栄養食事療法№3 便秘症 編
便秘ぎみですっきりしない、とお悩みの方。
自粛生活のストレスと運動不足で、便秘の人が増えているようです。このままでは、痔が悪化したり大腸がんになったりするのではないか、と心配になりますよね。
そうなんです!たかが便秘と甘くみてはいけません。
今回は、便秘の時に自分でできる食事療法のポイントをお伝えします。便秘予防にもなりますので、ぜひお試しください。
★便秘には個人差があって、どの程度が「便秘症」なのか、特に決まりがありません。一般的には、数日間排便がなく腹痛や腹部膨満感があって、体調が優れない場合をいいます。
★便秘を引き起こす病気があると疑われる場合は受診をしますが、基礎疾患に糖尿病や腎臓病、肝臓病等がある場合は、疾患の治療を優先しつつ、便秘改善を行います。
特に、病気がない場合でも、まず便秘の原因をさぐり、食生活を見直してみましょう。
〇便秘は「器質性」と「機能性」に分けられる
1器質性便秘
腸閉塞や腸の癒着、腸のがん等の疾患があって、腸が狭くなることがあります。すると、便の通りに障害が起こって重篤な便秘が発症します。
このような原因疾患が疑われる場合は、受診をして医師の指示のもと適切な治療を受けなければなりません。
2機能性便秘
普段、便秘と言われるものには「機能性便秘」が圧倒的に多くみられます。
便秘対策には、野菜の食物繊維をたくさん食べれば・・・と考えがちですが、機能性便秘には「弛緩性」と「けいれん性」と「直腸型」の3つのタイプがあって、食事療法のポイントがそれぞれ異なります。
自分がどのタイプかを見極めたうえで、食事療法を行うことが大切です。
〇弛緩性便秘の食事療法のポイント
腸が動くことを蠕動運動といいます。
腸の周りの筋肉が緩んでしまったり、便意を抑える生活習慣がある人は、蠕動運動が低下して便の押出が悪くなります。その結果、便が大腸に長時間とどまり、便中の水分が過度に吸収されて便が硬くなってしまうのです。
特に女性や高齢者に多いタイプですが、最近では社会的ストレスや環境の変化で男性にも多くみられます。
また、入院生活では、環境の変化とストレスで性別・年齢別にかかわらず、便秘を訴える方がとても多いです。
【食事療法のポイント】
① 規則正しい食事をする
極端なダイエットで食事を減らすと、そもそも便量にならないため便秘になりがちです。当然のことながら、毎日、可能な限り決まった時間に三食をバランス良く食べることが基本です。
② 食物繊維を十分にとる
食物繊維は、1日当たり25g以上を目標とします。一般成人の標準的な食事で約15~20gですから、食物繊維を意識して食べないと不足してしまいます。
不溶性食物繊維は、腸内で吸収されにくく便量を増やし、腸管運動を活発にします。水溶性食物繊維は、適度に水分を抱え込み、便の水分が必要以上に腸から奪われるのを防いでくれる作用があります。
なお、不溶性食物繊維は、ごぼうや豆類、野菜やきのこ類、納豆等に、水溶性食物繊維はひじきやわかめ、コンニャク、バナナ等の果物に含まれます。
食品だけで食物繊維が十分に摂取できない場合は、食物繊維含有量の多いシリアル等の活用も有効ですし、食物繊維入り栄養補助食品を使用するのも一つの手です。
ただ、腸内にガスが発生し、腹部に膨満感が強いときは不快であるため、食物繊維は控えたほうが良いと考えます。
食物繊維については、以前に投稿しましたので、よろしかったらこちらもご覧ください。⇓
③ 水分を十分にとる
一般成人では、水分1日当たり2000~2500mlくらいを目標とします。食事中の水分量が1000~1200mlありますので、飲水として1000~1300mlを意識しましょう。
冷水や起きてすぐ飲む水は、胃や腸の反応を刺激して蠕動運動を始めてくれるのでおすすめです。
