記事一覧
『世界のすべての七月』読後の覚書
ティム・オブライエン、村上春樹訳の『世界の全ての七月』をゆっくりと読み終えました。色々と穏やかな気持ちになった……。1969年度の大学卒業生が50歳を超えた2001年に同窓会を開き、そこに集ったメンバーのそれぞれの人生を追った群像劇。私はティムオブライエン作は5-6年前に読んだ『本当の戦争の話をしよう』以来だったので、なんとなくヴェトナム戦争のひとという先入観からの読み始め。でも、ヴェトナム戦争の
もっとみるブロンコ・ビリーにまつわるエッセイ 西部劇であることの必要性について
どの映画にも当然のように映っていながら、まるで映っていないかのように扱われているモノがある。映画だけではない。私たちの暮らしにはそんなものが山のようにある。しかしそのあまりにも当然すぎて見逃していた細部が、ふとしたときに映画の中にいる者や物を動かしたとき、忘れ去られていたその存在を急に主張したときは感動的だ。 だからといって「ブロンコ・ビリー」の主人公であるクリント・イーストウッドがかつて存在し
もっとみる子供心と僕らが夢見てきたもの
少し前は「子供心」っていうやつがすっかりなくなってきているような気がしてた。20代前半ってそんな時期で、無理して背伸びして、子供時代をスレて見下して見て、僕らはもう子供なんかじゃないって言ってみたかったのかもしれない。
でも、20代後半に突入も間近になると、子供心っていうやつをどんどん取り戻しているような気がするんだ。
大学を卒業した僕らに待っていたのは、絶え間ない労働で、利益を追従するために