クレーム・ムースリーヌって、なんだ?[クリーム編vol.8]
「ここの店はクレーム・ムースリーヌが美味しいのよね。あなたもそう思わない?」
うっ、くれーむむーすりーぬってなんだよ!
目の前のケーキの中のどれかだとすれば4択だ。ここで無知を晒すわけにはいかない。それっぽいのを選べっ!!乗り切れ!!
一か八かだっ!!
「あ、ああタシカニこのムースの中のクリーム、クチドケよくてオイシイな」
どうだっ!
「え、いや…。」彼女はぐるりと俺を眺め回し、それ以上なにも言わずに続きを食べ始めた。
どうやら間違った…。
はぁ…、これはお手洗いでグーグル先生に教えを乞う、いつものパターンだ。
おはようございます!真白けいです!
お菓子の面白さ・奥深さを広めるために、見習いパティシエとして皆さんと一緒に学んでいきます。
読んでくれた方は、スキいただけるとすっごく嬉しいです!!ボクのやる気スイッチですので遠慮なく押してやってください!!
今回のテーマは、クレーム・ムースリーヌ です!
聞き慣れない響き…。
でももうクリーム編も第8弾です!ここまで一緒に来れたあなたなら大丈夫なはず!
早速、勉強していきましょうー!!
Crème mousselineって、なんだ?
じゃあまずドンと出してしまいますね。ドドン!!
crème mousseline
(クレーム・ムースリーヌ)
||
クレーム・パティシエールと、
バターまたはクレーム・オ・ブールを混ぜたもの
クレーム・パティシエール+バターか、
クレーム・パティシエール+バタークリームってこと!
…あ、すみません。
クレーム・パティシエールやらクレーム・オ・ブールやらいきなり言ってしまいましたが、
んじゃそりゃい!という方のために復習しておきましょう!
はい、見てきましたかー?
簡単には今から言いますが、よくわかるためには見てみてくださいねー!
では、わかりやすいように両者並べてみましょう。
crème pâtissière
(クレーム・パティシエール)
||
卵黄に砂糖、小麦粉を加え牛乳と混ぜて
炊き上げたクリーム
※バニラで香りをつけることが多い
そして、
crème au beurre
(クレーム・オ・ブール)
||
バターをクリーム状にして、
ムラング・イタリエンヌや
パータ・ボンブ、
またはクレーム・アングレーズを
加えたもの
うんうん。そうだったそうだった。
でも、この2つがフュージョンするとどうなるんだろー?
クレーム・ムースリーヌの活躍の舞台
まず、バシッとしたしっかりしたクリームになります。クリームの中でも液体から固体に近づくというか。形を保てるようになります。
これは、クレーム・パティシエールはとろっとしていますが、バターの冷えて固まる性質が加わり、少し形も保てるようになるためです。
ふんふん。すると、例えばシュークリームの中に入れなきゃいけなかったのが、もっとちゃんと形を保たないといけないお菓子にも使えるようになると。
次に、バターのコクと卵と牛乳の風味の奇跡の出会いです。
これはもう言わずもがなですね。バターの滑らかな口当たりと深いコクにクレーム・パティシエールの甘くて優しい風味、
これ最高です。最&高です。
そして、クレーム・オ・ブールに限れば、クレーム・パティシエールが食感的に軽くなります。
これは、クレーム・パティシエールは泡立てないクリームなのに対して、クレーム・オ・ブールはムラング・イタリエンヌやパータ・ボンブでバッチリ空気を含ませてるからです。
詳しくはさっきのリンクを見てね!
いいっすね。日本人も軽いクリームはお好きでしょ?しかもコクがあると。素晴らしい。
どんなお菓子に使われるかというと、
・フレジエでスポンジの間に挟み、いちごの隙間を埋める
・パリブレストでプラリネで風味をつけシュー生地の間に絞る
・タルトトロペジェンヌでブリオッシュの間に挟む
つまり、結構クリームを見えるように仕上げ、クリームを食べさせる感じが強いんです。
これはさっき言ったみたいに保形性が増して、軽く、しかもクレーム・ムースリーヌ単体でも味わい深い味に仕上がってるからこそ、為せることですねー!
万能じゃん!と思いますが、実は作るのはちょっと注意が必要です。
バターというのは油脂分で、クレーム・パティシエールはどっちかといえば水分です。
水と油。これ混ざりづらい!
