最初から手分けしたのでは議論は深まらない(2/2)
【ポイント】
全体像や実現イメージすら共有できていない段階にいきなり手分けしたのでは個人の問題意識や影響力の範囲内での小粒な解決策しか生まれない。
日本人には手分けする文化が染みついてる。それが通用したのはビジネス環境がシンプルでやることがはっきりしていた時代だからで、今はダメ。
正解のない問題を解くには、フロントローディングして関係者全員で徹底的に議論し、腹落ちすることが大切。
前回の「最初から手分けしたのでは議論は深まらない(1/2)」ではこんな話をしました。
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大切なことは、取り組む仕事の特性を見極めることです。
これから取り掛かる仕事は、メンバー全員が経験や知識を持っていていきなり分担してもよいテーマなのか、それとも議論を通じて全員で考えを深め、共通のイメージや枠組みをつくり上げ、勘所を養ってから分担すべきテーマなのかを見極めるのです。
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私の周辺には、この見極めが苦手な人が多いようです。
先日、こんなことがありました。
私は、部課長たちが集まる会議室のドアを開けました。このメンバーで集まるのは、この日が初めてでした。私たちのテーマはズバリ「事業分野の拡大」でした。
座長を務める事業開発部長が事業拡大の大雑把な方針を参加者に説明し、最初ということもあってか、その後は方針に対する質疑応答や前提条件の確認、ちょっとしたアイディアなども飛び出し、ブレストに近いかたちになりました。
終了予定時刻が近づいたとき、事業開発部長がこう切り出しました。
「今日は、1回目にしては活発な話し合いができました。残りの時間を利用して、各人に検討テーマを割り振りたいと思います。今後は検討テーマごとに成果を発表し、皆でそれをたたきましょう」
私は心の中で「またか」と舌打ちしました。
全体像や実現イメージすら共有できていないこの段階にいきなり手分けしたのでは、組織の壁の中でも実行に移せる小粒な施策が出てくるだけです。
トップは、もっと大きな成果を期待しているに違いありません。しかも、いったん手分けしてしまうと、他人の検討結果に対しては鵜呑みにするしかなくなります。
私は、参加者を刺激しない口調で割って入りました。
「あと数回、みんなで議論しませんか。共通のテーマを決めて、みんなで考えてきましょう。皆さんは、課題意識も目の付け所も違うはずです。私たちが同じ目的意識、同じ実現イメージで活動できるようになることが先決だと思います。それを実行計画に落とし込めれば、そのあとは手分けして効率的に進めましょう」
案の定、議論してみると、参加者のイメージはまったくバラバラでした。
戦略室長は南米地域への進出がカギを握ると参加者を扇動し、営業部長は得意客が困っている分野を中心に事業拡大すればいいと主張し、開発部長はビッグデータ解析の分野が魅力的だと主張しました。しかし、この1か月後には新事業立ち上げのグランドデザインが完成し、その後の社長賞につながることになりました。
日本人は効率化が大好きです。それもあって、手分けすることが一番だとからだに染みついています。しかしそれは、ビジネス環境が今よりもはるかにシンプルで、やることがはっきりしていた時代の話です。
正解のない問題を解くには、フロントローディングして関係者全員で徹底的に議論し、腹落ちすることが大切なのです。
その上で、全員で改めて議論すれば、各人の着眼点の違いが相乗効果をもたらすはずです。
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