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羊を数えてください、私の代わりに。

疲れの量に反比例するかのように、うまく眠れない日々が続いている。

昨日は昼間から用事を済ませ、部活にも行ってようやく帰宅したのは夜の11時だった。お腹の言いなりになってかろうじて夕飯は口にしたけれど、そのまま無意識のうちにベッドに潜り込む。シャワーを浴びる気力もない。着替えを用意して服を脱いで身体を隅々まで洗うという過程がこなせる自信がなかった。

気がついたら泥のように眠っていたくせに、目が覚めたのは寝落ちてからほんの3時間後。まだ夜も明けきっていないから再び微睡みに身を委ねようとしたのに、眠れなかった。いつの間にか窓の外の明るみは増してきていて、一向に眠れる気配のない私は諦めて起き上がることにした。そしてこの文章を書いている。

背筋を伸ばすと背中のあたりが軋む。肩もこれが20代前半の身体かと疑うほどに凝り固まっている。各所がこんなにも悲鳴を上げているというのに、どうして脳みそは休むことをやめてしまうのだろう。

眠気がないわけではないという状態がかえって気持ち悪い。まぶたの奥の方で、睡魔の野郎は偉そうにどっかと腰を下ろしている。そのくせ自らの力を発揮して私を眠りに陥れようとするわけでもなく、ただじわじわとその存在感を主張し続けているだけ。職務怠慢だ。給料泥棒だ。仕事をしろ、私を寝かしつけやがれ。

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(寝ぼけ眼で描いた睡魔様イメージ図)


眠たいのは、かなしい。目の前の現実を生きる覚悟ができているというのに、その意思に反して沈みゆく身体。心が身体に裏切られる感覚だ。そうして無力な自分に泣きたくなる。

不眠というわけではないと思う。なぜなら私は疲労が溜まれば溜まるほど眠れない割に、暇を持て余せば持て余すほどたくさん眠れる人間だから。いつもそうなのだ。疲れていると眠れない。だから私には完全オフの日が必要不可欠だし、毎日出突っ張りの休みなしの日々はひたすらに体力を消耗する。

昼間眠気でどうしようもなくなるのが嫌いだから、眠れるときにはできるだけ眠って疲れを癒しておきたい。それがどうにも叶わないのが近頃の私の身体だ。おかげで昼間は止まらないあくびに悩まされる日々。どうしたものか。


そういえば、あくびを噛み殺すたびに思い出す歌がある。

同世代なら確実に通じるであろうあの「ゆうがたクインテット」。教育テレビで育った私はクインテットのどこか気の抜けた、それでいて核心を突いた歌が大好きだった。他にも「ただいま考え中」や「ちょっと」も、未だにそらで歌えるくらいには印象深い。

あくびと同じように、うちの睡魔様も移せるもんなら移してしまいたい。そしてきちんと眠れる人にめいっぱい眠ってほしい。

さて、この文章を書き始めてから何度あくびを繰り返しただろう。1回、2回、とあくびを数えていく作業は、寝る前の羊を数え上げるそれに似ている。かといってあくびを数えて眠れるわけでもない。私はこうしてあくびを数えることしかできないから、誰か代わりに羊の数を数えて、私を寝かしつけておくれ。



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皐月まう
ご自身のためにお金を使っていただきたいところですが、私なんかにコーヒー1杯分の心をいただけるのなら。あ、クリームソーダも可です。