アオハル

まだ新しさの残る図書館で
2人の男女が
本棚を挟んで背中合わせ

女はジェンダー的にも
トラディショナルで
男は最近
迷っているところ

受験を控えたこの冬は
暖冬なのか
急転
極寒か

ともかく2人は高鳴る胸が
どういう意味かと思索を重ねる

女
「月を見ようと
　見上げた首は
　ヘルニア」

男
「そうさ
　夢の世界は
　いつだって
　ナルニア」

女
「変な音がする膝
　本当に整形外科医は
　診療点数分の
　触診技術を持っているか」

男
「ワチゴナドゥ
　先進医療は
　彼の国でしか
　受けられないという」

女
「三文芝居
　物価高騰の波を受け
　六文芝居を
　突破せんとするか」

男
「ジャパニーズソイソース
　我も我もと
　群がる水道点検業者よ
　幸あれ」

女
「ベボラップを
　塗りたくれ！」

男
「そうだ！
　僕たちはまだ若い
　チョコザップ経由で
　消費税は払わぬ」

女
「何時？」

男
「そう、汝！」

女
「違う違う、何時？」

男
「ああ、ごめん
　17時前」

女
「かしこ
　もうちょいか」

男
「ん？
　盲腸か？」

女
「違う！」

男
「すまん！」

女
「あなかしこ
　ファイナルアンサーは
　ファミリーマートの
　入店音とともに」

男
「さもありなん
　サモハンキンポーの鼻うがい
　自若泰然
　よだれ鶏のごとく」

女
「猛禽類の七並べ
　筋肉山脈
　池谷幸雄
　ならびに直樹」

男
「我慢ならずば
　秘湯の誘惑
　原人気質の
　堺正章」

女
「ワッハッハ！
　輪になっておどれ
　VVVの6演者」

男
「ワッハッハ！
　平成ならびに
　令和でジャンプ
　黄色き声援
　鼓膜トランポリン」

女
「ガッハッハ！
　もうじき来るぞ
　魔神の使い
　終業間際の
　作業」

男
「ガッハッハッハ！
　待っていた！
　待つわ
　私
　私
　待つわ」

司書X
「こらこら！
　また君たちか！」

女
「今日はここまで」

男
「ここまで今日は」

女
「いざいざ
　わらわは
　こちらへ
　散」

男
「いよいよ
　あちきは
　あちらへ
　散」

女はこの後
ドナルドのマックで
ポテトがフライするたび
名もなき庶民へ
スマイルとともに
1本ずつ分け与え

男は自宅で
横たわる母の背中を
優しく摩り
まもなく
赤本を破って食べる

次回の約束は交わさないが
自然とまた
あの場所
「社会科学」の本棚へ
2人は参集する
きっと
そっと
キットカット