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青年

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短編小説6編 『快刀乱麻』 『汽車ごっこ』 『蛙は風になる』 『珍客』 『岩なれども母なり』 『絵具と血』
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2021年3月の記事一覧

回想 & 一区切り

回想 & 一区切り

 はっきり云って、Noteに小説を載せるほど身はすり切れる。
 無料公開の作品に、命は擲てないだろう。てきとうに。てきとうに。そうおもうほど、創る力は腐ってしまう。命の火をかきたてながら、創ることが肝なのに、冷気に命を漬けて、火を葬っている。

 しかし、Noteで試みたことは、現代への道を築くことであった。

 私は4編『快刀乱麻』『汽車ごっこ』『蛙は風になる』『珍客』を載せた。けっこう駄作だと

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珍客 (小説)

珍客 (小説)

「大きく云えば、戦争、災害、小さく云えば、事件、病気、人間生きてりゃ、それなりの理不尽にぶちあたるさ。葉が枯れるように、空が陰るように、血が黒ずむように、風が凪ぐように、乾いた濁った張りつめた静寂に、ぜんぶが呑まれちまうさ。それでそいつはたまらなく苦い味なんだ。なんで苦い味を舐めながら生きにゃならんか、苦悩が始まってしまうんだ。つまり、(語り手は、手を右から左に動かす。)理不尽→苦悩の図式があるの

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蛙は風になる (小説)

蛙は風になる (小説)

 幸福というものはたわいなくっていいものだ
 ――草野心平

 暮れ方に、山の音。
 蛙はうすめをひらき、風にたなびく水田をうつし、
「……おれは風かもしれない。ちょっと、周りを揺すって、それでおしまい……。なあんの意味もない。そうさ、そうさ、おれは風だ。ああ、おれは風なんだ」
 ふわあっと、蛙は大きな口をあけました。緑いろの顔に、青いろの隈。すいみん不足でした。きのう、月にみとれていたのです。蛙

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