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劇場屋根裏の鳩

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映画・演劇・歌舞伎など、見てきたものの感想など
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2023年12月の記事一覧

【歌舞伎鳩:番外編】日本橋・天守物語(十一月シネマ歌舞伎)

「坂東玉三郎×泉鏡花抄」と銘打ったシネマ歌舞伎4本のうち、残りの2本。 公開をとても楽しみにしていた作品群で、本命は「天守物語」でした。 前回の感想は以下↓ グランドシネマ 日本橋 稲葉家お孝:坂東 玉三郎 瀧の家清葉:高橋 惠子 葛木晋三:松田 悟志 笠原信八郎:藤堂 新二 雛妓 お千世:斎藤 菜月 植木屋 甚平:江原 真二郎 五十嵐伝吾:永島 敏行 あんなに可愛い女を振りやがって!!! の気持ちと、まあでも分かるよ……の気持ちがあります。でも言わずに別れると決め

そこらへんの鳩がうっかり歌舞伎見物にはまった話

もっちりデミタスさんのアドベントカレンダー(2023)寄稿です。 はじめに歌舞伎、見たことありますか。見かけたことがある方は、まあ日本人なら誰しもでしょう。白塗りの顔と赤い隈取り、あとなんか髪の毛ぶんぶん振るやつ。他には、男性が女性を演じる、というところくらいがおもな印象ですかね。不肖鳩はだいたいそんな感じのイメージでした。 もとより、いろんな事物について、ほんものを見たいと思っている鳩ではございまして、こと演劇や舞台芸術につきましては興味のあるものですから、歌舞伎もだいぶ

【舞台鳩】解なし(言式)

解なし 脚本/演出 梅津瑞樹 2023年 10月25日(水)- 29日(日) 銀座 博品館劇場 キャスト 梅津瑞樹 橋本祥平 感想 公式サイトをご覧になれば分かる通り、なんの情報もないまま見ました。 行ってみたら5本の短編オムニバス形式での上演でした。 鳩はたまにこのユニットを立ち上げた梅津瑞樹さんの舞台を覗きに行くわけですけれども、それはどういうところからかと言うと、表現に対する誠実な姿勢と、そこから表現してくるものがたまに思わぬ方向から飛んでくることだとか、まとも

【歌舞伎鳩:番外編】海神別荘・高野聖(十月シネマ歌舞伎)

「坂東玉三郎×泉鏡花抄」と銘打ったシネマ歌舞伎4本のうち、今回は2本。 公開をとても楽しみにしていました。 だって泉鏡花の世界観が現実のものになるのが見たかった。 そして泉鏡花の文章は、読んでいて本当に美しいため、どうしても人間が話すのを聞いてみたかったのです。 残り二本の感想は以下↓ 海神別荘 美女:坂東 玉三郎 博士:市川 門之助 女房:市川 笑三郎 沖の僧都:市川 猿弥 公子:市川 團十郎 人間が1日で受け取れる美の総量をやすやすと超えてくる。 舞台上の美しさ

【歌舞伎鳩】妹背山婦女庭訓 第二部(初代国立劇場さよなら特別公演 10月歌舞伎公演)

令和5年9月歌舞伎公演『妹背山婦女庭訓』<第二部> 2023年10月4日(水)〜26日(木) 国立劇場 <第一部>の感想はこちら↓ あらすじ ざっくりとしたあらすじ: 序幕 布留の社頭の場「道行恋苧環」 杉酒屋の娘お三輪は隣家に越してきた烏帽子折求女と好い仲に。 互いに苧環を取り交わして夫婦の誓いを交わしたものの、求女の元には夜毎訪ねてくる別の女がいる。 求女は実は烏帽子折に扮した藤原淡海であり、夜毎訪れる女は朝敵蘇我入鹿の妹・橘姫であった。 七夕の夜、ついに求女が橘姫

【歌舞伎鳩】東海道四谷怪談・神田祭(片岡仁左衛門 坂東玉三郎 錦秋特別公演)

片岡仁左衛門 坂東玉三郎 錦秋特別公演 2023年10月7日(土)~24日(火) 東海道四谷怪談・神田祭 御園座 いざ御園座! いい響きですね、御園座。 さすがにこちらは劇場の場所も知らず、とりあえず名古屋、ヨシ!の気分でお切符をとりました。 だって見たいじゃないですか?「四谷怪談」。 四谷怪談もぼんやりと、顔がくずれるお岩さんの話、としか知らなかったわけですが、面白いお話だと知ったのは以下のアニメのおかげです。 まあまさかこれを見ていた時は、このあと歌舞伎に興味を持っ

【歌舞伎鳩】双蝶々曲輪日記・菊・水戸黄門(錦秋十月大歌舞伎)

歌舞伎座新開場十周年 錦秋十月大歌舞伎 2023年10月2日(月)~25日(水) 昼の部:天竺徳兵衛韓噺・文七元結物語 夜の部:双蝶々曲輪日記 角力場・菊・水戸黄門 讃岐漫遊編 双蝶々曲輪日記 角力場 ざっくりとしたあらすじ: 人気力士・濡髪長五郎と素人力士・放駒長吉の取り組みが行われている角力小屋。結果は長吉が勝つ番狂せに終わり、関取に勝った長吉は浮かれ模様。しかし長五郎は、自らを贔屓にする若旦那・与五郎とその恋人である遊女吾妻の仲をもつために、わざと長吉に勝ちを譲った