冷たい牛乳も有効ですが、乳脂肪や乳糖が合わない方は注意してください。
④ 脂質は適度に必要
適度の脂質は腸管を刺激し、便の滑りを良くしてくれます。急激なダイエットで極端に脂質を制限すると、便秘の原因を作ってしまいますので注意してください。
⑤ 香辛料の適正な活用
わさび、辛し、生姜等の香辛料を適度にとりましょう。酸味の強い果物、酢の物、梅干し等も腸管を刺激して蠕動運動を促しますので有効です。
⑥ 腸内環境を適正に
腸内環境に良い食品を意識してとります。
ビフィズス菌、乳酸菌を含んだ飲料やビフィズス菌増殖の因子となるラクトスクロール、オリゴ糖等を取ることも良いです。
なお、ラクトスクロースやオリゴ渡は小腸で消化できない糖質であるため、過剰にとると、一時的でも腹部膨満感が強くなったり、便がゆるくなって不快感があるので、使用する分量に注意が必要です。
成分表示をご覧になる方は、一般的には体重1㎏当たり0.15g程度にしておきましょう。
〇けいれん性便秘の食事療法のポイント
腸管の運動をつかさどる自律神経が乱れると、腸自体の収縮が強くなって便が出にくくなります。例えれば、ウサギの糞のようにコロコロとした硬い便が出てきます。
また、便秘と下痢を繰り返して自律神経の失調を伴うことがあり、こうなると、過敏性腸症候群に分類されます。ストレスの解消が必須です。
けいれん性便秘では、腸管への刺激を避けるような食事上の注意が重要で、この点が弛緩性便秘とは大きく異なります。
【食事療法のポイント】
① 食物繊維のとり方
腸管を刺激する不溶性食物繊維を避け、水溶性食物繊維やレジスタントスターチをとります。レジスタントスターチ(resistant starch)とは、人の小腸まででは消化されずに、大腸まで届くでんぷんの事です。例えば、米などに多く含まれ小腸の消化酵素に抵抗性を持つでんぷんなので、適量なら腸に優しいのです。
② 食品の刺激物を控える
酸味、香辛料、アルコール、カフェイン、肉エキスなどの科学的刺激、暴飲暴食、濃い味付けの料理などの物理的刺激は避けます。
〇直腸型便秘の食事療法のポイント
便は正常に移送されますが、何らかの原因で、排便の反射が弱くなって便意をもよおさず、排便できない状況にあります。直腸にとどまった状態で便秘が起こります。
排便を我慢したり、浣腸の乱用が原因となる場合があると知られています。
直腸型便秘は、原因をとり除き、適切な排便習慣を身に着けるようにすることが大切です。
なお、直腸に便が滞っている時や腸管が狭くなっている時は、高食物繊維の食事は禁忌となります。
〇生活面の改善にも心がける
・ストレスを解消する工夫等生活面の改善が大切です。
・糖尿病など全身的な疾患による便秘では、腸運動の低下が起こりやすく、腸内容物の停滞がみられるので、弛緩性便秘の食事療法に準じます。
・薬剤による便秘として、抗菌薬、モルヒネなどの麻薬製剤による副作用としての便秘も少なくありません。
基礎疾患との関係もありますので、必ず主治医に相談しましょう。
〇便秘で思うこと
排便回数にあまりこだわらないようにします。
まず腹部の痛みや不快感を少しづつ取り除くことが先です。
便秘は、短期間で改善することは少ないので、食事療法を含めた生活改善を継続していきましょう。
また、便秘解消のために下剤を安易に頼る傾向があります。下剤の習慣化によって便秘が繰り返されますので、頼りすぎないようにしましょう。
この機会に、排便の習慣化や規則正しい食生活、便秘のタイプに応じた食物繊維の取り方を実践して、快適な腸生活を送ってほしいと思います。
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