水無月
「高さ」には、下にも上にも限界がある。限りなく自由に見える空も届かない高さがある。 下は地面の高さまで。マイナスはなく「深さ」に変わる。 生まれた時から決まった幅からは抜け出せない。 たとえ翼があっても。 飛んでいた鳥は撃たれて墜ちた。 時と比例して近くなる地面を目の端に捉えながら、今まで自分が飛んでいた高さとは 別の高さを沢山の鳥が飛んでいることに、初めて気付いた。 よく見ればあちこちで鳥が墜ちている。 交わらない航路をゆくそれぞれが辿り着く先はみな同じ高さ0。 初めて他
1わのトリがおりました。 空を飛べないトリでした。 仕方ないのでトリは地面を とことこ歩いていきました。 他のトリは頭の上を飛んでいきます。 とても追いつけはしません。 ナンとも言えないトリの気持ち。 時々とっとこ小走りしたり。 気付けば空に灯が点り、 ずいぶん天気がよくなった。 まぶしさに、足が進めないひとに、 トリは羽根をかざしてあげました。 歩いても、歩いても、 名のあるところにはつきません。 近くを飛ぶものはありません。 誰とも一緒には歩
西暦20XX年。日本における都道府県は全て撤廃され、それぞれが自治体最小単位「班」として独立した。 世はまさに、群雄割拠の大班長時代。今いちど日本を統一すべく、旧東北地方の六班が立ち上がり、決戦の火ぶたが切られようとしていた。その戦いの名は、『北日本統一戦線・奥州』 「はーい、わたし東北マル子。『北日本統一戦線・奥州』の実況やってまーっす! 早速現状の戦力分析いっちゃおうね! 今の東北地方各班の戦力は概ね均等横一列。独眼竜城下町・仙台有する宮城が一歩リードってと
「僕たちの頭の上に広がっている大きな空間があるだろう」 「いつもより暗いね」 「そうだね。この星をいつも照らしてくれている明るい星が、太陽って言うんだけど、彼が地面の向こう側にいなくなっちゃったんだ」 「大丈夫。明日になればまた照らしてくれるよ。それに暗くなっている間は、僕らの星の周りをいつも回っている月って星が、太陽の代わりにこの星を照らしているんだよ」 「だからこんなに明るいんだ」 「色んな星が光っているから明るいよ。でも一番の灯りは人間が作り出した電気の光だ。
4月18日・19日に、Mr.Childrenの2017年のライブ映像がYouTubeでプレミア公開されました。リアタイは出来なかったのですが、代わりに前後編をぶっ続けで見ることを今夜決めた次第です。今観ながら書いています。 このライブ、映像は熊本公演ですが、当時別公演を見に行きました。そのころの記憶も蘇ります。長年好きだったミスチルのライブに初めて行ったので興奮したものです。今も興奮してます。 観ながら一曲一曲にちょっとずつコメントしていきました。誰か共感してくれる人
なにかと自粛なこのご時世、私のバイト先も例に漏れず休みとなり、日がな一日家にいる生活を送っています。 という訳でついにオンライン飲みに手を出しました。部屋に一人で居ても、わざわざ用意して飲もうという気分にはなりませんでしたが、不思議なものでテレビ通話を繋ぐだけでワクワク感が増すものです。 ちょっとウキウキしながら用意したおつまみを紹介します。まずは「自作おつまみ三種盛り」から。平皿を用意して、①キムチを積む、②もやしのナムルを和えて積む、③ギフトのぼんじりをごま油で
前書き 編集の浜沫です。 今回も「御伽職業便覧」を手に取っていただきありがとうございます。 前回の第1集がご好評を頂きまして この度、春の増刊号というコンセプトで第1.5集を刊行させて頂けました。 主に、第1集にはページの都合で載せられなかったお仕事を中心に、 どこか春を感じさせてくれるようなお仕事が多くなっています。 「時代が変わっても季節は巡ってくる。 でも、時代が変われば感じ方は変わるはず」 その変化が新しいお仕事を生むきっかけになることもあると思います。 人間
風邪をひいた時、やけによく見る夢ってありません? ないって言われたらこの話チンプンカンプンになっちゃいますけど。 僕はある夢をよく見ました。今は熱が出て大人しく寝ること自体が減ったのでご無沙汰な気がしますが、小学生くらいの記憶が一番印象強いかな。 普段風邪気味でないときに見る夢において、僕の夢の登場人物は僕でないことが多いです。その時によって変わる第三者。その「誰かの話」の中で、僕は主観であったり俯瞰であったりします。 俯瞰、いわゆる三人称視点は分かりやすいですが
「やあやあ!俺はこの街イチの風来坊!泣く子も黙る傾奇者!名をグレート八郎!! 俺の前で困り顔晒すお前さんは運がいい。今宵はすこぶる気分がいいので助太刀いたそう! さあ!俺に助けて欲しいのは、一体、どこのどいつだあああ!?」 不夜街路地裏の行き止まり。高く積まれたゴミ山の上。長身巨体の大男がこちらを見て大名乗りをあげる。 「私です!助けて欲しいです。 悪い奴らに追われているの!」 嘘だけど。 「ほう?俺の目には奴ら警官に見えるのだが、悪い奴とな?」 バレてた。憎た
ドンッ!ドンッ!ドンッ! 強いノックの音で目が覚めて、春の暖かな微睡みから復帰する。しかし、二日酔いで寝不足の思考はまだ追い付いていないので、何が起こっているのか理解は出来ていない。 時計を見る。 時刻はまだ7時10分。てっきりまた寝坊してしまったのかと内心焦っていたのだがそういう訳ではないらしい。まだ出勤までは随分余裕がある。 では一体誰が戸を叩いたのだろう。 幸い今朝は春特有の急な冷えはなく、布団からは容易に脱出できた。ぼさぼさの寝癖を軽く押さえながら玄
苦しい。すごく息苦しい。 ただでさえ通勤時は人混みで息が詰まるというのに、鼻の通りは悪く、マスクまでしている。 これだから春は嫌いなんだ。 職場に着いてすぐ、自分のデスクに直行する。私はそこのティッシュに用がある。 春夏秋冬で自分と一番相容れないのはきっと春だ。 何の恨みがあってそんなに花粉をばらまくのか。 鼻も目も水という水を出し尽くしてしまいそうな勢いだ。 今一番欲しいものを聞かれたら、職場用の空気清浄機だと答える。もちろん花粉除去機能付き。 ガ
ペットボトルの内側に 残った水滴がひとつ 逆さでも、部屋が乾いていても なくならないのはなんでだろう 思っていたよりもなんとなく 都会には猫が多い気がする あいつら夜には一体どこで 丸くなっているんだろう 静か過ぎる夜は 音が聞こえる 光縮れ、水撃たれて 誰か叫んだ 丑三つ時も外はそんなに暗くない もうたいして暗くはない もっと もっと何も見えなかった部屋が そんな部屋がどこかにあった
前書きまずはこの本を手に取っていただきありがとうございます。 私たちの仕事が誰かの目に留まることが本当に嬉しいです。 同じように、誰かに知ってほしい仕事がたくさんあります。 そのうちのいくつかを記しました。 この先には、私の同僚の編集者たちが 「こんな変わった仕事もあるのか」 「皆さんの暮らしが豊かになりますように」 「なんて面白い話だ!」 「もっとみんなに知ってほしい!」 と感じた職種や会社について インタビューテイストでまとめてあります。 私たちが知った新しい体験