[2022年版]ベクトル解析を楽にする2つの公式,入門から多様体への参考書
後述する"ベクトル解析を楽にする2つの公式"は、学部生当時、将来の担当教官となる先生(ベストセラー数理物理学 本の著者でもある)が、授業中に「えっ知らないの?」と、ベクトル解析の公式を瞬殺で導出しているのを見て、個人的に調べて、習熟しました。
イントロ 先日、記事を書きました。
コチラなんですが、
[2022年版] (物理・工学・情報)線形代数,次にやること,統計学/群論/テンソル/量子論
その記事では、ベクトル解析の紹介を、
しか挙げませんでした。
この記事では、
もう少し補足をします。
ベクトル解析も多くの書籍があります。
わたしは
この安達 本で十分だと思います。安く買えますし。
※ noteなど、多くの記事でこのような書籍を上げる人は少ないでしょう。
訳はありますが、皆さん、少しばかり極端ですよね。
あとで知ったのは
旧版にあたるコチラでも中身は同じです。
でもよかったと思います。
この解析学概論は、物理・工学の方に勧める正真正銘のイイ本です。
このことについて、後日、記事を書きたいと思います。
以前に挙げましたが、副読本として
をおすすめします。
※ 絶版中ですので、類書を思い出しましたら、追記しておきます。
わたしはこれを使いました。この本は、線形代数~ベクトル解析~直交関数と量子力学へ接続できる"関数解析入門"として概念・計算手法の習得に使えるイイ本なんですけど、こちらも本も入手困難ですね。あまり参考にならないですね。
物理学における幾何学的方法(物理学叢書),シュッツ,吉岡書店,1987
といった微分形式を扱っている本なら載っている手法です。
立花隆の特番を見ている時に、この本が立花隆の本棚に並んでいて驚いたことがあります。立花さんは文系の人なので、数理的な専門書に手を出さない印象があったからです。さすが、知の巨人 立花隆さんですね。
ベクトル解析を1周して、使いこなせるようになった際に、
でしっかり学ぶことで、より深い理解に導いてくれるはずです。
しかし、岩堀 本 をやるのは、物理・工学であれば、学部上級生か院生になり、気が向いたらやってみる十分なはずです。
まずは、安達 本 か 解析学概論 で済ませて、浮いたお金で後述する発展的な書籍を買い、学んだ方が益は大きいでしょう。
楽にする2つの公式について
わたしは ベクトル解析に 安達 本 を使ましたが、
計算をズルしています。
ベクトル的な計算だけではなく、一部でテンソル算を使いました。
その方法は、「ベクトル解析と微分形式」 など、諸所で紹介されています。
レヴィ・チヴィタの記号(Wikipedia) と呼ばれる手法です。
※ "エディントンのイプシロン"ともいわれます
使いやすく、わかりやすく、まとめて頂いた方がいます。
Levi-Civita の記号でベクトル解析の初歩を,矢野忠
PDFがDL/開かれます
このPDFではいろいろ書かれていますが、
次の2式が一番 重要で、非常に役に立ちます。
Levi-Civitaの記号の縮約公式
$${ \epsilon_{ijk} \epsilon_{pqk} = \delta_{ip} \delta_{jq} - \delta_{iq} \delta_{jp} }$$
$${ \epsilon_{ijk}}$$や$${ \epsilon_{pqk}}$$はcyclicなため、わたしは次のように覚えています。
$${ \epsilon_{ijk} \epsilon_{ipq} = \delta_{jp} \delta_{kq} - \delta_{jq} \delta_{kp} }$$
左辺は$${i}$$をベースにして、右辺は第一項"同じ番目"、第二項"それを入れ替える" です。
Levi-Civitaの記号を使った外積
$${ (B \times C)_i = \epsilon_{ijk}B_j C_k }$$
これは具体的に書き下せば明らかでしょう。
同じルールにより$${ (rot A)_i =(\nabla\times A)_i =(\vec{\partial} \times A)_i=\epsilon_{ijk}\partial _j A_k }$$ です。
詳しくは、PDFや挙げた本を調べてみてください。
はじめはとっつきにくいかもしれません。
慣れれば、解析学的演算や図形的解釈なしに機械的に計算ができ、ベクトル解析の演算を円滑にすすめることができます。
ベクトル解析の微分形・積分形の公式は、いずれも
ベクトルとして意味的に成立する
わかると当たり前な式
$${div\thinspace (grad\thinspace f)=0}$$
$${rot \thinspace(div \vec{A})=0}$$
積分形はすべてコチラですよね。
演算の結果として成立する
なんじゃこりゃという式
$${div(\vec{A\times}\vec{B})=\vec{B}\cdot rot\vec{A}-\vec{A}\cdot rot\vec{B}}$$
$${rot(\vec{A}\times\vec{B})=A\thinspace div\vec{B}-B\thinspace div\vec{A}+(\vec{B}\cdot grad)\vec{A}-(\vec{A}\cdot grad)\vec{B}}$$
に分類できます。これらの両方で"Levi-Civitaの記号"での手法を使えます。
ぜひ、習熟してみてください。
このようなテンソルの扱いをしていると、ベクトルやテンソルには広大な背景があるのではと、漠然と思えてきます。
そうなんです、
さらに発展したトピックへ繋がります。
その入り口として、
「要点講義 ベクトル解析と微分形式,井田大輔,東洋書店,2008」 が、
深入りせず、使うところだけが載っており、
もっとも参考になります。
しかし、あいにくの絶版。
正攻法を取るしかありません。
電磁場とベクトル解析(現代数学への入門),深谷賢治,2004
深谷先生は数学者なんですが、物理に関連した本も書かれています。
親しみやすいのは
また、
といった微分幾何学や微分位相幾何学、物理向けには
要するに多様体なんですが、やはり
がわかりやすいです。
どんどん数学の世界が広がっていきますよね。
この辺りって面白いんです。
ただし、数学に適した物理に追いつかない可能性があります。
物理の方は、物理への応用が豊富に取り扱われている
Geometric Algebra for Physicists,Chris Doran & Anthony Lasenby,Cambridge University Press,2007
Geometry and physics,Jürgen Jost,2009
「ポストモダン解析学,丸善出版,2012」のユルゲン・ヨストさんです!
もしくは、
Gravitation,Misner & Thorne & Wheeler & Kaiser,2e,2017
略してMTW。電話帳なんて言わない。"電話帳"なる専門書は各々の分野で存在します。
学部1~2年生でこの記事にたどり着いた方は、運良いかもしれません。一般相対論は、学部で開講されない大学があります。このMTWはそれなりに時間がかかります。わたしは院生時代に取り組みましたがすべてを読み切ることができませんでした。ベクトル解析とテンソルを学べば、比較的スムーズに読み始められます。原書を購入し、2年次からゆっくりと翻訳や他書を参考にしながら読めば、3~4年次には読み終えるでしょう。そのときには、圧倒的な差が生まれています。
まででとどめた方がいいのかもしれません。
後半がまた駆け足になってしまった。
そのうち、追加の記事を書きます。
反省:
Katex中でフォントを変更する方法が分からない。