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誤訳のパターン番外編~明らかな原文ミスを拾いそこねる

誤訳のパターンを挙げていくのも今日が最後だ。番外編として、「明らかな原文ミスを拾いそこねる」を述べておこう。

「これは違うんじゃない?」

 産業翻訳でも出版翻訳でも、原文が間違っている可能性は常につきまとう。読んでいれば「原文ミスだろう」とすぐにわかることも少なくない。次の例文を見てみよう。

It is planted with more than 3,000 azaleas of over 100 species, including rare Fuji Tsutsuji and Hinanaguruma, and black Karafune types.
フジツツジ、ヒナナグルマ、クロツツジと呼ばれるカラフネ等、100種、3,000株以上のつつじが植栽されている。

 フジツツジ、ヒナナグルマ、クロツツジ(カラフネ)とツツジの種類が挙げられているので、Googe画像検索をしてみる。フジツツジとクロツツジはすぐに出てくるが、「ヒナナグルマ」という語はない。さあ困った。
 ここで、「ツツジ」「グルマ」で検索してみると「ユキグルマ」「ハナグルマ」の2つがトップに出てくる。

原文をよく見てスペルミスを見抜く

 もう一度原文のローマ字を見てみよう。Hinanagurumaとある。どうもあやしい。Hinanaではなく、Hanaのミススペルなのではないかと思える。
 そこで「ハナグルマ」で検索すると、13,000件ヒットする。おそらくこれで決まりだろう。
 こういうときは、訳は「ハナグルマ」としておき、「原文のスペルミスではないか」とコメントを入れて納品する。
 原文のミスは「必ず見抜かねばならない」ということではない。上の例でも、画像検索をせずに「ヒナナグルマ」と納品しても、クレームがつくことはないし、もしかしたら客先も気づかないままかもしれない。
 だが、誠実に、ロジックを追って翻訳をし、必要な箇所で調べ物をしている翻訳者であれば「ここはおかしい」とわかるはず。
 そうしたら上記のように対応するべきである。出版であろうと産業であろうと、こういう対応をしてくれる翻訳者は発注元が離さないはずだから。

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