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妄想創作

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#小説

飛ぶ鳥ヲうがツ

飛ぶ鳥ヲうがツ

「高さ」には、下にも上にも限界がある。限りなく自由に見える空も届かない高さがある。
下は地面の高さまで。マイナスはなく「深さ」に変わる。
生まれた時から決まった幅からは抜け出せない。
たとえ翼があっても。

飛んでいた鳥は撃たれて墜ちた。
時と比例して近くなる地面を目の端に捉えながら、今まで自分が飛んでいた高さとは
別の高さを沢山の鳥が飛んでいることに、初めて気付いた。
よく見ればあちこちで鳥が墜

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飛ぶ鳥ノヨルべ

飛ぶ鳥ノヨルべ

1わのトリがおりました。

空を飛べないトリでした。

仕方ないのでトリは地面を

とことこ歩いていきました。

他のトリは頭の上を飛んでいきます。

とても追いつけはしません。

ナンとも言えないトリの気持ち。

時々とっとこ小走りしたり。

気付けば空に灯が点り、

ずいぶん天気がよくなった。

まぶしさに、足が進めないひとに、

トリは羽根をかざしてあげました。

歩いても、歩いても、

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婉曲に伝える大人とまっすぐ聞く子供

婉曲に伝える大人とまっすぐ聞く子供

「僕たちの頭の上に広がっている大きな空間があるだろう」

「いつもより暗いね」

「そうだね。この星をいつも照らしてくれている明るい星が、太陽って言うんだけど、彼が地面の向こう側にいなくなっちゃったんだ」

「大丈夫。明日になればまた照らしてくれるよ。それに暗くなっている間は、僕らの星の周りをいつも回っている月って星が、太陽の代わりにこの星を照らしているんだよ」

「だからこんなに明るいんだ」

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おとぎ職業便覧 春の増刊号

おとぎ職業便覧 春の増刊号

前書き

編集の浜沫です。
今回も「御伽職業便覧」を手に取っていただきありがとうございます。

前回の第1集がご好評を頂きまして
この度、春の増刊号というコンセプトで第1.5集を刊行させて頂けました。

主に、第1集にはページの都合で載せられなかったお仕事を中心に、
どこか春を感じさせてくれるようなお仕事が多くなっています。

「時代が変わっても季節は巡ってくる。
でも、時代が変われば感じ方は変わ

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ガールミーツイージ

ガールミーツイージ

「やあやあ!俺はこの街イチの風来坊!泣く子も黙る傾奇者!名をグレート八郎!!
 俺の前で困り顔晒すお前さんは運がいい。今宵はすこぶる気分がいいので助太刀いたそう!
さあ!俺に助けて欲しいのは、一体、どこのどいつだあああ!?」

 不夜街路地裏の行き止まり。高く積まれたゴミ山の上。長身巨体の大男がこちらを見て大名乗りをあげる。

「私です!助けて欲しいです。
 悪い奴らに追われているの!」
 嘘だけ

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突然の来客 春

突然の来客 春

 ドンッ!ドンッ!ドンッ!

 強いノックの音で目が覚めて、春の暖かな微睡みから復帰する。しかし、二日酔いで寝不足の思考はまだ追い付いていないので、何が起こっているのか理解は出来ていない。

 時計を見る。
 時刻はまだ7時10分。てっきりまた寝坊してしまったのかと内心焦っていたのだがそういう訳ではないらしい。まだ出勤までは随分余裕がある。
 では一体誰が戸を叩いたのだろう。

 幸い今朝は春特有

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おとぎ職業便覧 新しいお仕事の流伝書

おとぎ職業便覧 新しいお仕事の流伝書


前書きまずはこの本を手に取っていただきありがとうございます。
私たちの仕事が誰かの目に留まることが本当に嬉しいです。

同じように、誰かに知ってほしい仕事がたくさんあります。
そのうちのいくつかを記しました。

この先には、私の同僚の編集者たちが
「こんな変わった仕事もあるのか」
「皆さんの暮らしが豊かになりますように」
「なんて面白い話だ!」
「もっとみんなに知ってほしい!」
と感じた職種や会

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