有機JAS認証と曖昧さとかのこと
先日、産直ECのことについて話をさせてもらいました。
普段は話すということを全くしないので(考えてみると驚くほどしない)辿々辿々しくて申し訳なかった。(ちーん😇)
でも数年前になんかのイベントで、「まあうまく話せなくても、ええんちゃう。そういうのは場数だからな」的なことをおのさんに言われたので、まあそうだなと思っておくことにする。
そしてその時に言われたのですよ。
「ポケマルも無農薬表示の有無みたいなこと言ってたけど、それで言ったら坂ノ途中もそれを承認してるようなもんだよね?」
話していた時には自分でも驚くぐらい、辿々辿々しくて、何言ってるのかもよくわからなかったけど、落ち着いたらちゃんと考えてたことがあったので、書いてみたいと思います。
新規就農というパートナーについて
坂ノ途中の扱う野菜のほとんどは新規就農の農家さんのものです。就農して2,30年というベテラン農家さんもいますが、就農したての1,2年の農家さんも同じように取引させてもらっています。
そして、わたしたちはそんな農家さんの一つの販路になりたいと思っています。
というのも、新しく農業をはじめた人たちのハードルってかなり高い。
畑を探して、必要であれば移住もして家も探して、農機具も必要になってくるし、そもそも野菜を作る技術や知識も伸びしろがめちゃくちゃある。(反対の意味では、知識や技術も乏しい)初めての出荷なら荷姿や納品書の書き方整理など、慣れない中やらなくてはならないことが大量にあります。
そして作った野菜の売り先も見つけなければならない。
ただでさえはじめるまでにもハードルが高いのに、野菜を売るためにゼロから自分で営業していくのもハードルが高いのです。
※JAに出荷する農家さんは元から売り先があるから大丈夫なのかな。
今回はわたしたちが扱うような農家さんに限った話です。
そして新規就農だからこそ、収量が少なかったり安定供給が難しいです。技術の問題もありますし、借りられる畑の条件がよくないということも。また就農1,2年目だと、その土地にどんな作物があっているのか、また自分がどんな作物を得意とするか、栽培したいと思うのか、というのも手探りな状態です。その中での模索や失敗もあります。
また、栽培期間中農薬や化学肥料は不使用、「所謂オーガニック」な野菜なのでそのハードルの高さもあります。
一方で「市場」や「流通させる側」が求めるものは、「安定供給」です。ちゃんと安定的に量を出せる野菜が欲しいのです。
これは食べ手の人もそうであって、スーパーに行ったとき、売り切れなくいろんな商品が並んでいるほうがありがたいですよね?安定に供給できなければ、その時々で店頭のラインナップはかなり変わるかもしれません。じゃがたまにんの常備野菜がなくなりひたすら1ヶ月ブロッコリーしかない、とかもありえます。
(さすがにそれは極端ですが、安定的にないからこそのか価格の乱高下もあるかもしれません)またある程度の量がなければ流通コストが上がるので、いまよりも野菜の価格は上がるでしょう。
つまり、食べ手の人のことを考えても、流通させる側の手間やコストを考えても、安定的にちゃんとした量を出せる野菜というのは、マストです。それがうまい具合に回っているのが「市場流通」です。(そもそも有機の野菜は安定した量の流通がむずかしいため、市場に出回ることはほぼありません)
有機JAS認証を必須にしない2つの理由
①多様性を排除しない流通のしくみをつくりたいから
上記にあるように、収量が少なく安定的に供給させるのはむずかしい新規就農。流通させる側は、そのような野菜は積極的に扱おうとは思いません。少ない量しか出せない、安定的に出せないなんてコストに見合わないので排除されていきます。(排除っていうか、そもそも相手にされない。)でもそんな農家さんの野菜って本当は美味しい、そしてたのしさもあります。そんな農家さんの一つの販路になりたい。それが坂ノ途中でやっていることです。
なのにも関わらず、就農したての農家さんに「JAS認証がないから取引できない。とってからまた連絡ちょうだいね。」それでは元も子もありません。自ら排除しているのと同じになります。
また、ただでさえハードルの高い新規就農ですが、有機JAS認証もそれなりに時間的にも労力的にもコストになります。認証をとることに対して、農家さんそれぞれの考えがあるので、なんの許容もありませんが、特にはじめたばかりであれば認証をとるための書類やそれに付随するやりとりよりも、畑に向き合ってください!とも思います。
また有機JASも途中で認証を取り消されることが稀にあるようです。
もしも、有機JAS認証のものしか扱わない、というルールであればそのような野菜は認証を取り消された途端に、取引はできなくなります。
ガチガチなルールを決めてそのルール以外のものは扱わない、ということはしたくありません。多様性を認められるような、認証があってもなくても同じように扱って、農家さんの販路の一つになれるようにしています。
②そもそも「オーガニック」は一つの手段
坂ノ途中のメッセージは「100年先もつづく農業を」です。有機野菜、オーガニック野菜を売っていくことが目標ではないのです。
そして、その手段の一つが環境負荷の小さい農業をする農家さんの野菜を扱うこと。
「有機JAS認証の野菜を扱う」も一つの手段にはなりえますが、絶対条件にはなりません。絶対条件にするとそれ以外は排除されることになる。だから、認証についてはこだわりなく扱っています。
