そこらへんの鳩がうっかり歌舞伎見物にはまった話
もっちりデミタスさんのアドベントカレンダー(2023)寄稿です。
はじめに
歌舞伎、見たことありますか。見かけたことがある方は、まあ日本人なら誰しもでしょう。白塗りの顔と赤い隈取り、あとなんか髪の毛ぶんぶん振るやつ。他には、男性が女性を演じる、というところくらいがおもな印象ですかね。不肖鳩はだいたいそんな感じのイメージでした。
もとより、いろんな事物について、ほんものを見たいと思っている鳩ではございまして、こと演劇や舞台芸術につきましては興味のあるものですから、歌舞伎もだいぶん昔から見てみたいとは思っていたわけでございます。
ちなみに、見たいものリスト:能・狂言・歌舞伎・文楽・落語・相撲・バレエ・オペラ・クラシックコンサート・その他(他にも何かありそう)のうち、相撲とオペラ・クラシックコンサートを除くものは見に行くことができました。やったね。
歌舞伎を初めて見たのは今年の4月でございますが、果たしてどうしてそれから毎月のように歌舞伎座に芝居見物に行っているのか、鳩もまったくそんなつもりはなかったわけで、今もちょっとよく分かっていません。なんで?まあしかし実際に現時点でこの沙汰ですので、どうしてこんなことになったんだったかを書いていこうと思います。うっかり芝居見物にはまるさまをご笑覧ください。
すごい、この時点で感じるけど長くなりそう。まあ気長に、気が向いたら、もしくは歌舞伎を見に行きたくなったら、この記事を思い出してください。
歌舞伎、気になる。
初めて人間に見惚れた鳩の話
鳩の見たいものリストは、まあだいたいが行ってみた〜い!というミーハー心から出来上がっているわけで、歌舞伎もそのひとつでした。このリストの消化具合については、やはりとっかかりがあるかどうか、というところがまずひとつあります。
能・狂言は、国で薪能をやっていたことがあり、見たことがありました。
落語は、友人が落語にハマったために、連れていってもらいました。
バレエは、たまたまチケットを当てたわけです。
文楽は、歌舞伎を見たからですね、これは芝居見物に通うようになった頃に見ました。
それでは歌舞伎は……?
東京・上野には、東京国立博物館、通称トーハクなる、室内の規模よりも外観を小さく見せるように作られていると思われる博物館がありますね。この常設展示室はまさに迷宮のようなものでございますが、部屋ごとにジャンルが分かれていて、飽きさせずにいろいろなものを鑑賞できるつくりになっています。
もういつ観たのだかも覚えていませんけれど、この展示室の一室に歌舞伎の特集の部屋がありました。だいたいいつでも能・狂言と歌舞伎の部屋は隣同士になっており、衣装だとか、能の部屋であれば面だとかが展示してあります。鳩が見た時には、その歌舞伎の展示室で映像が流れていました。
坂東玉三郎が舞う「道成寺もの」であったことしか覚えていません(その時は「道成寺である」ことしか分からなかったため)。
ちなみに「道成寺」のお話はあれですね。旅の僧安珍に、宿の娘清姫が恋をするものの、逃げられてしまい、追っていくうちに怨念を発して蛇になるというものです。安珍はお寺の鐘に隠れるのですが、大蛇が巻き付いて……。
歌舞伎や能では代表的な演目なのでしょうか。鳩がこれを知っていたのは、月岡芳年が浮世絵に残していたためです(『新形三十六怪撰』清姫日高川に蛇躰と成るの図)。
話が逸れました。その道成寺の演目の、ほんの2分程度の映像が展示室で流れており、まあぼんやり見ていたわけですが、その2分です。鳩が歌舞伎を必ず見ようと思ったのは。
もう月並みな言葉で申し上げますと、その美しさに惚けてしまったわけです。田舎者が花魁道中で傾城に見惚れるあれです。あれを、鳩もやりました。役者の名前を一向に覚えられない宿命を持つ鳩が、名前を一発で覚えて帰りました。
もちろんお姿やお顔立ちが美しいというところも大いにはあるのですが、それだけでなく、舞の動きのしなやかさ、目線の使い方、衣装のさばき方、その一瞬に対する表現の完成度の高さ、それを引き立てる華やかな舞台の大道具と、衣装・小物類。動画の作られ方も、そこには入るでしょう。
