一冊の本は、物語の種と雨と夢の力で出来ている『雨ふる本屋』児童書紹介⑪
今回紹介する『雨ふる本屋』は、雨が降ったら読書をしよう!なんて単純な本ではありません。
本(紙)にとっては大敵ともいえるような雨を本に降らせることで、物語が出来上がるという、摩訶不思議なファンタジー。冒険ものが好きな方には間違いなくおすすめです。
続編も出ていますが、一冊読み切りで満足できるので、ぜひとも子供たちに読んでもらいたい本📖
書籍紹介📝
あらすじ
小学生のルウ子がおつかいの帰り道、雨宿りに立ち寄った図書館で〈雨ふる本屋〉にたどり着いたところから物語が急展開していきます。
「雨ふる本屋」の中は、なんと部屋の中だというのに雨が降っていて、ふかふかと柔らかな床には草が生えているのです。部屋の至るところに、水中花の鉢や月の模型、ガラスの汽車など、いろいろな雑貨が置かれています。
ところが、雨ふる本屋はとても重大な問題を抱えていました。それは、本好き、物語好きにとって致命的な、「近頃、店の本が面白くなくなってきている」という問題でした。
この世界では、本が出来上がるのには人間の「夢の力」が必要だといいます。人間の子供たちの忘れられた夢や物語を〝種〟として仕入れ、そこに雨ふる本屋の特別な雨を振り注ぐことで、一冊の本が出来上がります。
しかし、その〝物語の種〟が面白くなくなってきているというのです。
突然やってきたルウ子は、突如その重大な問題を解決するために調査に出かけることに……。
ここがおすすめ
小学生くらいの子供が非日常空間に行き、成長を遂げてかえって来る。これは児童文学の世界では王道のプロットなのかもしれません。読み始めた時から、きっとルウ子は本が面白くない問題をしっかり解決してくれるのだろうと想像して読み進めるのですが、その解決までの流れこそ、子供のドキドキ、ワクワクをくすぐります。
ルウ子は等身大の子供として描かれているので、小学生ならではの喜怒哀楽が綺麗に表現されており、子供たちは感情移入して読み進められます。
文句を言ったり、諦めそうになったり、でも勇気を出して果敢に進んだり……。
大人が読んでも、小さな子供と一緒に冒険に出る楽しさを味わえます。
特に、ルウ子が病気がちでお母さんを独占している小さい妹に嫉妬している様子はほほえましいですし、同世代の子供たちはきっと同じ思いをしたことがあると思うので、ルウ子の成長に何かを感じ取ってくれると思います。
公式サイトでは挿絵もちらっとご覧いただけます👀
その他オススメの本
「雨ふる本屋シリーズ」は日向理恵子さんの代表作でありますが、他にも面白い物語をたくさん生み出されています。
『日曜日の王国』も同じくらいの子供たちにオススメです。
大人に読んでほしいシリーズ
日向理恵子さんは今年「いばら髪のノラ」シリーズ3冊を刊行されました。
それを知ってふと、前作の「火狩り王」シリーズがまだ読めていなかったことを思い出し、いま読み進めている最中なのですが、、、
これは同じ作者なのか!!!
と思うほど、面白くて衝撃を受けています。物語の設定もそうなのですが、文章の書き方、描写の仕方などがとても丁寧で、あっというまにその世界観に引き込まれてしまいます。
物語をうまく説明しきる自信がないので、以下、本の紹介文をそのまま引用させていただきます。
この紹介文だけ読むと、何だか小難しそうな気もしますが、個人的には上橋菜穂子さんの「守り人シリーズ」のような壮大な世界観が広がり、そして日向さんの文章力も相俟って、ぐいぐいと物語に引き込まれていくシリーズです。
私は、仕事が忙しく疲れ切った日の帰りの電車では、ダラダラとスマホをいじってしまいがちなのですが、『火狩りの王』はページを開くとあっという間に世界に引き込まれ、疲れているのも忘れて、読み耽ってしまいます。
ある時なんか、面白過ぎて本を閉じることができず、最寄り駅についてもそのままベンチに座って読み耽っていました(笑)。
疲れているのも、お腹が空いているのもすっかり忘れるほど没入していました(笑)
子供向けから大人向けまで、幅広い層に向けて創作をされている日向さんは本当にすごいと思います。
文庫本も出ていますので、ぜひ通勤電車のお供にしてください🚃📚