セルフ校正のポイント――(2) 経験値を積むことと「見る」こと
(1)ではプロセスについて書いた。文字、ファクト、内容の整合性と、工程を3つに分けて見ていくということである。↓ の投稿である。
次は「経験」について書いてみる。どんな人がどんな仕事をやっても、10年間続ければそれなりにはできるようになる。経験値が蓄積されるのがその理由だ。
では校正の経験値とは何か。「これまでの間違いを集めたデータベース」がそれになるだろう。
「衛生」と「衛星」、「窺う」と「伺う」といった間違いやすい例が脳内データベースに溜まってくると、そうした語を見た瞬間に注意が働くようになる。
自分の脳内にあるデータを一度Excelなどにアウトプットしてみると、記憶が整理され、定着するのでさらによい。驚くほどの効果がある。
だが、正しいプロセスを踏んで経験値を上げるだけでは限界が来る。ある一点を超えると、それ以上ミスが減らなくなってしまう。
そこで視点を変えて、「見る」環境を考える。
まずは作業環境だ。PC画面ではどうしても見落としが残りがちなので、紙に印刷して目で読むのがよい。紙は画面よりも解像度も高いし、視角も広くなるためミスを拾いやすい。原稿は必ず印刷して紙で見る、と決めておくのがよい。
さらに、紙の文字を読んで間違いを発見するためには、明るいデスクライトや書見台があるとなおよい。見落としが減って効率が向上するし、目や首も楽だ。
最後に、自然光の入る部屋でパラパラとゲラをめくっていくという人もいる。浮き出るようにミスが発見できるというのだ。わたしは日光が苦手なのでこの手は使えないが、費用もかからず道具も要らないので、試してみるのもよいだろう。
さて、わたしはアナログ人間なので、どうしても紙のほうが作業が楽であり、そちらの話が多くなる。とはいえ、紙にも文字列を検索できないという短所がある。
用語や表現を統一するときは、PCで検索していくのが簡単でミスを落とさない。また、画数の多い漢字や、「ブ」と「プ」などは紙上では見分けづらい。ゲラで見るならばルーペを使ったり、PC画面で文字拡大をするなど、自分のやりやすい方法を決めておくとよい。
このように、校正のポイントのひとつは、自分の目と機械の目、両方の長所を使い分けることである。
「自分の目」といえば、とうぜん目のケアは最重要事項になる。校正は目を酷使する作業だから、眼球運動や目の周りの筋肉をほぐすケアを覚えておくとよい。目そのもののためにもよいし、その場限りとはいえ視力もアップする。
こめかみを指先で数回ぐいっと押すだけでも、一時的によく見えるようになる。それ以前に、視力や目の状態に合ったメガネやコンタクトレンズを使うことは、もちろん大前提だ。
また、50代になったら健康診断で眼底検査を受けて緑内障をチェックするなど、眼病の早期発見にも気を使う。ともかく、あらゆる面から「目」をケアしていくのが最重要かもしれない。