総合的にその2分が、鳩の心を攫っていきました。展示室の多くあるような展覧会では、動画はあまり肝を入れて見ないのですが(時間がかかるため)、こればかりはぼんやり突っ立って、数回めぐるのを眺めていました。
これは本当に強烈な、得難い経験でしたね。今でもその時のはっとした心象が鮮やかに思い出される。
歌舞伎座への道のり
それですぐに歌舞伎のお切符を……! となればもう美しいストーリーなわけですが、この怠惰な鳩、そんなようなことにはなりません。期待を裏切り続けます。
ぼんやりその体験を持ち帰った後、ことあるごとに反芻しつつ歌舞伎座の公演案内などを見たりはしていたのですが、なにが踏ん切りがつかないって、お切符の価格です。というのも鳩には、劇場に入る時には必ず一等良いお席で、という妙なポリシーがあります。良いものを良い席で見て、一等良い状態で鑑賞体験を得たい、というところです。映画館ですら、できる限り目線中央、画面水平中央を取りにいきます。
歌舞伎座の一等席のお切符は大体¥18,000程度、通常の現代演劇やライブハウスや、まあ劇団四季なんかと比べましてもチョットネ……お高いなと……二の足を踏んでいたわけです。
(歌舞伎座はお安い席は本当にお安く、幕見というシステムなら¥1,000〜¥2,500程度から見られます。三等B席で¥4,000程度。歌舞伎座においてはこの三等席・幕見席でも、素晴らしい鑑賞体験ができるということがわかりましたので、最近はこのあたりの常連です)
ようやく歌舞伎座
今年の四月の公演は、鳩が魂を抜かれた坂東玉三郎さんと、もうお一方、片岡仁左衛門さんという役者さんが、主役を勤めている演目がありました。このお二方のご共演が、どうやら大変人気らしいというのは後で知ったことでございます。
またここで演目案内など眺めていましたら、お知らせのところに「公演中止」の文字が。仁左衛門さんのご体調が優れなかったようで公演中止、というのを見て、まあそんなこともあるよな〜なんて思いつつ、得意のインターネットで役者さんについて何気なく調べていてびっくり。
何をびっくりって、失礼かもしれませんが、ご年齢です。お写真や、先の見惚れた動画もそうですが、白粉をつけた役者さんたちのご年齢ってほんとうに分からないものですね。
それで鳩は思いました。いつまでこの役者さんたちは舞台に立つのだろうと。また、いつまで鳩もこうした興行を見に来られるのだろうと。いなくなってから、見られなくなってから悔やんでも遅いのです。
ということで一念発起して、お切符を探しました。
どきどき歌舞伎座
鳩、どこにでもたいがいひとりで出入りします。よくそんなことをするのですが、しかしまあ、本当に、歌舞伎座に入るのは緊張しました……。
東銀座駅から繋がる地下の、お店屋さんが並んでいる広場の横からエスカレーターに乗る段階でもうどきどきです。ここを上る人は99.5%くらいみんな歌舞伎座に行くわけです。
お着物姿のマダムたち、上品なお見かけのご夫婦、はたまたラフなおじさま、外国籍の方々まで、もうさまざま。さまざまの歌舞伎ラバーの間に、ど素人鳩は一人で立ち入って行かなければならない。
お、恐ろしかった……。今ではもうなんでもないですし、ほんとうに怯える必要なんて微塵もないのですが、この地で数百年やってます!伝統文化の中心!みたいなところにこの、なんにも分からないそこらへんの鳩が迷い込むわけですから、もうネ。分かってるんですよ、歌舞伎見物は昔から庶民のものだって。分かっているけれども……。
もう柄にもなく行く前から色々調べました。歌舞伎座の場内の配置図とか、なんのお店があるかとか、休憩のシステムとか。調べ尽くしました。そのおかげで上の写真を見ればわかる通り人もまばら、大変早い時間に会場に着き、お席についてもそわそわしていました。
でも始まってしまえばそんなこと、忘れてしまいます。
やはり本物を見ることは素晴らしいのです。見たことがない、知らないものに触れるのは、やっぱり楽しい。この時の詳しい感想はこちらにございますので、ご興味があれば覗いてみてください。
歌舞伎、楽しい。
Q.なんで毎月歌舞伎座にいるんですか?
