケルツォ第2番を弾けるようになろう!!」
「いつか弾けたらいいな」は「締め切りまでに弾けるようになろう!」に変わりました。
この決心したのは、8月28日。
お題の締め切りは9月7日。
10日しかない!!(笑)
この時点で私がどのくらい弾けたのかと言うと、楽譜を確認しながらゆっくり音をなぞる程度。
1つのフレーズを弾けば楽譜がわからなくなり、すぐ手が止まってしまうレベルでした。
全体の雰囲気はふんわりとつかめているけど、細かい部分の譜読みはかなり怪しい…。
そしてスケルツォ第2番は、本来テンポ176以上の曲だけど、私はこのときテンポ100ぐらいでした。
1曲通して弾くと、30分近くかかる…!
急げ!!!
この10日間、とにかく練習!練習!練習!
この10日の練習時間は、合計38時間。
(一日あたり3~5時間くらい)
時間がないので、とにかく集中して練習しました。
ピアノ再開後スケルツォに挑戦|3つの壁
27歳のとき、たまたま音楽イベントの参加というきっかけがあったことから、諦めていたピアノを再開できました。
「もしかすると、憧れのスケルツォ第2番が弾けるかも…」と淡い気持ちで、楽譜を購入し、早速譜読みを始めたのですが…。
壁がたくさんある!
そしてその壁が高すぎる!
壁その1|ページ数めちゃくちゃ多い!
もうとにかくページ数がめちゃくちゃ多い!
私が使用しているのは、全音楽譜出版社の楽譜なのですが、スケルツォ第2番はなんと20ページもありました。
私が過去に弾いた曲で、最もページ数が多かったのは、メンデルスゾーンのロンドカプリチオーソ。
同じく全音楽譜出版社の楽譜を使用していましたが、10ページでした。
壁その2|音符の数が多い!
とにかく音符の数が多い!!
1小節の中に、音符がぎっしり埋まってる箇所がたくさんあります。
ページ数が多い、そして1小節の中の音符が多い…。
ということは、それだけ譜読みしなければならない音符がたくさんあるということ。
この時点でいつか弾ける日が本当に来るだろうかという不安。
壁その3|テンポがめちゃくちゃ速い!
この曲テンポがとにかく速すぎる!
スケルツォ第2番は冒頭にPresto(プレスト)の表記があります。
Presto(プレスト)の意味は、「急いだスピードで」。
テンポにすると、176~192です。
私はこれまで弾いた速い曲でも大体140程度。
私にとっては、170以上だなんて、かなり早いです。
しかも音符の数もたくさんありますから、細かい音をとにかく早いテンポで弾くような感じですね。
こんなに難しい曲だったなんて…。
本当にこの壁を乗り越えられるのか?
弾きたい気持ちはあっても、結局弾けないままなんじゃないか?
恐怖と不安しかありませんでした。
闘病中の練習の難しさ|10歩進んで8歩下がる
冒頭でも少し触れましたが、私は統合失調症を発症してから、それまで出来ていたことが色々できなくなりました。
服薬量は多い時期で一日15錠。
病状と薬の影響で、思考がまとまらなくなり、感情も乏しい。
意欲もわかない。集中力も続かない。
自分の意思はどこへいったのやら。
「歩く」という信号を頭から送っているのに、体は一切反応しない。
「口を閉じる」という当たり前のこともできない。
気が付くとよだれが垂れていて、しかも自分ではそのことに気が付かない。
周囲に教えられて、やっと気が付くレベルです。
そんな状態でしたので、ペンを普通に持つこともできません。
まるで子供がクレヨンを握りしめるような形でペンを持つ。
力加減がわからなく、字はガタガタ。
そんな状態だったのです。
その後、少しずつ回復し、音楽イベントをきっかけにピアノを再開。
おぼつかない指運びでしたが、簡単な曲なら弾けるようになりました。
でも、理解力、集中力、記憶力は病気になる前よりもガクッと落ちている状態です。
憧れのスケルツォ第2番を弾けるようになりたい。
まずは譜読みから!
右手だけ弾いてみよう!
と思い、まず右手部分だけ譜読みをするのですが、なんといっても20ページもありますから、とにかく長い!
片手だけの譜読みなのに、1時間ほどかかっていました。
左手も譜読みすると、合計2時間。
一日あっという間です。
しかも2時間練習したわりには、左右1回ずつしか譜読みができていない。
本当に弾ける日が来るのか?(笑)
理解力低下による弊害|曲の全体像が見えない
理解力が低下しているので、1曲の全体像を理解するまでにかなり時間がかかりました。
今何を弾いているのか?
曲のどの辺を弾いているのか?
楽譜を見ながらゆっくり弾いていても、なかなか頭が追い付きません。
10年練習していますが、曲の全体が見えてきたのは、ここ2年ぐらいのことです。
集中力低下による弊害|最後まで弾ききる集中力がない
このスケルツォ第2番はとにかく長い!
