お酢ってなんだろう?~お酢の働き~
料理にお酢がなかったとしたら・・・レパートリーが少ないだろうな。
「酢」にはいろいろな種類があります。一般的な酢以外にもポン酢やかぼす酢等の調味酢、健康食品として販売されているドリンク酢等もよく見かけます。
普段、料理別にお酢の種類を常備している方はどのくらいいらっしゃるのでしょうか?
私は、こくのある米酢とフルーティーな果実酢の二種類を置いています。
今回は、酢の種類や活用方法、健康効果等についてお伝えしていきます。
そもそも酢ってなんだろう、どんな種類があるの?
料理に使う酢は「食酢」といいます。酢は簡単に言うと、原材料をアルコール発酵させた「酒」からできた「酢酸」を主原料とした発酵調味料のことです。酢の原材料や製造方法によって種類がたくさんありますので、農林水産省が定めている「食酢品質表示基準JAS(日本農林規格)」の基準を見てみました。
しかし、いろいろと調べたところ少しややこしいので、私なりに整理してみました。
大きく分類すると(JAS規格参照)
1醸造酢:穀類、果実、砂糖類等を原材料として酢酸発酵させた液体調味料のこと。
①穀物酢:1ℓ中に40g以上の穀物を使ったもの。特に、米を1ℓ中に40g以上使用しているものを米酢といいます。
ところで、黒酢と他の酢の違いは何でしょうか?
穀物酢のうち、米酢は精米を主な原料としていますが、黒酢は精米度の低い米や玄米、大麦を原料として長期間熟成させたものです。深い甘みとこくがあり飲用に好まれています。
②果実酢:1ℓ中に300g以上の果実を使用しているもの。特にりんご果汁を300g以上使っているものをりんご酢、ぶどう果汁を300g以上使用しているものをぶどう酢(ワイン酢)と呼びます。
2合成酢:醸造酢に科学的につくった酢酸を合成したもののこと。
醸造酢の使用割合が60%以上あり、化学酢酸と砂糖類や調味料を加えてつくったもの。
では、皆さんが普段使っている食酢は何でしょうか?。さっそくキッチンに行って食酢の表示を確認してみてください。
瓶の後ろの四角い枠の中に表示されています。我が家の酢は、名称が米酢、原材料名は米でした。こんな感じです。
私の場合は、他にりんご酢を用意しています。料理によって、酢を出しで割る場合に米酢を使い、直接酢を使う場合にはまろやかなりんご酢を使う、といった具合に使い分けをしています。
酢の健康効果
食酢の主成分は酢酸で、一般的には3~5%含まれています。他には発酵過程でできるアミノ酸やクエン酸が含まれています。これらが健康に役立つとされています。
1成分別にみると
①酢酸:脂質代謝と糖代謝を促進し、脂肪の蓄積を抑える効果があります。
②アミノ酸:体内の脂肪の燃焼を促します。
③クエン酸:体内の脂肪をエネルギーに変えて消費してくれます。
*酢はこれら三種類がそろっているため、バランスの良い食事に酢を加えることで、内臓脂肪を減らし、肥満症、脂質異常症、糖尿病、高血圧症等の慢性疾患の改善に役立ちます。
2酢そのものの効果を具体的にみると
①食欲増進作用:さわやかな酸味や香りが味覚や臭覚を刺激し、唾液や胃液の分泌を促して食欲を増進させてくれます。
②殺菌効果:食物のpHを下げる(酸性にする)ので食品の腐敗を遅らせてくれます。結果、食中毒の防止にも役立ちます。
③減塩効果:食塩を多量に使う代わりに酢を加えることで、薄味による味気無さをカバーしてくれます。従って減塩生活が継続でき、高血圧抑制効果につながります。
④カルシウム摂取の手助け:小魚を酢につけたり、酢で煮ることで魚の骨が軟化します。骨ごとでも食べやすくなりカルシウムの摂取が期待できます。
⑤血中脂肪・内臓脂肪の減少:酢には、脂肪の分解を促し脂肪の合成や蓄積を抑える働きがあります。血中脂肪や内臓脂肪の減少は慢性疾患の改善に役立ちます。
*ただし、酢は大量にとれば効果が上がる、というものではありません。普段の食事に毎日大さじ1~2杯が適量です。
いろいろな酢の活用
①穀物酢
日本では代表的な酢です。さわやかでさっぱりした味のため、消費量が一番多くなっています。原料は米やコーン、小麦等の穀物です。食品の味を整えたり脂っこさを和らげたり、魚の臭みを取り除いたりします。和・洋・華どの料理にも使えます。
②米酢
