ウィークエンドシトロンな週末
ウィークエンドシトロンは、「週末に大切な人と食べる」という意味がある、レモンの風味がさわやかなケーキである。
『真夜中のパン屋さん』っていうだいすきな本の中にウィークエンドシトロンがでてくる話(確か4巻)があって、それではじめてその存在を知った。
本の中では、パウンド型で焼いたデニッシュパンを凍らせてから、熱々のレモンソースをじゅわっとかけて食べるウィークエンドシトロン風パンを夏の屋台で売るんだけど、
溶けるバターと甘酸っぱいレモンの芳醇な香りが本をめくるページからブワァッと立ち昇ってんじゃないかってくらい、読んでると唾が出る。読んでるだけでおいしいの。
本に出てくるウィークエンドシトロン風パンも食べてみたいけど、そもそもウィークエンドシトロンってどんなお菓子なんだろう?
気になって調べてみたら、出てきた写真に一瞬で心を掴まれた。
レモンたっぷりのパウンドケーキに、上からとろーりとかけられた白く美しいグラスアロー。その上にピスタチオとかレモンピールとか散らしちゃったりして。え、なにこれかわいい…罪深…!
フランスの伝統菓子ということで、ガトー・インビジブルに引き続きフランスとはなぜこうもいちいちスタイリッシュなのか不思議である。
でも肩肘張ってないところがすき。生まれ変わったらパン屋になりたいのだけれど、一回はフランス人にもなりたい。
パウンド型も買ったことだし、折角ならば作ってみよう!
ウィークエンドシトロンをつくるよ!
バター100g
砂糖100g
卵2個
薄力粉100g
ベーキングパウダー5g
レモン汁大さじ2
(グラスアロー用)
粉糖80g
レモン汁大さじ1
本当は、レモン搾ってレモンピールにして…ってレシピなのだけれど、あいにく探せども国産のレモンがなくて、レモン汁多めで妥協。
材料を順番に混ぜて180度で30分。きれいに焼けてヨカッタネ!
粗熱とってお楽しみのグラスアロー。白くとろんとした奴にしたくてワクワクしてたんだけど、レシピ通りにしたらなんかすごい薄くなっちゃって、
全然みえない…。
上にはピスタチオと偶然見つけたレモンのドライフルーツを載せてみたんだが、切り分けるときにぼろぼろ落ちた。そうなると思ったぜ。
とにもかくにも週末の朝、早速食べる。意外とちゃんとレモンの香りする。たぶん上に乗せたドライフルーツのおかげ。ちょっと食感モソモソするけど許容範囲!
これはこれでおいしいんだけど、グラスアローがどうしても心のこりで。
翌週もう一回つくった。
何事につけ自分が納得いくまでやり続けてしまう、それがわたしの長所であり短所でもある。
今回は、絶対にグラスアローをとろんとさせたい。パウンド型だと粉糖の量が足りなさそうだったので、マフィン型で焼いた。ウィークエンドシトロン風マフィンということで…。
焼き上がり直後。なんか真ん中の子が、ニュッてなってる。元気が良くてよろしい。
ちなみに今回は買ってきたレモンピールを入れているので前回よりもレモンレモンしている。焼きたて食べたくなって6個中3個は夫とすぐ食べちゃった。ほかほかしてて蒸しパンみたいでおいしいね!って言われたんだけど、蒸してないぞ。
残りの選ばれし3個はリベンジ・グラスアローでおめかしします。
固め、固め、と様子を見ながら粉糖にレモン汁を混ぜていく。
これでどや。
これです、この感じが欲しかったの。白を纏うこの感じ…!花嫁のヴェールみたいな…!
ああ、かわいいじゃないか、いいじゃないか。これはだれかと食べたくなるわ。わかる。
ちなみにお味はやっぱり前回よりも爽やかで、レモンが鼻に抜けていく感じがおいしかった。冷ましても生地が蒸しパンっぽかったのはなんでかは分からないけど。なんで?おいしかったから何でもいいや。
ウィークエンドシトロンは週末に大切な人と食べるもの。
「ねぇ、ケーキ食べようよ」
って一緒においしいものを味わいながらゆっくりお話しする。その時間がきっと尊いのだろう。だから多分、何食べてもいいんだろうけど。
「ねぇ、ウィークエンドシトロン食べようよ」って言えば、要するにそれは「あなたはわたしの大切な人ですよ」ってメッセージになりえたりもするんだよね…。漱石の「月が綺麗ですね」みたいな。そう思うと、つくったウィークエンドシトロン風マフィンが心なしかお月様のように見えてくるよ。
先週末、ウィークエンドシトロンを食べた人はどのくらいいるんだろう。「おいしいね」と交わす言葉の数だけみんなが幸せであればいいね。