A. 鳩も分かりません。面白いとは思えど、なんで毎月いるんですか?
ここで鳩が思う歌舞伎の楽しさを並べてみようと思います。
江戸時代がそこにある
鳩の小さい頃の夢は宇宙飛行士でした。その後は考古学者。古代エジプトが大好きで、博物館・美術館好きはたぶんここから始まっています。それからだいぶあとになって今まで好きなのが、近代文学。明治後期〜昭和初期くらいまでの文豪の文章が好きです。これはその当時の日本語の表現が好き、というところと、その当時の風俗が好き、というところなのですが、さて、この列挙したものの共通点、分かりますか?
確かにそこにあるのに、手が届かないものたちです。
空に輝く天体も、そこにあるんですよ、もしくはあったんです。でもまあ鳩が、彼の地を踏み締めることは、おそらくないでしょう。
だいぶ時代感がかけ離れていますが、古代エジプトも、明治・大正時代も、確かに通り過ぎてきたわけです。でももうその時代の風俗は失われてしまったし、再現はできても二度と還らないものですね。
遠く近いものへの憧れ。余白に見出す夢。確かにそこにあるのに、その残滓にも触れられるのに、全ては結局分からずじまい。その圧倒的なろまんよ。
ということで、主に江戸時代ごろの風俗が色濃く反映された歌舞伎を、好きにならないわけがなかったんだなあ。
そして歌舞伎が"現代の演目"であった時代から受け継がれているものを、セットを組んで、人間がやってくれるわけですから、もうたまらないですよね。なんでもない衣装のひとつ、なんでもない小道具のひとつ、なんでもない言葉遣いのひとつ、それぞれに江戸時代の文化や風俗が、今も生きている。ひとたび幕が開けば、あの舞台上ではいつでも、確かにあった一時代の、息遣いが感じられるのです。
また、鉄漿をさす(お歯黒ですね)、煙管を遣う(たとえばただ呑むだけでなく、遊女が客にちょっかいをかけるのに使うとか)、切火を打つ、行燈の油をどうやって運んでいたか?などなど、なんでもない行動や小物を見たりするのがまた発見で、楽しい。雪道で高下駄の先に布を被せてスリッパのようにしているのを見た時には、な、なるほど〜〜〜〜!!!となりました。お話の筋には全く関係ない、ほんとうになんでもないことですが、なんでもない生活のことは取り沙汰して残ったりするものではありませんので、もうなんでもないように出てきてそれを見つけると、鳩は大喜びです。
完成されていて、まだ途中
例えば数百年前から受け継がれている演目は、何百回と公演を繰り返して、その度ごとに演技や演出が洗練されていき、大道具や小道具も効果的に変化したり、方法論が生まれたり、しているのだと思います。そして現代の鳩が見ているものは、ほとんど完成されたような状態なのでしょう。
それでも、演じている人も、舞台を支える人も、みんな少しずつ変わっていく。演目に関わる人たちが、いざ上演するとなってそこでまた、一人ずつ別の最適な表現を探したり、もっと面白くなる方法を、もっと観客を楽しませる方法を、もっと脚本の意図に沿った演出を、といったように、また一つずつ良いものにしようと表現を磨き上げていくのです。
そうした表現への探究の積み重ねで現在上演されている芝居があり、それがまた積み重ねを増しながら受け継がれていく。それぞれの作品の舞台としては現代から離れた古いものですが、現在上演されているものは、今ここ、数百年の積み重ねの上の最新の表現なんですよね。
また、たとえば12月は歌舞伎座で初音ミクの歌舞伎をやっていますし、今年の公演ですと刀剣乱舞の歌舞伎だったり、来年上演予定のヤマトタケルだとか、新しい演目もたくさん生まれています。
