マッチ売りの少女
ネオン輝く夜の街。
少女「マッチいかがすか?」
酔いどれサラリーマンが千鳥足。
少女「マッチいかがすか?お兄さん。
すぐご案内ですよ」
ホントは興味ある癖に、シカトこ
く、スーツ2人組。
と、今度は、丸々とした汗かき、お
よび高身長のガリガリが、現れる。
少女「マッチいかがすか?お安くしと
きますよ」
丸々「どど、どうする?」
ガリガリ「べ、別にどっちでもいい
よ」
丸々「ここに、す、する?他見る?」
ガリガリ「きき、決めていいよ」
少女「初めてっすか?」
丸々「こ、『ココ』は、初めて、、、
です」
目を合わせない丸々。ガリガリも。
少女「初回50分だけですけど」
丸々「はい。い、いいよな?」
ガリガリ「いいよ、お前が決めて」
インカムがさごそ。
少女「あー、えっと、ご新規2名様入ら
れます。Cです」
Cは、CheckのC。客質注意、のC。
少女「それでは50分ですので、マッチ
棒5本ずつ持って、お入りくださ
い。いってらっさーせー
い!!」
突然の大声に、ビクつく丸々とガリガリ。肩をすぼめて、カーテンの向こう側へ。
遠くから、金髪(中刈り上げ)が小走りでやってくる。
金髪「さみぃっすね、少女さん」
少女「誰も釣れてねーのかよ」
金髪「いや、サツと自治会が合同パト
やってんすよ。キャッチなんて無
理無理」
少女「そこをどーにかこーにかせん
と、一人前ならんで」
金髪「いやぁ、、」
首をクックッとかしげる金髪。
金髪「そういや、さっきの続きっすけ
ど、スクナメって、どこの苗字
なんすか?」
少女「ああ、その話?片親のママン死
んでっから、確かじゃねぇけど
よ、トー横生まれらしいわ」
金髪「トーヨコ?って、あのトー
横?」
少女「他にあんのかよ」
金髪「そんなことあんのかよ」
少女「トー横が荒れてた時代によ、都
と区が一掃したんだと。そんで
最後まで残った女達のことを
『聖戦の少女達』っつってネッ
ト民が崇めたんだと」
金髪「そんなんありましたっけ?」
少女「局所的にバズっただけだから
な。んで、うちのママンがその
少女達の一人だったって話。ス
クナイ、オンナと書いて、そんま
まスクナメっつう姓になったん
だとよ」
金髪「そうなんすね。名前、めっちゃ
舐められません?あ、でも昔っ
からそんなナリだったら大丈夫
か」
角刈り、筋骨隆々の少女を金髪がじっと見る。そして、頭頂部をグーで殴られる。
金髪「イテっ!!」
少女「うるせぇ!一応、女だぞ」
金髪「勘弁してくださいよ」
少女はおもむろにマッチを取り出し、箱に擦って着火させる。
少女「次イジったら、チリチリパーマ
にしてやんよ」
金髪「ひー!」
ネオンの街に、シャンシャンシャンシャン、クリスマスのうるせぇ出囃子が鳴り渡る。