決めないトップは仕事をしていない

「決めることのできないトップが多すぎる」

これは、私がコンサルタントをやっていて思うことです。
大企業の経営者から機能担当チームのリーダーまで組織の「トップ」もさまざまですが、「決めることができない」は共通して受ける印象です。
日本企業の組織はなぜ、このような状況に陥ってしまったのでしょうか。
「成功体験」の功罪はよく話題に上りますが、私は、この状況に至るまでにはトップの「成功体験」が深く関わっていると考えています。

現在のトップの多くは、かつての「作れば売れていた時代」の成功を目の当たりにしてきた人たちです。
この時代の事業課題は「正解の“ある”問題」が主流でした。今、組織を牛耳っているのは「正解の“ある”問題」を解く能力で頭角を現した人たち、言うなれば「正解の“ある”問題」を解くプロフェッシナルだというわけです。
40代の若い層は、この成功を目の当たりにはしていないまでも、「作れば売れていた時代」を体現してきたトップをお手本に、彼らの思想、行動や言動に触れながら学びを積み上げてきた人たちのはずです。

あれから時代は移り、私たちは「正解の“ない”問題」が主流の時代に立っています。
トップの多くは自らの成功体験から「正解の“ない”問題」を「正解の“ある”問題」の解き方で解こうとしています。
私は、このギャップが「決めることのできないトップ」という時代錯誤の状況を招いていると考えています。

以前にも取り上げましたが、正解のない問題を解くには「決め」が欠かせません。
正解がある問題には証明済みの解法が存在し、あえて決める必要はありません。答えを客観的に判定すればそれでおしまいです。ところが、正解のない問題はそうはいきません。決めなければ前へは進みません。

「私の仕事は、部下に働きやすい環境を提供することだ」というトップの時代錯誤発言を耳にしたことがありますが、私なら、返す刀でこう言います。

「あなたの仕事は、決めること、決めてリスクと対峙することです。責任の重さが邪魔をして『決められない』と言うのなら、状況は前には進みません。いずれ組織は立ち行かなくなり、メンバーは居場所を失うことになるでしょう」

率いる組織の大小に関わらず、トップたるもの、間違えるのが嫌で決めないというのは言語道断です。決めることに慣れていないのなら、今回が経験の第一歩だと意を決し最善を尽くすしかありません。
組織や部下に対して責任を取れないと躊躇しているのなら、組織や部下との間で、それを超越できるほどの強い信頼関係を築き上げるべきです。

カルロス・ゴーン氏の報酬金額が話題になりましたが、これは特例だとしても、トップは高い報酬をもらっているものです。専門職の報酬が技術の代償であるなら、トップの報酬は背負っているリスクの大きさに対する代償です。それを忘れてはいけません。

「彼なら一度は失敗したとしても、それに挫けることなく、最終的にはゴールを達成してくれるはずだ」

この期待感に対する報酬なのです。

トップとは、最も影響力のあるサポーターではなく、自分と部下の運命を受け入れた上で最も重い決断をくだす人であるべきだと私は思います。

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