歌舞伎を見ていて思うのは、自分たちの良さや強みを完全に理解しているのだろうなということ。その上で、ただ守りに入ることなく、先に進み続ける姿勢があるというのが大変好ましいと思っています。
けっこうアナログ
毒をかけると作り物の植物が萎れるというような、ちょっとした仕掛け、浅葱色の幕を落としてその下でスタンバイしていた数人が人力で運ぶやつ、絵から出てきた虎(もっちゃりしたぬいぐるみ)、見得を切る蝦蟇(着ぐるみ)、獅子舞的な構造の人力の馬などなど……、アナログな仕掛けというか、アナログな方法をとっている演出がたくさんある。これが鳩は大好き。
限られた方法の中で、できる限り観客を楽しませたり驚かせたりするのに、いかにやっていくか、という創意工夫が見えるのがほんとうに好きなんですよね。表現者の楽しさすら垣間見える。娯楽の本質を最大限表出させているのが、こういった仕掛けだと思うわけです。
日本式ミュージカル?
これはかなり語弊があるかも、というところもあるのですが、似たところがあるな、と思ったのと、鳩個人的にはうっかりはまった理由になるのであげておきます。
歌舞伎は基本的には生音の演奏があり、義太夫さんなんかが入ったりすると、その時の登場人物(主役とか)の心情を歌ったりし、かつそれに合わせて役者さんが舞うこともあるわけで、これ、ミュージカルでは?????? ただし、歌いながら踊ることはないです(おそらく・今まで鳩は見ていない)。
鳩はミュージカルというか、古いミュージカル映画が大好き。今まで見たすべての映画のなかで一番好きな作品は「雨に唄えば」と口癖のように言い出します。
これはかなり感覚的なところなので、鳩以外には伝わらないかもしれないのですが、このつくりが似ているという部分だけでなく、登場人物に対する感情の盛り立て方や、観客への娯楽の魅せ方、投げかけ方のようなところが、ミュージカルと歌舞伎では近しいように感じています。観客を高揚させるやり方が似ているというか……いやあるいは、鳩が好きな部分を突いてくるのが、この二者というところなのかもしれません。すみません、まとまらなかった。
まあしかし歌舞伎を見ていて、なんだかミュージカルと似ているなあと思い、それなら鳩も好きになるわな、と思ったというところはほんとうでございます(前述しているものと被りますが、古いミュージカル映画にはそれこそ制限のなかの創意工夫が多いです。もしかするとやはりそこなのかも)。
歌舞伎、見よう。
そんなこんなで、毎月歌舞伎座に出没する鳩の出来上がりでございました。面白く思える点がたくさんあったことと、必ず毎月興行をしている場所があり、毎月毎月、知らない物語を上演している、というのも大きいのかもしれませんね(あとお切符が安いこと)。
今は知らない演目ばかりですが、今後、一度見たことがある演目を見たりするのも楽しみです。それが歌舞伎の醍醐味でもあるでしょう。
歌舞伎に行きたい人
いざ歌舞伎座と思って、鳩はめちゃくちゃいろいろ調べたのですが、それはやっぱり身構えてしまったからですよね。なんか伝統的なところって、敷居高くて怖〜……というやつです。鳩がぼんやりうっかりもう半年近くいろんなところで歌舞伎を見ていても、身構えたようなことは起こりませんから、やっぱりそれは思い込みだったわけですが、まあ百聞は一見にしかずかも。
もしいつか歌舞伎に行きたくなって、たぶん調べることは以下だと思うので、列挙しておきます。いつか歌舞伎に行きたくなったら、ぼんやり思い出してください。
どこで見られる?
