食堂かたつむり/小川糸
母棚の中から、小川糸さんの小説
「食堂かたつむり」を拝読📖しました。
(2022,3,17 読了)
こちらは先に映画を視聴していて、良い作品だと思いつつ少し引っかかるところがあったので原作にはなかなか手を出せずにいたのですが、今回読友さんにオススメした手前自分も拝読しておこうと思い意を決して手に取りました。
ある日突然同棲していた恋人にほとんどのものを持ち逃げされ、唯一残された代々受け継がれてきたぬか床だけを持って10年振りに故郷へ戻ることにした主人公の物語。
故郷で再び生きることを決心した主人公は、実家の横にある物置小屋を改築し、決まったメニューのない一日ひと組のお客様をもてなす食堂を始めます。
本書は小川糸さんのデビュー作。
レビューなどを拝見してみると、かなり賛否分かれる作品でした。
確かにリアリティに欠ける部分も多く、ツッコミどころも満載のようには感じます。
でも、お料理やお料理に対する主人公と祖母の姿勢はとても素敵で。
飲食業に携わるものとして、こんな風に自分もお料理を提供できる人になりたいと思いました。
唯一、映画を視聴した時に引っかかって原作になかなか手を出せずにいる原因となった箇所は、主人公の母が飼っていた豚さんの最期。
小川糸さんは、ペットも家畜も植物も人間も、命あるものはみな平等に尊いものということを伝えたいのかな。
ただ、ここの部分だけは映画と同様原作でもやはり引っかかってしまいました。
ペットという言葉自体あまり好きではないけれど。
家族として迎えたわんズのことは、できる限りの手を尽くして犬生を全うさせてあげるのが私の使命だと考えています。
もし、自分がわんズより先に死んでしまうような自体が起こったとしてもいいように、先にわんズが路頭に迷わないように手配をしておくべきだとも。
逆にとても共感できたのは主人公と母の確執。
自由奔放な母と、その母に反発する娘。
私の場合は真逆で、母はいくつになっても少女のように純粋な人。
娘の私から見ても可愛らしくて、眩しいくらい。
10代後半になった私は、そんな母に現実味がないと感じてしまい、人間の闇の中に現実を探すかのように母の元から離れました。
母のことを嫌いになったことはないですが、闇こそ現実と思い込んでいた私は闇を知らないで楽しく生きている母に嫉妬していたのかもしれません。
現実の中で自分だけ苦労しているだなんてただの思い上がりで、母は母なりにたくさん苦労して表に出さないようにしていただけなのに。
再び同居することになって4年。
汚れのない純粋な心を持った母に対する嫉妬心は、未だ私の中にあります。
でも、薄汚れてしまった自分に対する劣等感みたいなものはもうほとんどないので、母を素直に受け容れているとは思います。
私の勝手な推測ですが、小川糸さんもお母様との確執を乗り越え、人間の光と闇もたくさん見てこられたのではないでしょうか。
だからこそ、温かい物語の中に突如エグ味のあるものを注いでしまうのかなぁなんて。
もっと作品を手に取り、小川糸さんの人となりに触れてみたいものです。
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