いなくなくならなくならないで/向坂くじら
向坂くじらさんの長編小説
「いなくなくならなくならないで」を拝読しました📖´-
(2024,9,9 読了)
芥川賞候補作になった作品です。
向坂くじらさんは気になっていた文筆家でエッセイを拝読したくて一冊積読しているのですが、初めて執筆された小説が芥川賞候補作に選ばれていたので先にこちらから拝読してみました。
未だにタイトルをきちんと言えた試しがありません。でも、読了後にこのタイトルが秀逸!となります。
亡くなったと思われていた友人が4年半ぶりに目の前に現れ、主人公の一人暮らしの家に転がり込み更には就職を機に実家へ戻る主人公と共に実家にも住み着いてしまいます。
主人公にとっては本当に大切な友人だったので、思わぬ再会に始めは喜ぶのですが……
向坂さんの文章を拝読するのは今回が初めてですが、力強さを感じる方だなと思いました。言葉がずんずんと私の内に入ってきて奥底にあった澱(よど)みのようなものをグリっとえぐり出されたような気分になりました。
かといって最近の作品に多く見られる八つ当たりされている感じではありません。
主人公と共に自分の内にある澱みを表面化していく感じだったので突き放されたり、孤独になったりすることもありませんでした。
私の澱み。
過去に本気でいなくなって欲しいと思った人がいます。それまではとても大切で守らなきゃいけないと思えた存在だったのに。
だけどある時期から急に存在が疎ましく思えて随分酷いことをしました。
今考えるとなぜ自分がそんな風に思い、酷いことをしてしまったのかはわかりませんが、相手の心には未だに傷として残っていることでしょう。
切っても切れない縁で今は仲良くできているけれど、お互いに心の奥底には何となくわだかまりのようなものがあるように思います。
なんでしょうね……
”可愛さ余って憎さ百倍”などという単純なことではないんです。
未だに当時の自分を理解できてはいませんが、傷つけてしまった相手も哀しかったでしょうし、私も哀しかった。
複雑なんです、感情が。
だからこのタイトルが秀逸。
向坂さんはこういう複雑な感情を言葉に、物語にできるからすごいな……
本作を拝読したお陰で私も蓋をしてしまっていた心の奥底にある澱みをすくい上げ、向き合う機会ができました。
積読しているエッセイもそろそろ拝読しよう。
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