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夏のバイト

夏になるとじっとしていられなかった、昔の話。
色々なバイトの話。

初体験は高校生の時、デパートの婦人下着売り場(期間限定)の売り子さん。デパートの舞台裏には、一般客から見えないところに広い社員食堂やら控室やらあってワンダーランドだった。タイムカードなるものをカシャッとする時、ちょっと大人になった気がした。
自分ではしたこともないフリフリレースのブラジャーをお薦めしたり、サイズをお測りしたりするのは恥ずかしかったけど、もっと恥ずかしかったのは初めてのバイトを心配した父が下着売り場に様子を見に現れた時だった。

大学生になると、観光地での住み込みバイトにはまった。

阿寒湖でマリモを売ったり、
(運悪く有珠山噴火のせいで客足はさっぱり。マリモ全く売れず、すぐに解雇。飛行機の窓から見下ろした時、北海道が地図で見たのと同じ形だ!とわかって興奮で目が離せなかった。)

旧軽井沢銀座でTシャツを売ったり。
(当時の旧軽は今の竹下通りのような賑わいで、服は店頭に並べた側から飛ぶように売れた。憧れの観光地には色んなところから色んな人達が集まっていて、毎日がお祭りのようだった。)

味を占めた私は、さぁこの夏は何をしようか、どこに行こうか、待ってましたと、毎年計画を練った。今のようなネット検索もなかったから、友達との情報交換は貴重だった。
そうそう、気のあった友達と一緒にバイトをする、これも夏のイベントのひとつだった。

お金をいただくのも、もちろん嬉しかったけれど、何よりやったことのない仕事(作業)をやること自体楽しかったし、知らない土地で知らない人に会えるのにワクワクした。

アレはなんだったのだろう。

行ってみたい、見てみたいと
入道雲のようにムクムク湧いてきた、好奇心。
今日という日、1日分を燃やせればそれで満足、あっけらかん。汗をかいて、ぐっすり眠って、目覚めたら、明日という日はムクムク湧いてくると疑いもしない、お気楽さ。

誰にでもできる仕事?
責任の無い、体力仕事?
はい。
今ならロボットやらAIやらに代行されてもおかしくない単純作業?
その通り。

適性とか、自分の能力を証明しなければとか(上司に認めてもらおうとか)、この経験を将来に活かさねばとか、とか、
後の人生の薬や栄養になりそうな成分、
ゼロパーセント。
(害になりそうなプライドという成分も、
ゼロパーセント。)

計画性やら、野心やら、難しいことはなんにもない。ひたすら楽しかったから、やった。楽しかったから、できた。(給与以外という意味で)見返りを求めないし、見返りはない。

でも

振り返ると、あの無邪気さは愛おしい。
アレは何だったのだろう。

なんで、そんなこと今さら思い出したのかって?

はい、この間、シルバー人材センターに登録した!という友人に会った時、晴れ晴れと突き抜けた彼の表情を見た時、
それ、今の自分にできるかなって、ちょっと(実はだいぶ)羨ましくなって

あの頃の働き方、懐かしくなった。
戻って来ないこと、わかってるくせに。

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