詩『明日への滑走路』#シロクマ文芸部
珈琲と口づけする朝
眠い目を擦りながら
漆黒の液体のなかに
ゆるり、解けてゆく
淹れ立てのドリップ
熱い温度で起床して
円やかな苦味の中に
早朝が彩られている
マグカップから上がる湯気
息を吐いてからまた吸って
曇るふたつの四角いレンズ
子供の頃は嫌いだった珈琲
今は砂糖なしのブラックで
妹がミルクを多めに注ぐ音
午前五時の音色と台所の光
足早に過ぎてゆく朝の風景
押しピンで留めておきたい
反転したネガフィルムたち
毎日、微妙に違う珈琲の味
忘れたくない家族の表情よ
朝ご飯を小刻みに咀嚼して
記憶を次々に嚥下してゆく
凝縮した昨日を飲みこんで
過ぎ去りし日々を反芻する
流されてゆきそうな時間を
舌にメモライズさせるのだ
雑音に埋もれてしまわずに
想ひ出の種を抱きしめたら
美しい明日へ向かってゆく
photo:見出し画像(みんなのフォトギャラリーより、ちーぼーさん)
photo2:Unsplash
design:未来の味蕾
word&poem:未来の味蕾
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