プロのピアニストで、9分から10分ほどかかる曲です。
私の技術では、どんなにテンポを上げても180が限度。
1曲弾き終わるまでに、13分ほどかかってしまいます。
集中力が低下しているので、最後まで弾ききる集中力が続かなくて苦労しました。
出だしは集中していても、演奏の途中でプツンと頭が真っ白になることもしばしば。
分割して演奏すると止まらずに弾けるけど、1曲を通して演奏すると集中力が切れてしまいます。
フリーズしてしまったり、同じ部分を何回もリピートしてしまったり。
けっこう心折れそうになりました。
記憶力低下による弊害|10覚えても2まで戻る
これはもう、本当に本当に厄介で。
集中して練習して、いろいろ覚えてはいくのですが。
突然、頭からスポンッと抜けてしまうことがよくありました。
だから、頭で考えるのではなく、とにかく弾いて弾いて弾きまくって。
動きを体に覚えさせるのですが、それでも抜けてしまいます。
10覚えたとしても、少し時間が経つと2くらいしか覚えていない。
もう、これで暗譜とか、最後まで弾くことは本当にできるのか。
最後まで演奏しているビジョンが全く見えない…!
10年を振り返って|毎日練習できたわけではない
スケルツォ第2番の楽譜を購入してから、毎日練習していたわけではありません。
仕事や家事をしていると、どうしても練習は後回しになってしまいました。
またモチベーションを保つのが本当に難しい。
ただでさえ難しい曲なのに、理解力、集中力、記憶力が乏しいので、思うように上達しなかったし、手ごたえも得られませんでした。
持病の症状はさまざまありました。
練習中にパニック発作が起きたり、過呼吸が起きたり、全身の硬直が始まったり。
意識が遠のいて、椅子から落ちたこともあります。
発作の影響は翌日以降まで続きます。
気分が落ち込んだり、硬直の影響であちこち筋肉痛になったり。
せっかくやる気を出して2週間ほど毎日練習していたとしても、こういった体調不良が襲ってくると、一気にモチベーションダウンしてしまいます。
2週間練習しては数ヶ月休み、また何日か練習しては数ヶ月休み…。
そんなことの繰り返しです。
でもやっぱり憧れの曲。
練習しない期間があると、より忘れてしまっていることも多いのですが、いつか弾けるようになりたい。
その気持ちで、少しずつ練習していました。
一歩踏み出した先に見えたこと|圧倒的達成感と圧倒的感謝
闘病しながら10年練習しても、まったく完成が見えなかったスケルツォ第2番ですが、今回この「#一歩踏み出した先に」のお題を見つけられたのは、本当にラッキーでした。
「いつか弾けるようになるといいな」くらいにしか思っていなかったのが、「締め切りまでに弾けるようになろう!」に変わりました。
もし応募していなかったら両手で最後まで弾けるようになるのは、まだまだ先のことだったと思います。
今回、このお題の応募を機に、10年なかなか上達が見られないスケルツォ第2番は、無事最後まで弾き切ることができました。
本当は、もっともっと表現や技術を磨きたいところでしたが、この10日間という短い期間で、暗譜をして最後まで集中力を保って弾ききったのは上出来だと思います。
もうね、何度撮り直しをしたかわかりません…(笑)
記憶力が低下しているので暗譜をすることも大変だったのですが、なによりしんどいのは集中力。
13分もある曲を最後まで弾ききる集中力を保つのがとにかく大変でした。
せっかく調子よく途中まで弾けていても、集中力が切れて派手にミスをしたり記憶が飛んでフリーズしてしまったときなんかは…
もう…もう…!めちゃくちゃ凹みます!
また始めから弾き直し!
悔しい!悔しい!
でもでも。
なんとかなんとか。
無事、最後まで弾けました。
最後まで弾けたときは、もう感情が高ぶって高ぶって…
胸はドキドキ。
爽快感。
達成感。
安堵。
喉はすっかりカラカラ。
飲み物を持つ手は、演奏の余韻でブルブル震えていました。
(パニック発作ではなく武者震い的なやつです)
10年練習しても弾けなかったスケルツォ第2番。
一歩踏み出し、最後まで弾けるようになりました。
そしてその先に見えたのは…
達成感と感謝!
今、もう達成感が半端ないです。
気持ちがずっと高ぶっています!
そして、同時に感謝の気持ちも溢れてきています。
私が、なぜスケルツォ第2番の挑戦を頑張れたのか。
それはこのnoteを始めたからです。
私の記事にスキを押してくれたり、フォローしてくれたり。
コメントでやりとりさせて頂いたりと、色々な方と繋がることが出来ました。
病気で苦しいときもあるんですが、noteには自分と同じ病気の方や、メンタル面で悩む方、色々な方がいらっしゃいます。
みなさまの記事や作品を見ていると、共感したり勉強になったり、応援したい気持ちになったり。
心が満たされることが増えました!
「同士も毎日頑張っているんだ!」と元気をたくさんもらっているんです!
日頃、私の記事を読んでくださる方、コメントくださる方。
本当に本当にありがとうございます。
おかげさまで気持ちが前向きになることが多くなり、色々なことに挑戦できるようになりました。
今回、このスケルツォ第2番に挑戦できたのも、普段みなさまと繋がれているからです。
感謝の気持ちで一杯です!
あと、今月末にグループホームに入居することとなりました。
ピアノを持っていくことはできません。
我が家のピアノを弾けるのは、あと数週間だけ。
そのこともあり、今のうちに憧れのスケルツォを弾きたいと思いました。
そんな、私の「#一歩踏み出した先に」の挑戦。
とっても大きくて意味のある一歩でした!
最後まで読んでくださり、ありがとうございます!
▽最後まで弾けたスケルツォ第2番▽
(※音量注意)
宝条実空より