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#小説

2022〜2023冬を楽しむ(一般書編)1/1

2022〜2023冬を楽しむ(一般書編)1/1

明けましておめでとうございます、本年もよろしくお願い申し上げます。ということで、早速一般書でおすすめの本を紹介したいと思います。

1.室生犀星『我が愛する詩人の伝記』
詩人室生犀星の視点から書かれた詩人たちの伝記。伝記といっても堅苦しいものではなく、室生犀星とその詩人との関係や出来事について語っている。そのため、人物の造詣も一般的な伝記よりも温かみのあるもので、その素朴さが楽しい作品。

2.『

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2022年版 夏の読書おすすめ10選 前半

2022年版 夏の読書おすすめ10選 前半

 夏と言えば読書感想文があり、読書を良くしたなあという記憶があると思います。ただ読書は気に入った本でないと長続きしないものです。そこで、一度手に取ってみて読んでほしい本を10冊用意してみました。お盆のこの時期に、また土日などのまとまった休みの時にサクッと読めて楽しめる本ですので、読書感想文のネタがなくて宿題に困っているという学生の方にもおすすめです。
 前半の5冊は読みやすい読書がやや苦手な人も読

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音楽の感覚を描こうとした小説ーナボコフ「ミュージック」

音楽の感覚を描こうとした小説ーナボコフ「ミュージック」

今回も読書紹介風のエッセイです。音楽も小説も芸術ですが、片方は聴覚、もう片方は視覚を刺激する芸術であるため、性格が大きく異なります。ただ作家の中には、音楽家の中には、それらをうまく融合しようと努めた人もいました。その一人であるナボコフ・ウラジミールの「ミュージック」という作品の一部(ナボコフ、Music, p.382, l.5 – p.383, l.6)を取り上げてみました。気になる人はぜひ一読し

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シェイクスピア『あらし』における「死」のイメージの考察

シェイクスピア『あらし』における「死」のイメージの考察

シェイクスピアの『あらし』(『テンペスト』)に関する考察を昔まとめたレポートを少し編集した記事です。シェイクスピア作品を色々読んで楽しみながら書いたので、楽しそうな雰囲気を感じてもらえたらというエッセイになっています。

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1、はじめに
 シェイクスピアの『あらし』において「死」を迎える登場人物は存在しない。それどころか、プロスペローは自身を離島生活に追い込んだ人物たちが死んでいないかをエ

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寅年記念の記事:『山月記』をより楽しむための表現に関する雑話

寅年記念の記事:『山月記』をより楽しむための表現に関する雑話

 あけましておめでとうございます、本年もよろしくお願いします。この記事はタイトルのように寅年を記念して虎に関する作品を取り上げたいと思い、『山月記』をよりたのしむための表現に関する雑話という内容で記事を書いてみましたので、お暇な時に読んでみてください。

本文が手元にない方のために、青空文庫のリンクを載せておきます。
青空文庫『山月記』(https://www.aozora.gr.jp/cards

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現代文キーワード小テスト #8.1

現代文キーワード小テスト #8.1

 今までの現代文キーワードシリーズとは異なり、小説で使われることがある表現をいくつかピックアップしたテストにしてみました。ただあまりにも多く作りすぎたので、今回は3セット分に絞って掲載しました。やり方は①〜⑩の単語の意味として最も近いものを一つ選ぶという形式です。軽い気持ちで語彙増強できるものと思って取り組んでもらえたらと思います。

第1セット
①けたたましい ②自負 ③いじらしい ④無聊 ⑤沽

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中島敦「狐憑」(こひょう)を国語の授業風に読む #6 味読 (最終回)

中島敦「狐憑」(こひょう)を国語の授業風に読む #6 味読 (最終回)

 このシリーズでは、国語の授業のように丁寧に作品を読み深めながら、1人で読書しただけでは気づかない作品の良さを知ることを目指しています。授業風ということもあり、長さは適量でカットし、深めたい人は参考文献を見てさらに深めてほしいという形をとりますので、物足りなさを感じたらぜひ参考文献類も確認してみてください。この記事は#6ですので、最初から読みたいという方は#1からご覧ください。
 今回は味読という

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自由に想像力を働かせながら楽しむ読書の一例: シェイクスピア『夏の夜の夢』における動物の表象

自由に想像力を働かせながら楽しむ読書の一例: シェイクスピア『夏の夜の夢』における動物の表象

昔書いたレポートをアーカイブ化したものです。読書は堅苦しいものと思わずに、想像を豊かに働かせて楽しむものということを少しでも体感してもらうために、敢えて昔の若々しい文体も残しています。読書への苦手意識が少しでも減らせたらと思います。

1、はじめに
 シェイクスピアの『夏の夜の夢』にはRene Girardが指摘するように、動物のイメージが多く登場し、それらが形而上の欲求や暴力と関連し、物語の基盤

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定番教材を楽しむ読書案内 #2 『羅生門』

定番教材を楽しむ読書案内 #2 『羅生門』

 『羅生門』といえば、多くの高校1年生向けの教科書に採用されており、来年度から始まる新課程のカリキュラムでも無事にカットされることなく、残った作品です。それだけ多くの高校生が読んだ作品であり、これからも読まれ続ける作品であると言えます。

 『羅生門』を巡って、よく扱われる話、特に味読と呼ばれるような精読が終わって改めて作品の主題やテーマ、作者の考えを読み解くような最後のまとめのような授業において

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『ガリヴァー旅行記』の魅力

『ガリヴァー旅行記』の魅力

 今回はとある大学の授業のTAとして、『ガリヴァー旅行記』の魅力について簡単に語った時の文章の一部です。意外と若い時に書いたなりにはまとまっているので、記事にしてみました。ちょっと衒学的な雰囲気もあって、当時らしいかなと思っています。なお、見出しのイラストはRichard Redgraveの Gulliver Exhibited to the Brobdingnag Farmer (1836)とい

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