飛ぶ鳥ノヨルべ
1わのトリがおりました。
空を飛べないトリでした。
仕方ないのでトリは地面を
とことこ歩いていきました。
他のトリは頭の上を飛んでいきます。
とても追いつけはしません。
ナンとも言えないトリの気持ち。
時々とっとこ小走りしたり。
気付けば空に灯が点り、
ずいぶん天気がよくなった。
まぶしさに、足が進めないひとに、
トリは羽根をかざしてあげました。
歩いても、歩いても、
名のあるところにはつきません。
近くを飛ぶものはありません。
誰とも一緒には歩き続けられません。
トリは、歩き始めたころを懐かしみました。
大空を羽ばたく未来に焦がれました。
それはきっと素敵な時間でしたが、
前を向くにはいくらか眩しすぎました。
だからトリは
自分の羽根の広げ方について一生懸命考えました。
小さい鼓動、短い命、
壊れそうな勇気、ざわつくこころ。
全部ひっくるめて、この両羽根で、明日に持っていこう。
身体は宙に浮かないけれど
はいつくばって進んでみよう。
今日もトリはひとり。
歩いて休んでまた歩く、広い空の下。