小説|十七月の歌 1/6
病めるものに世界は微笑む
レールを外れた十七月、僕は世界が微笑むことを知った。穏やかな陽気に甘い香りが漂い、目をやれば若葉や柔らかい花々、それだけのことで僕の心は大きく揺さぶられた。それと歩調を合わせるように、芸術の中に呼吸できる場所を見つけ、それからというもの、希死念慮を吹き飛ばすような生の肯定を探した。僕はそれを生の芸術と呼んだが、不死を叶える石のように存在しなかった。
両親は山羊と狂犬だったといえば説明しやすい。その関係は年々悪化し、テーブルが折れ、窓ガラスが割れ、