子どもの頃からよく転んだ。いつも膝を擦りむいていた。成人してからもしょっちゅう転ぶので常に擦り傷や打撲傷を負っていた。ずうっとそうだった。

過去10年間の大!転倒遍歴

 10年前に雪が降った翌朝、凍りついた横断歩道の真ん中で、すってーんと尻もちをついたことがある。数日間、正しい姿勢でイスに座れなかった。
 6~7年前に夜道でスロージョギングをしていて道を渡るとき、道路の中央で転んで膝をしたたかに打った。痛みで起き上がれなかった。交通量もそこそこある道路だったので危険なのはわかっていたが、動けなかった。異常に気づいた通行人数人が、かつぐようにして路肩まで運んでくれたのは幸運だったとしか言いようがない。車に轢かれることはもちろん、これみよがしのクラクションを鳴らされずに済んだ。
 5~6年前、ゲラが詰まったバッグを持って石につまづいた。ゲラを守ろうと咄嗟に手をかばい、身体が棒倒しのようにばたっと前方に倒れた。肋骨が折れ、寝返りを打つにも数週間痛かった。
 3年前には常駐していた出版社で荷物を持ったままつまづいて転倒し、冷水機の角に顔をぶつけて目の横を3cmばかり切った。このときは大量に出血した。コロナ禍が始まったばかりで病院に行くのも怖く、やっと眼科と脳外科に足を運んだのは怪我をして1か月近く経ってからだった。脳外科では念のためにMRIも撮った。異常はなかったが、さすがにまずいと思った。
 転ぶのはしょっちゅうだが、1~2年の一度大きい怪我をしている勘定になる。これでは、そのうち大怪我をする。老後も心配だ。
 ウォーキング等しているので、運動量が足りないということではない。可動域の問題であることに、やっと気づいたのだった。

柔軟な身体目指してオンラインストレッチ

 わたしは昔から足首が硬いと言われてきた。転びやすいのもそのためだと思っていた。だから、足首回しは毎日やっていた。
 それでもこんなに転んでいるのだ。これから年をとっていくのにこれではまずい。目の横を切った時、はっきりと悟った。そこで、遅まきながらストレッチをすることにした。
 当時、Twitterでバズっていた「なぁさん」オンラインストレッチのサブスクに申し込んだ。毎週60分のアーカイブを1か月6000円で見放題。高いけれど、ポーズや動きを覚えて、自力でできるようになったらやめよう。数か月のことだし、と思って入った。
 サブスクによって、毎週日曜日の午前中にストレッチをする習慣がついた。だがなかなか覚えられない。自分の身体が硬すぎて、トレーナーと同じポーズがとれないのだ。そのため「身体で覚える」ことができない。
 自分は他の人と比べて、ほんとうに身体が硬いのだと今さらながらわかった。何せ中学生のとき、身体・運動能力測定の「立位体前屈」でマイナス30cmほどを記録したのだ。両足を伸ばして身体を前に曲げると、手が床につくどころか膝くらいまでしか届かない。たぶん、学校でいちばん身体が硬い生徒だっただろう。
 十代でその状態なのだから、当然いまは、もっと硬くなっているわけである。かっちかちといっていいくらいだろう。
 それでもせっかく入ったサブスクだからと、オンラインストレッチを毎週唸りながらやっていたら、気づくと1年経っていた。
 ここで、「あと3か月で動きを覚えてやめよう」と決めた。それから3か月間、図を描いたりして必死に身体の動かし方を覚えようと努め、予定どおりサブスクをやめたのが昨年8月のことだった。

毎日、筋トレも平行してみた

 退会してからがほんとうの勝負である。毎日少しずつやろうと決めて、1日20分間、自分で決めたルーティーンをこなした。
 昔からそんな状態だったけれど、ストレッチで足首だけではなく、脚全体を伸ばしたり曲げたりしているうちに、ほんの少し(数センチほど)前屈ポーズで手が下に伸びるようになった。
 進歩が見えると嬉しくて継続できるのは、学習に限ったことではない。「少しだけどストレッチをしたら柔らかくなった。もう少し身体の可動域も広がるはず」と、他の手段を探し始めたとき「タキミカ体操」を知った。
 高齢者向けストレッチと筋トレ本の著者である瀧島未香氏、通称タキミカは世界最高齢のフィジカルトレーナー。
 本を買ってみたら、動画にアクセスできるURLが載っていた。というわけで動画を見ながらまた腕や脚をあっちへ伸ばしたりこっちへ曲げたり。93歳のタキミカ氏がしなやかに身体を動かしているさまは、とても美しい。90代でここまでできるなら、自分ももうちょっとがんばらないと! そう思いながら、「なぁさん+タキミカ体操」と名付けて毎日45分間。それを続けて1年経った。

転ばなくなってきた!

 するとどうだろう。確かにこの1年ほど、つまづくことはあっても「転倒」はしていない。転びそうになった途端にぱっと足首や脚が動き、ちゃんと着地できるのだ。ストレッチと筋トレの効果は、自分の身体が証明しているではないか。
 毎日45分というのは、けっこうたいへんである。仕事に追われている日はパスしたくなるが、そういうときでも休憩時に10分ずつ入れたりして、休みなく継続してきた。
 成果はというと、上記の「転ばなくなってきた」というだけである。柔軟性はまだまだ足りない。前屈して手が床につくようになるまで、つまり人並みの柔軟性をもった身体になりたい。
 現時点で前屈してみると、床まで指先が20cmくらいだ。まだまだまだまだ、くらいである。

今後の目標は…… 

 待てよ、中学生時代の前屈では、指が届いたのは床上30cm程度だった。それから何十年と経った昨年の時点では、昔よりも身体は硬くなっていたはずだ。前屈して測ったら30cmでは済まなかったのではないか。
 それを考えると、1年で10cm以上も手を伸ばせるだけ、身体が柔らかくなったということか。
 このままのペースでいけば2年後には指先が床につくはず。それまでは「毎日」を崩さすがんばるかー。

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