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「あ、コレクションしたい」を集めます。
降った雨が戻ってゆく かかった虹が巻かれてゆく 陽射しは折れ曲がり 雲は沈んで街に溶け 風がドーナツ状に吹き荒れた そんな初めてのことばかりだったのは まだ僕が若く 経験値のない人間だからかもしれない だけど人々は右往左往している スーパーに米を持ち込んでは換金し ポイントカードを買い親族に配る パチンコから出てくる人は ポケットが玉だらけ 先生は生徒に授業を受け 上司は部下の指示を受けている YouTubeを忘れ 受信料は多めに払うことが流行る マッチングするには 親の
この街に来て まだ1年も経たないというのに カンカンガクガクのやり取りは止まず 人間関係はコジれにコジれている せっかく地元を離れたというのに まったくカルマというものは 確かに付いて回るものなのだろう 三角巾をひたすら作る工場 特に行くアテもなく ハロワでテキトーに選んだ仕事 何に使われているのかも知らされず だかしかしとても厳重な作業場 始業前には必ず身体チェック 三角筋が異常に発達した検査員の 基準を通り越したセクハラ 皆が当たり前のように受け流す 黙々とした作業の
食欲はないけど 食べなきゃいけない そういう先入観で 人の骨肉はできている だから台所に向かうのだけれど カボチャを切ろうとすると 刃こぼれする 嫌になって 洗面台の前に走る 顔を見ると 目が多少充血している 頬に触れると 肌がこぼれ落ちる 嫌になって 玄関を開けて走り出す すると 右足の外側靭帯が切れて 速度が落ちる 痛みはあるが 陽射しが強く 焼けたコンクリートで 靴の裏側が溶けていく その方が気になって仕方がない 嫌になって 目の前のコンビニに駆け込む いつも愛想
かあさん 僕は旅に出た 見知った街から 見知らぬ街へ 見知らぬ街から 未詳の街へ アテもなく 飛び出したわけじゃない 歳が歳だし そんなことは言えやしない だけど アテらしいものはすぐに枯渇して 小さな想定外の連続に いつしか希望を失う時が来る そんなことはわかっている ホントにわかっている? わかっているって どういう状態かわかっている? 自問自答を繰り返すたび 天使は悪魔に 悪魔は魔王に成り変わって 鼓膜を薄く削いでいく かあさん とうさんは元気かい? かあさん 破天
透明度が上がっていく 心の透明度 歳を取るたびにまた 顔を合わせればほら サウナでコポッっと汗をかく そしたらポロッと心がこぼれる そんなことを抱えていたなんて ちっとも知らなかったな 洗い流せない事は増えていく一方で 垢が固まっていくようにも思うけど いつかはきっと黒曜石だったり 果てはダイヤモンドだったりに 変わっていくに違いない ジョッキでグビッと喉を打つ グラスでゴクッと臓器を浸す 青いネイルが場を彩ると レバーが美味いと舌鼓 そしたらポロッと心がこぼれる そんな
「白夜に夜通し行進したことはあるかい?」 目の前のカラッゾ(あるいはカランゾ)と名乗る男は、自分が囚われの身であることを歯牙にもかけず、よほど私が追及する内容とはかけ離れたことばかりを話す。 「南極に着いて、すぐの話さ。きっとガイドの皮を被った狼達にとっては、いつものことなんだろうが、観光気分が抜けないうちに、さっさと事を進めたかったんだろうな」 「"事"ってのは?」 「事は事さ。アンタにだって大なり小なり、抱えている事があるだろ?それを何食わぬ顔して、やり過ごそうって
暗闇を走る軽自動車 ヘッドライト照らす畦道 玄関のぼんやり明るい平屋建 家に帰り着く安心と不安 軋む床 軋む階段 軋まないベッド 紐を引いて明かりをつける 私の部屋だということの確認 すぐに消して YouTubeのチルった光だけで 深まる夜に沈む 夜は紺から黒になる ベッドの下から染み出す水 水位は少しずつ上がる 少しずつ少しずつ シーツが濡れると 身体が浸るまで時間はかからない 顔だけ水面に浮かぶ頃 体温のようなものに 縛られなくていいと思える 天井の木目に 乱反
学校の帰り道 JAの駐車場に人だかり 囲まれた中央にリング おばさんとおばさんが デスマッチ中らしい 片方は赤い三つ編み もう片方は短髪 片方は長ネギを持ち もう片方はゴボウを束にして 取っ組み合い つかみ合い 目を腫らして 鼻血流して 真剣(?)勝負 私もあんな風に ぶつかり合える性格なら いいのだけれど それにしても こんなことしてて 警察沙汰にならないかと 思ってたのは勘違い パトカーが何台か止まってて 一応の警戒体制 何かに備えて 後ろに手を組んだ警官達 観衆が
