【読書】伝統を守ることは、どうして大切なんだろう。
伝統をとても大切にしていて
深い愛情があって、
若い人にも興味を持ってもらって
継いで行きたい、と
日々心の奥底から
思っている人じゃないと
書けない文章です。
この本を読みました。
例えば読みながら
「長いな、まだ終わらないかな」と
思ってしまう小説があります。
それは自分にとって
必ずしも低評価なのではなくて、
読後、かなり良い評価を
つけるときもあります。
例えば文と文の間の文字を
読み飛ばして読んでしまう
小説もあります。
それだって泣きながら読んで
読後、物想いにふけるほど
良い本だったりします。
一つひとつの文や語彙を
丁寧に意味を捉えながら読み、
じっくりと堪能しながら
読む小説もあります。
どっぷりと浸かり
最初から最後まで
抜けられない。
この本は、
そういうタイプの小説です。
こんなに詳細に
心を入れて
色褪せず、若者にも
水墨画の魅力を小説に出来る作家さん。
一体どれだけ
調査したんだろう、
と思ったら
現役の水墨画家さんなんですね。
一語一語から
目が離せない、独自の、
余すことなく堪能したい文章。
胸がいっぱいです。
ああこれも
映画になっていたんですか。
私はエンタメのことは
まるで分かっていませんね。
最近読んだ本が悉く
映画になっていることは、
いつだって本を読み終わってから知る。
良い本は映画にしたいんだろうな。
創作意欲が湧くんだろうな。
本に出て来る「斉藤さん」が
超イケメン設定なので、
どれどれ映画では
どんなイケメンがやったのかな?と
ワクワクしながら調べたら
斉藤さんの役、
潰されていました😭
イケメン役をなくすなんて
酷すぎる💦
まあとにかく。
四君子を水墨画で
描くシーンが出てきます。
四君子って
蘭、竹、梅、菊の四種類を
言うのです。
着物の模様にもよく出て来るので
私にも馴染みがあります。
この草花を「君子」に見立てた
文章から
目が離せなくなる。
長いので抜粋せず
まとめますが。
竹は、折れずに柔軟、理を曲げない。
梅は、厳しい冬を耐えながら
美しい花を咲かせる強さ。
菊は、梅と同様冬に耐えて咲く
香り高さ。
蘭は、深山幽谷に孤高に咲く
俗にまみれない風格。
筆者は主人公を
最も頻繁に登場する
蘭に見立てるために
こんなストーリーにしたのでしょうか。
悲しく、美しく
最後には光に包まれるお話です。
ところで俗物的
合理主義の私は
こんなことを考えてしまいます。
この本はいったい
自分にどんな実になるのだろうか。
最近読んだ心に残った本を
振り返りました。
「かがみの古城」は
引きこもりや思春期の
儚い時代をテーマにしています。
人生において大切な題材だ。
「流浪の月」は
正義を振り翳した
集団による攻撃を、
ネット社会の危険さを。
今の社会には必須です。
「そして、バトンは渡された」は
家族の深い愛情を。
育てることの幸福を。
じゃあ、この本が訴える
伝統を守って
継承して行くことは
どうして大切なんだろう。
なくても人間関係に
支障は無いように思えるし、
家族間の愛情は
伝統の有無とは関係ない。
明確な道徳感を
備えている訳でもない。
安直に考えれば
不要なものにも感じる。
もっとはっきりと
例えばSDGsをみんなで頑張ろう!と
誰にでも分かる言葉で
直線的に
伝えることの方が
重要な気もします。
安直に考えれば。
この本が
一文一文に愛情を込めたことが
はっきりと分かるほど
こんなに熱心に文脈で伝えていて
私が日々、
着物やそれに付随する
伝統文化を守らんと
それを纏い
記事にして
広告塔になろうと
奔走していることの
重要性を
明確に
理屈で説明しようとしても
うまくいかない。
もっと心の奥底から
気持ちが溢れかえって
何かに動かされている。
理屈じゃない、
ただの感情なのでしょうか。
着物の柄や製造過程を学んで
自然への興味や愛情が深まり
大切にしようと思う気持ちが芽生えた。
この本の主人公のように。
着物や、伝統文化を
大切にしているからこそ、
物を大切に扱ったり
必要ないものは
買わなかったり使わなかったり、
そういう気遣いが日々
身についていると思う。
ストレートにSDGsを!と
言われただけなら
こんなに浸透するでしょうか。
誰かが言っていた。
伝統は守ることが
大切なんじゃない。
守られて継がれてきたから
伝統なんだ。
そうかもしれない。
頭で考えることもあるけれど
それよりも
もっと本能的に
守ってしまうもの。
そうなるように、
突き動かされてしまうもの。
それが伝統なのかもしれない。
そうして訳も分からず
必死に守って来たことの恩恵に、
はっきりした理屈は分からなくても
情緒や、心の安寧や
深い愛情が
芽生えるのかもしれない。
この主人公が
長い孤独の中から
自分を取り戻したように。
伝統を守るため奔走している
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