ウォーキング中のコンサート
歩いていると素敵な出会いがあります。
それは近所の慣れた道でも、たまにしか行かない遠くの道でも、いつ、どこで起こるかは予想がつきません。
ときどき伺う義実家へは、電車で約1時間半、駅からは歩いて30分ほどかかります。
よくある住宅街の、のどかな道ですが、ウォーキング好きには歩きがいのある距離です。
上り坂であるため、食材を買い込んで大荷物で行く時は、ちょっとした筋トレにもなるくらいです。
そんな、よくある坂道なのですが、一段と景色を変える季節があります。
その道の両側には、太く背の高い桜並木があり、4月には桜のトンネルが出来上がっているのです。
お花見をするような場所でもないため、人通りも少ない。
風が吹いて花吹雪が舞ってくれた時には、美しく華やかで、まるでファンタジーの世界の中を歩いているかのような錯覚を起こすこともあります。
そんな空間へと変化するのでした。
なんでもない道でもこんな風に変えてしまうのですから、桜はやはり魔力があるのかもしれません。
そんな桜の木に、8月になるとセミがやってきます。
夏には葉のみとなったその桜並木は、緑のトンネルへと変化しています。
そしてその中を歩くと、セミの大合唱が始まるのです。
しかも、たくさんいるらしく、「ジージリジリ」と鳴くアブラゼミ、「シャーシャー」と鳴くクマゼミ、「チー」と鳴くニイニイゼミなど、あらゆる種類のセミが一斉に鳴くのです。
その中でもミンミンゼミはメロディー担当なのでしょう。
幅の狭い坂道という立地も関係しているのか、桜並木のトンネルが音響効果、独特な没入感をもたらしていて、とにかく大音量なのです。
そして、この時も再びファンタジーの世界に迷い込んでいるかのような錯覚を起こします。
今度はそこから抜け出したくなくて、このトンネルを行ったり来たりしてしまうのでした。
私はセミが好きですが、セミは桜が好きらしいです。
なんでもない道なのに、これまで行ったことも聞いたこともないコンサート会場にしてしまうのですから、桜はやはり魔力があるのかもしれません。
でも、その桜並木は、今はもうありません。
虫がついてしまったそうで、全てを伐採せざるを得なくなったそうです。
桜はずっとそこにあるものと思っていましたし、8月になれば、またセミの大合唱が聴けるものだと思っていましたが、あっけなく、いなくなってしまいました…。
歩いていると素敵な出会いがあります。
でも、そのご縁は長くは続かないかもしれないし、一度きりかもしれません。
だから常に出会いは一期一会として大切にしたいと思うのです。
今年もそろそろどこかでセミの大合唱が聴けないかしら…。
新しい出会いを求めて歩きに行こうかと思っています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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