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国を、民を守るために、武田信玄は独裁者を目指す 【武田信玄、辞世の句が教えてくれること(大罪人の娘・前編、第参章を終えて)】
武田信玄、辞世の句。
「大ていは 地に任せて 肌骨好し 紅粉を塗らず 自ら風流」
これは、以下のような意味である。
「大抵は世相[世の中の状況]に合わせて生きていくしかないが……
だからといって人目を気にして上辺だけ取り繕う[表面だけ良く見せる]ような生き方をしてはならない。
自分にとって本当の正しい生き方を、『自ら』動いて探し続けよ」
と。
◇
「大抵は世の中の状況に合わせて生きていくしかないが……」
まずは、この前半部分。
正直。
あの戦国最強の大名とも謳われた、武田信玄の言葉とは思えない台詞だろう。
逆に言うと……
あの信玄でさえ、世の中の状況に合わせて生きていくしかなかったということになる。
そうならば。
信玄が本当にやりたいと思いながらも……
世の中の状況のせいで『十分にやれなかった』こととは、何だったのだろうか?
そして。
本当はやりたくなかったが……
世の中の状況に合わせて『やらざるを得なかった』こととは、何だったのだろうか?
◇
次に、この後半部分。
「だからといって人目を気にして表面だけ良く見せるような生き方をしてはならない。
自分にとって本当の正しい生き方を、『自ら』動いて探し続けよ」
辞世の句とは、生涯の最期において語る言葉である。
表面だけ良く見せるような生き方を否定しつつも……
本当の正しい生き方については何の答えも提示していない。
要するに。
自ら動いて探し続ける大切さまでは分かったが、本当に正しい生き方の答えまでは見付けられなかったことになる。
あの信玄でさえ、辿り着けなかったのだ。
真摯に学ぶことを怠り、自分の頭で筋道を立てて考えることを怠り、誰かに付いていけばいいと『楽』をした人々が、本当の正しい生き方の答えに辿り着くことも、そのヒントを得ることも絶対にないだろう。
これは生きているというより、生かされている……
言い方が悪いが『飼われている』に近いのかもしれない。
幕間 武田信玄 終わり
PS
本当はこのまま第肆章・武器商人の都、京都炎上の章に移りたいのですが、章のイラスト作成にあと10〜20日かかるため……
少々脱線しますが、その間に【独裁者・武田信玄】を投稿したいと思っています。
これは【大罪人の娘】を『補完』するサイドストーリー的な位置付けで執筆したものです。
拝読頂けますと幸いです。
【第壱章 独裁者への階段】 純粋に国を憂う思いが、粛清の嵐を巻き起こす
【第弐章 川中島合戦】 甲斐の虎と越後の龍、激突す
【第参章 戦争の黒幕】 京の都が、二人の英雄を不倶戴天の敵と成す
【第四章 織田信長の愛娘】 清廉潔白な人々が、武器商人への憎悪を燃やす
いずもカリーシ