必ず毎月興行をしているのは、東京・東銀座の歌舞伎座。
東京はあとは主には、新橋演舞場(東銀座)、浅草公会堂(浅草)。
ほかの主な劇場は、大阪松竹座(大阪)、南座(京都)、御園座(名古屋)、博多座(福岡)。
まあともかくこの公演情報ページを眺めていれば、一覧で情報取得できると思います。服装は?
正直、通常お出かけする時の服装ならなんだっていいと思います。帽子をとる(盛り髪や高いところで髪を結ばない)、動くと音の出る素材の服を着ない、あたりがよく言われているところ。あとはなんだっていいです。ラフな格好の人もいらっしゃいますし、たまにでかいリュックのバックパッカーとかもいますよ。床もふかふかだし高いかかとの靴ががどうとかもそんな関係ないんじゃないか……?何か必要なものある?
公演情報やチラシなんかからあらすじを読んでおくとより分かりやすいです。筋書(パンフレット)を買っておいて、公演中読みながら見るのでもいいと思います(たまにそういうお客さんを見かけます)。
イヤホンガイドを借りると吉。解説者さんたちが、片耳からそっと豆知識を語りかけてくれます。わかりづらい言葉を教えてくれたり、演出の説明をしてくれたり大活躍です。台詞が聞き取れなくてもなんとかなります。
あとはオペラグラスを持っていると楽しい。開場時間は?
面白いことにこれどこにも書いてないんですよね。まあだいたい一時間前くらいが目安なんじゃないかと思います。お弁当食べたい
休憩時間はお席でお弁当食べられます。お膝の上ですが。あとロビーに休憩スペースがありますが、椅子取りゲームです。
いろんな売店でお弁当だのお菓子だの飲み物だの、あらゆるものが売っておりますが、歌舞伎座三階西側(下手側)ロビーにある、めでたい焼がお手頃美味しいです。もちもち紅白の白玉入りたい焼き。数量限定なので並ばないと買えないかも。一番安い席で様子見したい
まず歌舞伎のシステムって、一公演の中に複数の演目が入っています。
【「お話①」(休憩)「お話①続き」(休憩)「舞踊の演目」】これで一セットのイメージです(構成は公演によって変わりますが)。一幕見というのはこの「お話①」だけ見る、というのができるシステムです。だからお安く見物できるわけですね。歌舞伎座ですと常設で4階にお席があります。他の劇場はまちまちなのかな……。ちょっとよく知りません。
歌舞伎座では、幕見席の8割が指定席。前日12時から販売開始です。当日劇場で自由席も購入できますが、これは人気の演目だと朝早くから並ばないと買えないようです。価格は演目によってこれもまちまち。
ここから指定席お切符が買えます。
ちなみに幕見席のイヤホンガイドは、本来の切符で場内に入るより安いです(現在は現金のみ1台¥500)。通常の切符はどこで買うの?
ここです。歌舞伎座以外の劇場だと、ここで取り扱いがないこともあります。完売していても、戻りと呼ばれるお切符が、たまに出てきたりするので、諦めずに見張っておくのも手ですし、チケトレも公式リセールがありますので、チェックするのも良いですね。
ちなみに休憩含め一公演三時間くらいあるよ。長丁場ですが、劇場の中の世界に浸るのも良いものです。おすすめの席は?
2階以上でしかわからないですが、強いて言うなら上手側が花道がよく見える気がする。東席・西席は歌舞伎座では座ったことないですが、見切れる可能性が高いかも。西席は特に、花道が見えないんじゃないかと思います。お客さんが立ち上がって覗き込んでいるのを見たことがある。
3階席に座ると近くに大向こうさんがいることもあります。
3階東席・西席は、高確率で端の方が見切れるんじゃないかな、おそらく。
これも歌舞伎座では座ったことがないのですが、どの階でも1列(通路すぐ上)は避けた方がいいかも? 手すりが視界に入って邪魔な確率が高いです。
(舞台を正面にして右:上手・西、左:下手・東)難しい? 退屈?
