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本の値段と恵まれた環境

アメリカの超有名名門大学で学ぶ若者と我が家でお茶しながらあれこれ話していた時のこと。

「日本は本が安すぎます。これ(ショーペンハウアーの文庫本)古本屋で200円とか。」

わかる。しかしその激安な本すら頻繁には買えずに、図書館で必死に借りて何かを掴もうと見えないモヤに齧り付いていた時期がある私は、色々と考え込んでしまう。

もしも本が高かったら、私は学び続けることが難しかったかも知れない。もちろん本ではない何か別の方法を何とか探して学んでいたとは思うのだが、図書館があること、そしてたまのご褒美として古本屋で本が買えたことは、私を確実に救ってくれていた。

そう考えてみれば、確かに日本は、学ぼうという意欲さえあれば、手を伸ばした先に本が比較的届きやすいところにある環境なのだ。もっと多くの人が貪欲に本を読んでいても良いような気がする。もちろん本だけが知識の全てではない。けれど何かを自分の中で整理したり、熟成させたりする脳の使い方のようなものは、本を読むことで修練されていくように最近は特に感じている。

軽いエンタメな本が読みたい時もあっていいし、ちょっと重い理論書に触れたい時もあってもいい。どんなジャンルを読んでいても、物事を編集したり構築したりする力が本から養われていく。

しかし世の中、興味があることが目につきやすいだけなのか、やっぱり「引き寄せの法則」みたいな魔法は存在するものなのか、冒頭で話題に出た200円のショーペンハウアーのタイトルは『自殺について』であった。

私は今年はシオランに勇気をもらっていたので、もちろんショーペンハウアーのこの論にも興味を持っていたし、そのうち読みたいなと脳内積読リストに入っているものだったので、驚いた。しかしその場で「わあ、私シオランがすごく好きだからその本も気になっていたんですよね」とは何だか言えなかった。チキンである。
私が物心ついた時から誰に教わるでもなく心の中に勝手に芽生えていた考えが、44歳にしてやっとシオランの考えととてもよく似ていたことに気がついたことで、私は自分が異常な子ではなく、そんな考え方はとっくの昔に先人たちが述べ終わっていた話であったと知って安心できたわけなのだが、話題が話題なだけに気軽に人と話しづらいわけで、国がロシアなら反国家異分子としてあーだこうだなりかねないような話なのである。

さらに滅亡に向かうべしという意見なので、もう私なんぞ超危険人物として抹消させられる可能性大。

『生まれてこないほうが良かったのか?』この本は読んでみて面白かった。著者は自身でつけたタイトルに対して、「いやそんなことはない」と結論づけたいようであり、だからこそこの本が各所で紹介されているのかも知れないのだが、単純にどのような考えがこれまでに存在したのかを知るために、わかりやすく書かれているところが参考になった。特に、生まれてこなければ良かった、もしくは生まれないことを肯定することと、自殺を推奨することは全く違うという論には、なるほどと納得させられた。

仮にブッダが説いている輪廻から抜け出して解脱することというのを達成する人がどんどん登場したら、普通に考えたら地球上から全員が解脱つまり卒業することになるわけで、つまりそれは人類が滅亡するということになるのだろう。そう考えると地球上の人口が減っているのは、これまで何度も苦しんで輪廻してきた人たちが、いよいよ解脱して、二度と地球に生まれなくて良くなった魂の数が増え、みんな幸せになっていくってことなんじゃないか、とも考えてしまう。魂の輪廻があるとするならば、なのだが。

シオランについてのこの本と、

人類滅亡についてのこの本も

そのうち読みたいリストに入っている。

それにしても、本が安いからこそ、いろいろなことを知ることができる。しかもそれらは全て日本語訳されている。ありがたい。
今の恵まれた環境のうちに、どんどん読んで、どんどん考えよう。

みなさま、冬休みのご予定は?
年末やらクリスマスやらのお金を使わせようという煽りに負けている場合ではありませんことよ。無駄なお金を浪費するより、図書館で本を借り、家にこもって読書の冬休みを満喫するのも、節約と学びが両立できてきっと良いですわよ。

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MariKusu
温かいサポートに感謝いたします。身近な人に「一般的な考えではない」と言われても自分の心を信じられるようになりたくて書き続けている気がします。文章がお互いの前進する勇気になれば嬉しいです。