怖い夢を見た 追いかけられる夢 逃げても逃げても 追いかけてくる夢 振り返るたびに 近付いてくる オジサン、、、 こちとら全速力 歳は取ったが 脚力には自信あり 追ってくるのは めっぽうオジサン しかも歩いて のらりくらり それなのに それなのに どんどん どんどん 差が縮まる 振り返るたび フォルムが少しずつ ハッキリしてくる 当たり前だが ハゲている 前から頭頂部にかけて だけど ハゲていない部分は ドレッド メガネをかけている 昔ながらの 上の縁が 太めの黒の
駅構内に併設されている比較的新しい書店。 学校帰りの女子高生が2人。 彼ピ待ちのミホコ(以下、「ミ」)と、それに付き合わされるサトミ(以下、「サ」)。 興味ないけど、雑誌ザッピング中。 ミ: 「アダルトチルドレンとは、子供時代の家庭環境や親の言動(例えば、アルコールや薬物の依存、虐待など)が原因となって、心が傷つけられた大人を指します、、、」だと!?うちの親ピじゃん。 サ: むしろ、超絶うちの家庭環境じゃん。 ミ: あー、確かに。サトミんちもだ。 サ: 続きは?ちょっ
近頃はぐっと寒く 頭も体も固まる 嫌な季節 呼吸していても 生きていることが多少 止まっているかのよう 意識がここにあってない ビルに点滅する 航空障害灯のよう 災禍は止まない 今も昔も 歳を重ねると テレビは表面を撫でるような 意味のない言葉で溢れている そんな風に聞こえる 「テレビを消しなさい」と 子供の頃 意味を感じなかった母の言葉 そちらの方が重みを増し 秤のバランスを崩していく perfect days 日常の細やかなルーティンが 自分を偽らないで済む 唯一の
ネオン輝く夜の街。 少女「マッチいかがすか?」 酔いどれサラリーマンが千鳥足。 少女「マッチいかがすか?お兄さん。 すぐご案内ですよ」 ホントは興味ある癖に、シカトこ く、スーツ2人組。 と、今度は、丸々とした汗かき、お よび高身長のガリガリが、現れる。 少女「マッチいかがすか?お安くしと きますよ」 丸々「どど、どうする?」 ガリガリ「べ、別にどっちでもいい よ」 丸々「ここに、す、する?他見る?」 ガリガリ「きき、決め
まだ新しさの残る図書館で 2人の男女が 本棚を挟んで背中合わせ 女はジェンダー的にも トラディショナルで 男は最近 迷っているところ 受験を控えたこの冬は 暖冬なのか 急転 極寒か ともかく2人は高鳴る胸が どういう意味かと思索を重ねる 女 「月を見ようと 見上げた首は ヘルニア」 男 「そうさ 夢の世界は いつだって ナルニア」 女 「変な音がする膝 本当に整形外科医は 診療点数分の 触診技術を持っているか」 男 「ワチゴナドゥ 先進医療は
死神から鎌をもらった もう使わないからと 僕を殺しに来たんじゃないの? と聞くと そうだけど 定時は過ぎたし 仕事は今日で終わりだから と言って 僕の胸に鎌を押しやった 思ったよりは軽い 柄は長いから 振ったら重いのかも 彼は(彼女は?) 去っていく後ろ姿ごしに スカルの面を外す 黒い衣も脱ぎ去った ひとり立ちすくむ こんな物をもらったところで 使い方も教わらないで どうしろってんだ 粗大ゴミにしたって 捨てれないだろうし かと言って家に置き場もない 一旦考え
父さんは言った この世は丸い とんと丸いと 水平線の彼方の曲線美 見果てぬ向こう側を追って走れば いずれ元いたところに 立ち返る 海岸線を横に走ったとて同じ 父さんの手は温かった きっと興奮していたに違いない 私はその日から 丸い物を追い 丸い事を求めた 延々と丸を描き続けた年頃もあった 丸い部分を探しては 触らずにはいられなかった 特に目玉が好きだった 魚や鳥 犬や猫 飽き足らず 友の目玉に触れた時の 喜びは忘れられない ある日唐突に 私が父の子でなく 亡き母の子
兎さんは スタートダッシュで 早々に消えてもらって 基本的には 亀さんのペースに合わせて 番組が進みます ガヤ的に色んな動物がやってきて 亀さんをイジリつつ それぞれがネタやったり 歌ったりして盛り上げます 時々 中間地点の兎さんにフリがありますんで その時は一言 途中から終盤までは 寝たフリか 寝てもらってもかまいません スタッフが起こしますんでね テレビの向こうで ゆっくりと ボーっと寝そべって見ている 視聴者に向けて というのが企画側のオーダー 短い時間の中に ど