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【読書感想】2024年104冊目「義経(下)」司馬遼太郎/文春文庫


pp.451--484 旭将軍一騎

軍を発すべきかどうかについては潮合いを見ねばならない。あげ潮に乗らねばならない、時勢のあげ潮に乗れば人力以外の勢いがつき、何者といえどもうちくだいてしまう・・・

会社経営も、潮目を見ることが大切だ。人生は長丁場。目当ての潮が来るまで、じっくりやろう。

朝廷が、時勢々々に乗ってくる権勢家の骨をぬくのには、位をどんどん高めてやればよい。公家のあいだではこれを「位打ち」という隠語でよんでいた。義仲は、法皇の位打ちに遭った。・・・

今の世の中にも、同じような人がいる。

pp.485--519 堀川館

「義経、勝てるか」  と、法皇は、おもわず念を押した。  義経は顔をあげた。 (この男、怒った)  と、法皇は義経の眉間の色をみて、そうおもった。そのむきな怒りさえ、この若者の場合は可愛い。・・・

義経って、純朴なのだろう。でも、どことなく、不安定。僕の周りにもこのようながいるような気がする。

pp.520--554 ひよどりごえ

断定、といえば義経はその点でも神彩を帯びていた。平素はただの若者──それも物事につねにとまどいがちでどこか当惑したような表情ばかりみせているこの若者が、いざ戦闘行動に入ると、神託を告げる巫人のように断定的な言いざましかしない。・・・

敵をあなどらせる人間って、こういう人なんだろうなぁ。天才的な人って、共通して、どこか人間的に欠けていることが多いと思う。

pp.555--589 八葉の車

敵味方を対立する組織として義経はみていた。後世になればこれはなんでもない、あたりまえの、ごく平凡な概念にすぎなくなるが、義経の当時にあっては、義経だけがそれを持っていた。義経は合戦をそのようにしてとらえた最初の人物であろう。・・・

会社でも、組織の繁栄を本当に考えられる人は、ほんの一握りだ。

pp.590--622 屋島へ

頼朝の方針により源氏にあっては尊貴な存在は頼朝一人しかなく、それが頼朝の統制方針であった。むしろ頼朝にあっては父義朝の弟たちである志田義広や新宮行家を追い落したように一族ほど敵であるとさえいえるのではないか。・・・

会社の中に親族がいると、どうしても争いが絶えない。それと同じこと。

pp.623--653 讃岐の海

「小用をしたい」  と、泰経は船頭にいった。ゆらりと船頭は船を岸へよせ、泰経をおろした。泰経は葦をわけて適当な場所をみつけ、そこにしゃがんだ。公家はしゃがんで小用を足す。武家は立ちつつ足す。武家がいかに都で栄達しても小用を足す姿をみれば素姓が知れるとさえいわれた。・・・

初めて知った!今もそうなのだろうか。

義経のとった北進の経路はいまの讃岐街道であった。まず現在の徳島市に出た。その西方にそびえる眉山に平家の警備兵がいることを知り、よじのぼって追い散らし、さらに吉野川を北へわたって北進し、現在の板野町に出ている。・・・

いつも遍路で歩いている道だ!なつかしい。

pp.654--720 源氏八百艘、壇ノ浦

義経のこの当時、武士というものは勝ちに乗じたいくさでこそつよい。しかし、いったん浮き足だてば、いのちあっての物種ものだねということばどおりわれさきにと逃げ散ってしまう。・・・

一軍の勝敗は一軍の勇怯よりも時の勢いというようなものがきめる。敵は時勢にむかって兜をぬぎ、降参してゆく。田内成良の寝返りは節義で論ずべきではなく、源氏が時勢の大いなる光芒のなかにあるという証拠でござりましょう、・・・

これは今の世の中でも同じかなぁ。事業でも、勢いというものがあって、それに乗じた時には、成功する。

pp.721--783 波の上、都大路

義経は、堀川の館で毎夜その新妻をいとおしんだ。この信じられぬほどに痴呆な政治的無感覚者にとっては、世間がどうであるにせよ、わらび姫を抱くことは事件でも政治でもなく、単にかれの性的衝動であるにすぎない。・・・

女で身を滅ぼすとは、まさにこのことだ。

pp.784--843 磯ノ禅師、腰越状

朝官になる、朝官になれば頼朝の家人でありながら朝廷の序列に入ることであり、当然、法皇を頂点とする公家の支配下に入ることなのである。・・・

株式会社は、結局のところ株主が全ての権限を握っている。その株を他人に握られれば、乗っ取られたも同然。他人に支配下に入るということだ。それだけ株の力は大きい。

pp.844--873 堀川夜討

義経はかならず言う。「兄の目はたしかに奸人のために曇っている。しかしその愛情までが曇っているとは思えない。そのことは弟である私のみがわかっている」・・・

そんなことがあろうはずがない。血のつながりを思うがばかりの妄想だ。

pp.874-- 浦の逆浪

行家が指示した時刻から義経はにわかに多忙になった。しかしこの若者の場合、法皇や頼朝や行家のようなおとなとしての多忙さではなかった。女どもを、あちこちの館からかきあつめてひとまとめにして連れださねばならない。・・・

義経のなんと情けないことか。彼の好色が身を滅ぼした。

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松坂 晃太郎  / ヒロボー 代表取締役
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