『はじめての構造主義』を読む
本日は、橋爪大三郎『はじめての構造主義』(講談社新書1988)の読書感想文です。
お気に入りの論客の一人
本書は、著名な社会学者(理論社会学、宗教社会学、現代社会論)である橋爪大三郎氏が、東京工業大学助教授に就任される直前、39歳の気鋭の研究者だった頃に書かれたもので、以来何度も重版化されている定評のある一冊です。
現代人のモノの考え方、社会の捉え方に深く根付いている「構造主義」を、初心者にも理解できるよう丁寧に解説してくれている良心的な書だと感じます。この本が、長年読まれ続けてきたことがその証明だし、氏独特の歯切れのよい、軽妙な文章に魅了され、楽しみながら読み進めることができました。
私が著者の橋爪氏の存在を知ったのは、割と最近のことで、会社員生活に自ら終止符を打ち、気儘なモラトリアム生活を謳歌していた頃に数冊の著作を読んだし、オンライン講義サイト『10MTV』に収められている講義もよく視聴しました。私の学びの形成に、欠かせない一人と考えています。
今こそ構造主義を嗜む
本書では、構造主義の開祖を、フランスの文化人類学者、レヴィ=ストロース(Claude Lévi-Strauss、1908/11/28-2009/10/30)に定め、そのエッセンスを丁寧に解説されるとともに、思想史における構造主義の位置付けについても詳しく説明してくれているのが親切だと感じました。
個人的には、構造主義とは何なのかを学べる部分以上に、構造主義にかかわる主要な人物を扱った第四章と、氏の見解を開陳した第五章(結び)が興味深く読めました。
氏は、構造主義が西欧の近代主義(モダニズム)へのアンチとしての性格を有する思想であることを重視し、日本での消化のされ方、受容のされ方に不安を抱いています。その生半可な理解の上に(出版当時流行していた)ポストモダン(ポスト構造主義)を位置付けようとする風潮にも批判的です。
という表現もされています。
昨今は、暴走気味の資本主義、新自由主義に対して、更に分断を押し進めることを是認する加速主義、歯止めをかける防波堤としてのマルクスの再評価、といった風潮が見られます。私は、無意識の内に取り入れてしまっている構造主義の考え方について、理解し、意識しておく必要があると考えており、勉強を続けたいと考えています。
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