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【読書】周りがつくり出した病気~勝手に応援!「ビッグイシュー日本版」(VOL.479 2024.5.15)~

「ビッグイシュー日本版」を勝手に応援する記事、第82弾です。そもそも「ビッグイシュー日本版とは何か」をご説明した第1弾は、以下をご覧ください。


今号の特集は「『認知症』を更新する」です。


「家族が先回りして失敗させないようにすればするほど、本人は失敗しないための工夫を考えなくなり、うまくいく方法を見つける”成功体験”が生まれなくなります。家族がこれまでしてきたことを否定するつもりはありませんが、『工夫するということは生きているということ』なんです。どうか”困る自由”を奪わないであげてください」

pp.1011

これは若年性アルツハイマー型認知症の当事者である丹野智文さんの言葉です。まさに丹野さんはいろいろ工夫しているからこそ、発症から11年経った今でも、病気と何とか折り合っているわけです。”困る自由”から連想したのは、”失敗する権利”です。生徒を見ていると、「こういう風にすればいいのに」あるいは「こういう風にしなければいいのに」と思うことはしばしばですが、「この子たちには失敗する権利があるのだから」と思い、あえて黙っていることもあります。失敗することからしか、学べないこともあるので。


「無理やり連れて行かれたデイサービスが嫌で、当事者が『帰りたい』と言えば認知症の”帰宅願望”だと言われ、怒ると”BPSD(認知症の行動・心理症状)”だと言われてしまう。しかし『帰りたい』と意思表示するのは、人としていたって普通の反応ではないでしょうか?」

p.12

これ、非常に納得です。


「認知症の最大のバリア(障害)は、じつは”人”ではないか」とも丹野さんは思っている。
「周りから『この人は何もできません』と言われていた当事者が、私と出会ったことで元気になって、いろんなことができるようになるのを見るたびに、認知症は周りがつくり出した病気でもあるんじゃないかとさえ思ってしまいます。認知症に限らず、車椅子の人や小さな子どもも、周りが待ってさえくれれば自分でできることはたくさんあるのに、待つ余裕のない人が多い気がします」

p.12

これも非常に納得です。発達障害も、周りがつくり出した病気という面もあると思います。


「『認知症で、トイレもできなくなった』とひとくくりにして偏見をもつのではなく、対話の仕方を変え、デザインを通じて環境にアプローチすることで、本人の生きづらさはほぼ解消できると思います」

p.13

これはデザイナーの筧裕介さんの言葉。デザインの力、大事ですよね。


特集以外では、「池内了の市民科学メガネ」が結構衝撃でした。

夏目漱石は、たった数え年50歳で亡くなりましたが、彼が書き残した文明批判の文章を読むと、彼の寿命をとっくに過ぎた私にはとても書けそうにありません。

p.8

うーん、自分が漱石の享年とほぼ同じと知り、いろいろ複雑です。もちろん私にも、漱石のような文章は書けません。

現代の私たちは、より忙しくなり、より思考に没頭する時間が短くなり、未来を洞察する力は衰えているのではないでしょうか。使える物理的時間は長くなったけれど、スカスカの時間を生きているだけと言えるかもしれません。時間の濃縮度が落ちているのです。

p.8

反省します。


「現在は米国的な戦争史観に変わり、『戦争が怖いから武器を持ち、武力で相手に勝つ』という考えになっている。その考えを疑い、おかしさに気付いてほしい」

p.17

これはドキュメンタリー映画『ターニング・ポイント:核兵器と冷戦』の共同プロデューサーの大矢英代さんの言葉。同感です。あと、以下の事実は知りませんでした。

米国内でも、トリニティ実験地から約65㎞の地点でダンスの合宿中だった少女たちが被曝した。巨大な太陽(原爆)を目撃し、彼女たちが雪だと思って喜んで口にした降下物は熱かったという。

p.17


「行政には、街をもとの状態に戻すというより、地域住民にヒアリングしながら、教育と福祉を充実させ、もう一度みんなが暮らしたくなるような持続可能な”レジリエント・シティ”として街をグランドデザインしていく”創造的復興”が求められているのではないでしょうか」

p.19

これは一般社団法人ピースボート災害支援センター(PBV)の上島安裕さんが奥能登について語った言葉。本当に、そうしてほしいものです。そしてここでも、デザインの力ですね。


「食べ物をくれるより、つくり方や調理法を教えてほしい。そうでないと、口を開けて待っているだけの民族になってしまう」

p.29

ミャンマーの少数民族の言葉だそうですが、金言です。


今号も、とても良かったです。


「ビッグイシュー日本版」のバックナンバーは、街角の販売者さんが号によってはお持ちですし、サイトからは3冊以上であれば送付販売していただけます。


コロナ禍のあおりで、路上での「ビッグイシュー」の販売量が減少しているそうです。3ヵ月間の通信販売で、販売員さんたちを支援することもできます。


もちろん年間での定期購読も可能です。我が家はこの方法で応援させていただいています。


見出し画像は、今号が入っていた封筒のシールです。「小商い」で発送作業をしてくださったY.Tさん、いつもありがとうございます!



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margrete@高校世界史教員
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