最低限の基準は必要
認証が必ずしも必要でないのはそれらの理由です。
曖昧だからこそ基準を示すことが大切
書いていても、実際に働いていても思いますが、いい意味でも悪い意味でも曖昧さが伴うなと思っています。認証がないから農家さんにとっては販路を広げられているかもしれないけれど、その曖昧さを正しく説明しなければよくない流通になりかねない、とも思っています。
だからこそ、の基準も必要です。その曖昧さが、曖昧に広がっていけば、ちゃんと認証をとっている人の努力は無駄になるし、認証も広がっていきません。(広がるべきかどうかは別の話として)
曖昧にするからこそ、「無農薬野菜」とか言って売る生産者小売店、よくわからないけどオーガニックだから体にいいんだとかいうような食べ手が減らないのですよね。(うーん、この辺はまたむずかしい〜😂)
というわけで、坂ノ途中では、こうした基準があるようです。
改めて、基準を見て思いますが、「オーガニック」ってことは一つの手段、基準であって、それだけではないんですよね。
すごい長い、けど、わかりやすく書いてあるので興味ある人はぜひ読んでみてください。
そして、この曖昧さの難しさを一緒に噛み締めてください😂
この曖昧さを、そのまま曖昧にして手放しているような企業もありますが、曖昧だけれど、どういう理由でそうしているのか、それに対してどういう考えを持っているのか、というのを説明している企業ってあまりないと思っています。(あれば教えてくださいm(_ _)m)
わかりやすさに逃げない
おのさんって時々良いこと言うんですけど、その一つが「分かりやすさに逃げない」ってやつです。(この記事のわかりやすさに逃げないは、違う文脈な気がするけど、良いこと言っている。)
曖昧さが伴うっていうのがまさしくなのですが、うちのやってることって説明するのがなかなか難しく、めんどうです。
有機JASあるものないものあります、とか
基準はありますが果物や加工品はまた別の基準があります、とか
コーヒー事業もやってます、とか。
この「曖昧さ」っていうのが、むずかしいんですけど、野菜だけでなく、これからの社会にとって必要だと思うのです。
いままでの時代は、全てのものが「画一的」でした。だからこそ、画一的な規格や、システムや、ルールが必要だったし、それが効率的かつ合理的でした。
野菜で言えば、規格内のもの、安定した量のあるもの、認証のあるもの、が流通してきました。逆に言えばそれ以外のものはその流通にのれずにいたのです。
けれど、これからの時代はそれだけではありません。野菜だけではなく、働き方、稼ぎ方、住む場所、家族や男女の在り方、幸せのものさしも、多様性やダイバーシティが重要視される時代、さまざまな選択肢が広がっている時代です。
だからこそ、こうした野菜を扱うことってこれからの社会にも必要だし、こうした野菜がより一層社会に認められると思っています。
絶対的な基準を一つ作ってそれ以外のものは排除する、効率的画一的合理的にルールを決めるっていうのはある意味でわかりやすい、説明しやすい。でも、その基準では排除されるものも出てきます。でもそれらの排除された中には、ちがう見方をしたら、面白かったり、誰かのためになっていたり、コストは見合わないけど意味あったりとか、数字では見えないなにかとか、感覚的にいいよねみたいなものが隠れていたりするんです。
トマトを数値的に甘くて美味しいから評価する、ではなく、数値では言い表すのは難しいけど、昔っぽいあの青臭さのあるトマトの美味しさもあるよね、そっちの世界もいいよね。
そういう抽象的なものを大切にしていきたい。そんな会社です。
わかりやすさに逃げないっていうのも、そういうわかりやすい一つの基準に惑わされるのではなく、本質的にその中身や意味をその時々で考えて、説明していくってことなんじゃないかなって思ってます。
だからこそ、基準も曖昧さを伴わざるをえない。(そしてその説明ってむずかしい😂そして会社としてちゃんと伝えているのか、伝わっているのかがわからない…)
最終的には「坂ノ途中だから」と選ばれるように
認証がなくてもいい、有機って言えばそうだけどそれ以外も扱う、って売る側も扱うのがなかなか難しいところでもあります。
だからこそ、基準も大事だけど、坂ノ途中のものだから買うよ。って言ってもらえるようになったら、それは何よりもうれしくてありがたいなあって思います。そこが目指すべきところなのかもしれない。
働きはじめて5年半になり、いろんなことがありましたが会社のやりたいこと、やるべきことは一切変わっていません。100年続く農業を。をコンセプトに新しく農業を始めた農家さんのお野菜、かつ、有機のお野菜を扱ってきました。
そして、自分たちの基準はそれでいいのか、そもそもその基準で自分たちのやりたい社会に近づけるのか、その基準があることで実は取引したいのに足枷になっているじゃないか。でもそれをゆるめるってそれはいいの?それを取り扱うことってうちのやるべきこと?
そんなことをいまも考え続けながら、試行錯誤しながら、農家さんとのやりとり、オフィス兼出荷場での検品梱包、自社配送できるエリアでの自社配達をしています。
そしてキラキラしたような毎日ではないけれど、泥臭くコツコツ毎日を積み上げてきたからこそ、お客さんも増えてきたいまがあります。
曖昧な世界線がマジョリティにはならないと思っていますが、同じような世界観の人が増えていけば、社会は少しやさしくなっていくんじゃないかな〜って思いながら今日も箱詰めしてます。