これはなんとも。ただ言葉が聞き取れないことは稀にあるので、やっぱりイヤホンガイドか予習があると良いかと思います。でもたまに前のお席で寝てるおじさんとかいるよ。鳩も一回だけ寝落ちしたことあります。だからまあ身構えなくて大丈夫。鳩といっしょにぼんやり気軽に歌舞伎見物しましょう。別に雰囲気見るのでも楽しいしね。
歌舞伎に限った話ではないですが、なんかわかんないけどすっげ〜!とか、そのくらいでいいと鳩は思っている。(他になんかあったら教えてください)
素人鳩、素人なりに答えられる範囲で答えます。
鳩のお気に入り演目3選
せっかくなので、今まで見た中でお気に入り演目をまとめました。
鰯売戀曳網
鰯売りの猿源氏が、傾城蛍火に一目惚れ。身分を偽装して、蛍火のいる揚屋に会いに行って……。という話。ただただハッピーなラブコメなんですが、結構設定がすっ飛んでいるというか、いい感じにおとぎ話感があって見ていて楽しい作品でした。三島由紀夫の脚本らしい。
シネマ歌舞伎という、歌舞伎の興行を映画化したもので見たので、実際に見てみたい演目のひとつです。
大江山酒呑童子
源頼光による酒呑童子退治。舞踊劇です。
酒呑童子のコミカルさと可愛らしさ、たまにぞっとする妖っぽさの行き来が面白く、とても見応えがありました。
道行恋苧環
求女をめぐる、お三輪と橘姫のキャットファイ……恋の鞘当てでございます。これも舞踊劇。
町娘のお三輪がほんとうに可愛い。お姫様と町娘が並んで同じ振りで舞うのが面白く、また終わり方が心に迫ります。
これは「妹背山婦女庭訓」という演目の中の一場面。この場面以降お三輪が酷い目に遭うため、鳩はたいそう怒りました。
おしまい
こういう文章は初めて書きました。まとまっていなかったり説明不足感があるかもしれませんが、何卒ご容赦。あと長い。ごめん。
ともかく、鳩にとって歌舞伎がとても面白くて楽しい、という話でした。
いったい何がいきなり心を鷲掴んでくるか、ということはわからないものですね。ほんとうにうっかりですよ。うっかり。惚れちゃったね。
おまけ
今年見た演目一覧です。リンク先は感想一覧。
暇で仕方のない時・活字を摂取したい時にどうぞ。
いつか誰かの足がかりになると良いなと思って書き始めました。
与話情浮名横櫛
親方の女(元芸妓)と呉服屋の長男が木更津の浜で出会っちゃう話。連獅子
獅子が毛をぶんぶん振るあれ。籠釣瓶花街酔醒
田舎の商人が花魁に一目惚れするものの、恋人に唆されて手酷く愛想尽かしする話。傾城反魂香
吃りの絵師が妻を連れて免許皆伝の申し出をするも、師匠にすげなく突き返されて泣く泣く死ぬしかないとなる話。もっちゃりした虎と、絵が抜ける手水。児雷也
山の中で出会った女が離れ離れになっていた許嫁で、なんやかんやあり、蝦蟇の妖術を授かって親の仇を討ちに行くぜ! 見得を切る蝦蟇!!!扇獅子
芸者たちがきゃっきゃしながら四季を舞う演目。可愛い芸者が獅子の毛振りをする。日高川入相花王
文楽のお人形をそのまま歌舞伎として役者さんがやっている。
僧・安珍に一目惚れした清姫が、それを追うもののすげなくされて蛇になる……(道成寺)鷺娘
道ならぬ恋に悶える鷺の精が娘姿で舞い踊る。日本振袖始
八岐大蛇(石長姫)への生贄に捧げられた稲田姫を救うため、素戔嗚尊が大蛇退治をする話。新作歌舞伎『刀剣乱舞 月刀剣縁桐』
三日月宗近率いる六振りが、歴史改変を阻止するため、永禄の変あたりに出陣する。菊宴月白浪
忠臣蔵外伝。忠臣蔵では一言しかセリフのなかった斧定九郎が主人公。