日本古来からつくられてきた酢です。主原料の米に含まれるたんぱく質が分解し、味の良いアミノ酸が多く出ています。和・洋・華全てに合いますが、甘みがあって和食の調味料には欠かせないものとなっています。
③純米酢
米のみを原料に使った酢です。まろやかな香りと深みのあるこくが料理の味を引き立ててくれます。日本料理や寿司に多く使われています。
厳選した玄米だけを原料として使ったものは、純玄米酢と呼ばれアミノ酸や有機酸がバランスよく含まれているため、健康ドリンクとしても飲用されています。
④粕酢
あまり見かけませんが、江戸時代末期からつくられている日本独自の酢です。日本酒を造るときにできる酒粕を原材料としたものです。酒粕に含まれる米麹、酵母などの分解物質がうま味の成分となっていて、こくと香りが優れています。長期間熟成して飴色の色合いが日本料理や寿司に向いています。
⑤りんご酢
熟したりんごの果汁が主な原料で、りんご独特の風味がさわやかです。ドレッシング、マリネ等に使うと料理の味がさわやかになります。
また、はちみつを加え水で割ると、バーモントドリンクとして美味しくいただけます。
⑥バルサミコ酢
イタリアの伝統的な酢で、ブドウ果汁とワインを原料とし木製の樽で熟成したものです。香が高く甘みがあります。煮詰めて甘いソースとして肉料理・魚料理に使います。さらにオリーブオイルと混ぜてドレッシングや洋風煮込み料理の仕上げに使います。
⑦ワインビネガー(白)
ぶどう酢と呼ばれ、主原料はぶどう果汁です。ぶどう特有の香りがあり、酢酸の他酒石酸を含み強い酸味と渋みがあります。白はぶどうの皮を除いて造ったもので、赤よりは口当たりが優しいようです。
⑧ワインビネガー(赤)
ぶどう果実の皮の色が生かされた赤紫色をしたぶどう酢です。渋みがあり濃い味がします。ドレッシングやピクルスに合います。酸度が強いので煮詰めて酸をとばし、うま味を活かしてソースにします。ブラウンシチュー、カレー等火を止める前に少量加えて味を整えると、まろやかな料理になります。
酢による食材の色と魚の骨の変化を調理科学で見る
①食材の色の変化
酢は食材の持つ色を鮮やかに変化させる働きがあります。生姜やみょうがなどのさわやかなピンク色は、色素のアントシアンが酢で酸性になることで発色したものです。
カリフラワーを茹でる時に少量酢を入れるのは、フラボノイド色素が酸性化して白くなるからです。
ゴボウやレンコンは、酢を加えることでpHを下げ酵素の働きを弱め褐変(赤黒くなる)を防いでくれます。
②魚の骨の軟化を補助
魚のマリネ(油酢漬け)や南蛮漬け(揚げ魚の醤油酢漬け)、酢煮魚等で魚の小骨がやわらかく食べやすくなるのは、酢に魚の骨のカルシウムを溶かす働きがあるからです。
また、昆布に酢を加えて煮るとやわらかくなるのも同様の原理です。
酢の調理 ~一口メモ~
酢は、酸味で塩味を丸くし、油のしつこさを和らげてくれます。また、砂糖の甘みも品の良い甘さに変えてくれる魔法の調味料です。
今回は、よく耳にする調理用語、二杯酢と三杯酢について、基本を改変した私好みの割合で、その違いをお伝えします。
二杯酢と三杯酢
合わせ酢といいます。
①二杯酢は、酢としょうゆの二種類を出汁で割ってつくります。魚介類の合わせ酢に向いています。
材料(重量g)に対して、酢7%、しょうゆ6%、出汁6%程度。
例えば材料300gに対して、酢21g(大さじ11/3)、しょう油18g(大さじ1)、出汁18g(大さじ1強)となります。
②三杯酢は、酢と塩分(しょうゆ又は塩)、甘み(砂糖やみりん)の三種類を出汁で割ってつくります。甘みがまろやかで大抵の酢の物に利用できます。
材料(重量g)に対して酢7%、しょうゆ1.5%、塩0.7%、砂糖は好みで2~3%、出汁6%程度。
例えば材料300gに対して、酢21g(大さじ11/3)、しょうゆ5g(小さじ1弱)、塩2.1g、砂糖6~9g(小さじ2~大さじ1)、出汁18g(大さじ1強)。
*割合(%)とはややこしいな、とお思いの方。レシピでの大さじ、小さじの分量表現とは別に、割合(%)を知っておくことで、料理の人数が変わっても、いつでも同じ味に調味することができます。
ぜひ、お試しください。
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