【歌舞伎鳩:番外編】野田版 桜の森の満開の下(九月シネマ歌舞伎)

野田版 桜の森の満開の下 あらすじ 耳男:中村 勘九郎 オオアマ:松本 幸四郎 夜長姫:中村 七之助 早寝姫:中村 梅枝 面白かった……物語に引き込まれました。 縦横無尽に走り回る耳男のパワフルさ、耳を切り落とされて痛がりながらもどこか何か抜けているような違和感、夜長姫に募らせる恨みと、それが反転する感情の表出、中村勘九郎さんに圧倒されました。こんなに面白い役者さんを見つけられて鳩は嬉しい。 中村七之助さんの夜長姫も凄まじかった。妖じみた女を、もうそれが本性かのように

【歌舞伎鳩】妹背山婦女庭訓 第一部(初代国立劇場さよなら特別公演 9月歌舞伎公演)

令和5年9月歌舞伎公演『妹背山婦女庭訓』<第一部> 2023年9月2日(土)~26日(火) 国立劇場 第二部の感想はこちら↓ あらすじ ざっくりとしたあらすじ: 序幕 春日野小松原の場 うっかり互いに一目惚れをした大判事清澄の息子・久我之助と太宰少弐の娘・雛鳥。 腰元たちが仲を取りもち恋人となるも、実は二人は領地争いをしている家柄同士であることを知る。 二幕目 太宰館花渡しの場 帝に成り代わった蘇我入鹿が太宰家に来て、少弐の後室(未亡人)定高には雛鳥を自らに差し出すよ

【歌舞伎鳩】祇園祭礼信仰記・土蜘・二条城の清正(秀山祭九月大歌舞伎)

歌舞伎座新開場十周年 秀山祭九月大歌舞伎 二世中村吉右衛門三回忌追善 2023年9月2日(土)~25日(月) 昼の部:祇園祭礼信仰記・土蜘・二条城の清正 夜の部:菅原伝授手習鑑 車引・連獅子・一本刀土俵入 (余談)ついに松竹歌舞伎会入っちゃった!!! あ〜〜〜あ!!!!! 祇園祭礼信仰記 金閣寺 ざっくりとしたあらすじ: 天下を狙う松永大膳は、時の将軍・足利義輝の母慶寿院尼を金閣寺に幽閉する。 また同時に思いを寄せる絵師・雪姫を捕え、寺の天井に龍を描くか、自分の女になれ

【文楽鳩】曾根崎心中(初代国立劇場さよなら特別公演 8・9月文楽公演)

令和5年8・9月文楽公演 2023年8月31日(木)~9月24日(日) 第一部:通し狂言 菅原伝授手習鑑 第二部:寿式三番叟・通し狂言 菅原伝授手習鑑 第三部:曾根崎心中 あらすじ ざっくりとしたあらすじ: 大阪北新地天満屋の遊女・お初と、醤油問屋の手代・徳兵衛が心中する物語。 徳兵衛は友人・九平次に金を騙し取られた上、人前で恥をかかされる。 自らに汚点がないことを誰も信じてくれないため、もうこうなっては死んで身の潔白を晴そう、ということで、恋人のお初と曾根崎の森で心中す

【歌舞伎鳩】怪談 牡丹燈籠(坂東玉三郎特別公演)

坂東玉三郎特別公演 片岡愛之助出演 2023年8月3日(木)~27日(日) 南座 いざ南座! 初めて南座へ。 京都・祇園四条駅を出たところすぐに劇場があるのは知っていたのですが、歌舞伎の劇場とすらも知らず、いつも賑わっているな〜程度に思っていました。 そこへ入ることになるとは? 成り行きとは不思議なものですね。あの時うっかり歌舞伎座のお切符をとらなかったら、ここにも足を踏み入れることはなかった。 歌舞伎座と比べるとこぢんまりとした印象で、フロアの高さ?が高いような気がする

【バレエ鳩】白鳥の湖 全2幕(キーウ・クラシック・バレエ)

(ヘッダーの写真はサギ) いざバレエ 昔から見たいものがたくさんある。能・狂言に始まり、歌舞伎、文楽、オペラ、バレエ、などなど。 今年に入ってようやく歌舞伎を見、感想文を認めるまでの沙汰になっておりますが、この度ようやく念願のバレエを見ました。 なんと懸賞でチケットを当ててしまった……特に応募したことも忘れていたため、いきなり届いて驚きました。ああいうのって当たることあるんだ。 あらすじ 出演(主な来日予定ソリスト) 長澤美絵 オクサーナ・ボンダレンコ アンナ・レズ

【歌舞伎鳩:番外編】特別編 幽玄(八月シネマ歌舞伎)

特別編 幽玄 能の代表編目「羽衣」「道成寺」「石橋」を題材に、坂東玉三郎と太鼓芸能集団 鼓童がコラボレーション。 能・歌舞伎といった芸能と、和太鼓の響きが作り出す、新たな次元の芸術作品。 「羽衣」 漁師が見つけた天の羽衣を持ち帰ろうとすると、落とし主の天女が返して欲しいとやってくる。漁師は、返す代わりに舞を見せて欲しいと頼む。 「道成寺」 一人の白拍子が寺にやってきて、舞を奉納する。舞ううちに白拍子の様子がみるみる変わっていき……。 「石橋」 浄土へと続く石橋に獅子の