塩谷の家臣であった定九郎が、盗まれた家宝(花筐の短刀)を取り戻すべく盗賊・暁星五郎となって活躍する。大凧に乗る宙乗りあり。屋根の上で瓦投げ合ったりする。神明恵和合取組(め組の喧嘩)
遊郭で揉めたことをきっかけに、鳶と相撲取りが派手に喧嘩する。鰯売戀曳網
恋の病で仕事が手につかない鰯売の猿源氏が、身分を偽って恋の相手傾城蛍火に会いに行く話。大江山酒呑童子
源頼光と平井保昌・頼光四天王の酒呑童子退治。新・水滸伝
梁山泊に集う盗賊たちが、流れ着いた林冲と自らの仲間を守るため、朝廷の兵を相手に戦う話。特別編 幽玄
和太鼓の集団鼓童と歌舞伎のタッグで、能の演目から「羽衣」「石橋」「道成寺」を再構成するパフォーマンス。恋に落ちたものの会いに行けないヘタレの男に恋焦がれて死んだお露。幽霊になっても会いに行くがそのうち幽霊だとバレて家に入れなくされてしまったので、下男の伴蔵に頼んで入れるようにしてもらう。
お露を手引きして大金を得た伴蔵が、妻お峰と故郷に帰り、大金を元手に商売をする。そして酌婦と浮気する。
祇園祭礼信仰記 金閣寺
金閣寺に立て篭もり幕府転覆を目論む松永大膳。慶寿院尼(足利義輝の母)を閉じ込めたり、横恋慕している雪姫を閉じ込めて迫ったりなどしているが、慶寿院尼は助けられるし、雪姫には逃げられる。土蜘
病中の源頼光に見舞いに来た怪しげな僧が実は土蜘だったので、平井保昌・頼光四天王とともに退治する話。二条城の清正
徳川家康に呼び出された豊臣秀頼が、二条城から大阪城に帰る船中で、家臣の加藤清正と昔語りをしたりなどする。妹背山婦女庭訓
朝敵・蘇我入鹿誅伐のために犠牲になる人間たちの話。恋を貫き自らの身命を賭すことこそが婦女の庭訓。双蝶々曲輪日記 角力場
素人相撲が関取に勝って大番狂せ。しかし関取は、贔屓の旦那とその恋人のためにわざと負けたのだった。菊
菊が咲き乱れる情景の中で、菊の精たちが舞い踊る。水戸黄門 讃岐漫遊編
光圀公が助さん格さんとともに讃岐の国へ。悪政を強いている領主、光圀公自らの息子を正すことができるのか?野田版 桜の森の満開の下
夜長姫・早寝姫を守る仏像を彫るために集められた三人の仏師はどれも偽物。耳男はそのうちの一人で、夜長姫に散々な目に遭わされる。怨念を込めて仏像を彫るが世界は混乱を極める。東海道四谷怪談
互いに惚れて結婚したのに、妻に愛想を尽かした夫が隣家の策謀に乗り、妻を殺して隣家の娘と結婚しようとする。祟られます。お岩さんの話。実は忠臣蔵外伝。神田祭
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地上の美女に惚れた海底の公子が、財宝と引き換えに美女を海底に連れてくる。公子と話していても美女は地上に未練があり、公子を怒らせてしまう。泉鏡花原作。高野聖
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三浦之助の家に押しかけ女房をしている時姫は、三浦之助の政敵の娘。時姫に心を許さない三浦之助。戦で酷い傷を負って帰ってきた三浦之助が、時姫に父親殺しを乞う。春調娘七種
蘇我五郎・十郎と静御前が、七種を持って踊る。三社祭
隅田川のほとりで、二人の漁師が三社様の縁起譚を踊ってみせる。悪玉と善玉のお面の舞。教草吉原雀
鳥売りの夫婦(実は雀)が放生会に鳥を放つ様子を踊ってみせる。そこへ通りかかった鳥刺しがその夫婦の様子を訝しむ。日本橋
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