これきちんと乳化を理解してないとボソボソのベタベタになるので、作る方はご注意。
乳化についてはまた後日別の記事で一緒にお勉強していきたいと思うので今はさらっとにしておきます。
クレーム・ムースリーヌの由来
はい!今日もやってきました!由来のお時間です!!楽しみだ〜!!
このムースリーヌ、フランス語でmousselineと綴りますが、2つの意味があります。
①モスリン布のこと。
②フランス料理でムース状に泡立てた生クリームを加えて軽く仕上げたもの。
モスリン布ってなんぞ??
ボクが知ってる布は、絹、綿、麻、フェルト、以上!!
…え、あなた知ってるんですか?やったーぜひ教えてください!ふんふん。
…いや、違いますよ、ゴジラと戦ってた巨大な蛾は関係ないですよ。あれモスラ。なに言ってるんですか静かにしてください。
もう。調べましたよ。まあなにやら梳毛やら平織物やら羊毛やら色々と書いてありましたが、どうやら上質な布で、滑らかで柔らかく軽やかな質感らしい。
なるほど。ということはさっきの②、料理の方の軽いという意味もそこから来てる可能性はあります。
それに、滑らかで柔らかく軽やか、これクレーム・ムースリーヌにぴったりな特徴ではあーりませんか。
さらにさらに、ここで追加情報。
17世紀頃、現在のバングラデシュの土地から白く柔らかい平織の綿織物がヨーロッパに輸入されると、これがモスリンと呼ばれるようになった。
17世紀…。そういえば、クレーム・パティシエールの記事で考察したように、
クレーム・パティシエールが甘く作られるようになったのは17世紀以降だった…!
これは偶然の一致か…?
面白くなってきたぞ!!
ということはですよということはですよ、クレーム・パティシエールにバターに空気を含ませて加えてみた、そのクリームができた時、それを口にした人々は思わずこう叫んだことでしょう。
「わお、なんて滑らかで柔らかく軽やかなクリームだ!」
「まるで、最近インド方面から仕入れたと話題のモスリン布のようだ!!」
「これは、crème mousseline(クレーム・ムースリーヌ)と呼ぼう!!」
「うん、それがいい!!」
というボクの妄想です。
いかがでしょうか。お菓子の名前に世相が反映されて例えば人名とかがつけられるのは実はよくあることなので、当時ちょうど折よくこの出来事が重なったのでは?ではでは?
って思いました。
どう思うか、ぜひコメントでお聞かせください!
結局、クレーム・ムースリーヌって、
「完璧主義者」みたいだ!
実際仕上がったクリームは、甘さ、コク、硬さ、滑らかさ、軽さどれもちゃんとある。
でも、乳化がうまくいかなかったり、空気の量だったり、少しの綻びで結構変わってしまうクリームでもあります。
あなたも、もし作る際には細やかな気配りをしてあげてください。さすれば上質なクリームとなって応えてくれるでしょう!
そして、この素晴らしい味わいを数百年前に生み出し、今なお受け継がれて作られている。おかげでボクらは幸せを享受することができてます。本当に感謝。感激。あめあらし。フランス菓子サイコー!!
ということで今回は以上です!
この記事でお菓子に少し興味が湧いたよーという方はぜひスキお願いします!
今回に関連する「バター」「卵」「乳化」に関しても学んでいきたいと思うので、興味のある方はフォローしていただくと、すぐにお届けできます!
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次回の大テーマは…
「クレーム・ダマンド」です!
クリーム編もいよいよ大詰めに入って参りました。ぜひフォローしてクリーム編クライマックスを見届けてください!
参考文献
猫井登、お菓子の由来物語、幻冬舎ルネッサンス、2011
クレーム・ムースリーヌ、パティシエwiki、閲覧日2021-3-17、https://www.patissient.com/wiki/クレーム・ムースリーヌ
モスリンとは?、生地屋本店、閲覧日2021-3-17、http://www.kijiya.com/qanda/mosurin.htm
ムースリーヌ、料理百科事典、柴田書店、閲覧日2021-3-17、https://www.shibatashoten.co.jp/sp/words/detail.php?wid=547
モスリン、Wikipedia、閲覧日2021-3-17、https://ja.m.wikipedia.org/wiki/モスリン
※この記事は上記の参考文献を元に執筆しました。諸説あるものは一部のみ紹介しています。
また、新たな事実を勉強し次第、追記・編集する場合があります。