本屋はどう戦っているか2
前回は、本屋はどう戦えないか、述べました。
今回は、どう戦っているかについて述べます。
本屋はどう戦っているか
薄利で何と戦うか
値段では戦えない本屋は、どう戦うか。
この問題に対して、丁寧な描写をしているのが、前回挙げた『レジまでの推理』です。
本屋は、再販制度によって値段で戦えない以上、全ての本屋が薄利です。
ゆえに、商品を盗まれると大赤字が確定します。
本屋以外も商品を盗まれると大赤字が確定しますけれども、本屋の場合、そのダメージが致命傷になるのです。
利益率の良い商売にならないし、なれないから、本屋は本屋以外よりも盗難防止に力を入れているという側面があるのです。
盗難防止に力を入れなければ経営が成り立たず、店を畳むしかありません。潰すしかありません。
そうでなくても成り立ちにくいのに。
多売は可能なのか
本屋が成り立ちにくいのは、元々が薄利なのに、多売も難しいから、というのもあります。
本屋における多売は、回転率の高い雑誌によって成り立ってきました。
しかしながら、雑誌離れは続く一方です。
2016年に「雑高書底」が終わり、「雑底書高」になって、現在まで至っています。
昭和の読書離れは「雑誌なんかよりも本を読め」だったのですが、令和の読書離れは「雑誌ですら読まれなくなっている」です。
回転率の良い雑誌が売れないと、多売が出来ず、小規模店舗から減っていきます。
既に減ってきているのが、令和の現状です。
有名な「伝説のジャンプ」の店も閉店です。
何で多売が狙えるか
回転率が良くて多売が狙える雑誌が低調となった現在、何で多売が狙えるか。
本屋の苦悩はここにもあります。
売れ筋の本を置いて多売をしないといけない。
けれども、売れ筋の本は他店にもあるわけです。
どこで買っていようと、既に買った消費者には、もう持っているから別に良いや、が生じます。
また、売れ筋の本を売れるうちに売りたくても、「配本制度」により発注数以下しか来ないことも普通にあるわけです。
ゆえに、売れ筋の本の多売を狙うのは大前提で、その上で、関連書籍の多売を狙うのが良い本屋、ということになります。
売れ筋の本そのものだと、各種の状況(店舗在庫、取次在庫、増刷状況等)でどうにもならないことがありますが、関連書籍のほうならなんとかなるということがあるからです。
「何々フェア」のフェア台は、売れ筋の本を売るためだけでなく、関連書籍を売るためにも有効になってくるのです。
本当に薄利しか狙えないのか
とは言え、関連書籍も薄利多売です。
関連書籍も本であるため、再販制度の対象になるからです。
けれども、「本でなければ」薄利ではない利益が狙えるということでもあるのです。
本屋は、薄利ではない利益も狙えるのです。
関連グッズは再販制度の対象ではないからです。
勿論、基本的には本屋なので、薄利が基本です。
(行き過ぎると本屋でなく雑貨屋になります。)
それでも、本屋の本屋らしさを残したままでも、薄利ではない利益は狙えるものなのです。
値段でも商品でも戦えないから
本屋は、再販制度によって、値段では戦えない。
本屋は、取り扱う商品が同一の商品であるから、他店との差別化が図りにくい。
(飲食店のような「味で勝負」が出来ない。)
値段でも商品でも戦えないのです。
値段でも商品でも戦えないから、陳列で戦う。
それが本屋です。
良いフェア台は、本屋の腕の見せどころです。
関連書籍の売り上げに直結するため、購買意欲を向上させるフェア台でなくてはなりません。
勿論、フェア台だけでなく、平台もです。
フェア台も平台も、そこに添えられたポップで、購買意欲の向上や衝動買いの惹起があるのです。
西船橋のポップ姫は、ポップだけが取り柄ということではなく、フェア台姫でもあり、さらには、平台姫でもあるということなんです。
(レジなんてやってる場合じゃねえ!)
商品陳列こそが、本屋の腕の見せどころです。
関連書籍に対する深い理解が、深い理解こそが、良い商品陳列を生み出します。
33年前のベストセラーが再び売れ出すこともあるわけですから。
関連画像
関連画像をいくつか挙げておきます。
参考図書
西船橋のポップ姫が言っていた取次と小売による盗難防止の仕組みは、執筆当時や刊行当時はまだ検討段階でした。
現在は検討段階から実現段階へと移行したため、消費者も目にしています。
薄めの厚紙に注目してみてください。
西船橋のポップ姫が言っていたものです。
似鳥鶏(にたどりけい)さんの『レジまでの推理』はこちらです。