『徳川六代 馬 将軍』連載第五回
第一話 イェド、仲間たちとフウイヌムの国を出、ヤフーの国に到着する(承前) 軍馬にもなれない、種馬にもなれないわたしは、疵馬として、払い下げられることになりました。売られた先は農家でした。農家にもいろいろありますが、貧しい水呑み百姓の家。甚吉夫婦に娘ふたり、息子ふたり、それに甚吉の年老いた母の七人暮らしでした。さらに、コゾウと呼ばれるウマもおりました。
ちょうど田植えの時期で、わたしとコゾウは馬鍬と呼ばれる農具を引っ張って水田の土をかき混ぜる代掻きという作業をやらされました