有村 真琴(ありむらまこと)

有村 真琴(ありむらまこと)

最近の記事

だからもう、私たちは“特別”を目指さなくていい。

芥川賞作家にならなくても、何かを物語ることはできる。 中原中也賞を受賞しなくても、詩人であることはできる。 有名映画ライターにならなくても、映画の感想を書くことはできる。 人気エッセイストにならなくても、想いを文章にすることはできる。 他人に憧れられる存在にならなくても、自分を愛することはできる。 だからもう、私たちは“特別”を目指さなくていい。

    • 【感想】短編映画『半透明なふたり』|“半透明”を重ね合わせ、“透明”になった彼ら。

      「涙」は目に見えるが、「悲しみ」を見ることはできない。 「傷」は目に見えるが、「痛み」を見ることはできない。 「身体」は目に見えるが、「心」を見ることはできない。 子どもの頃、目の前にいる相手の思考や感情を、私が完全に理解することはできないのだ、という事実が恐ろしかった。同時に、私の考えていることや感じていることを理解できる人が誰一人いないこの世界に、私は怯えた。 そんな私は、できるだけ人と関わらないように10代を過ごした。それでも私は、心のどこかで期待していたのだと思う

      • 「文章を書く」を考えてみた。

        私は本当に文章を書くのが苦手なのだろうか? 得意ではないにしても、明らかに不格好な文章を目にすれば、そうと分かる。ならば、文章について知識が浅いとかの問題ではない気がする。ひたすら「文章の型」の勉強をしたり、接続詞の勉強をしたりしても、一向に描けるようにならないのは当たり前で、努力のベクトルが間違っていたのだ。 そもそも「文章を書く」とは、どのような行為なのか。それを明らかにしないことには、何をどう頑張ったらいいのかが分からないままになってしまう。 まず、「文章」とは何

        • 映画『流浪の月』感想|見たいようにしか見ない人々

          先日、映画『流浪の月』を鑑賞しました。 あまりにも救いがなくて、観ていて苦しい映画。それでいて、観る人が抱える地獄に優しく寄り添ってくれるような映画でした。 人は、自分に理解できない存在に恐れを抱く生き物なのだと思います。自分とは違う存在が怖くてしかたなくて、攻撃せずにはいられないのだと。 だから、形を与えて、ラベルを貼っておく。そうすることで、やっと安心することができる、臆病な生き物なのだと思うのです。 周囲から“被害児童”として見られ、“かわいそう”だと思われ生き

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        • 有村の映画コラム集
          4本

        記事

          映画『ハケンアニメ!』感想|“不幸だなんて誰にも呼ばせない”

          2022年5月20日に公開された映画『ハケンアニメ!』を鑑賞してきた。 電車に乗り、さいたま新都心のコクーンシティ・MOVIXさいたまへと足を運んだ。気持ちの良い天気だったからか、コクーンシティは家族連れや恋人たちに溢れていた。 上映まで少し時間があったので、紀伊国屋書店で暇をつぶす。昔から本屋や図書館が好きだった。人間を遥かに凌ぐ数の本が存在している空間。その中には、自分を肯定してくれる“誰か”がいるのではないかと、いつも期待していた。 入場開始5分前になって、チケッ

          映画『ハケンアニメ!』感想|“不幸だなんて誰にも呼ばせない”

          書けない僕と自意識

          2W1Hを意識、PREP、SDS、パラグラフ・ライティング、一文一義、3行程度で改行、語尾が重要、省ける順接の接続詞は省略……。 WEB上で文章を書く際、読者に負担をかけないことが重要になる。そのため、世の中には様々な「伝わる文章」「分かりやすい文章」を書くためのルールやノウハウがある。離脱のリスクを考慮する必要があるWEB上で文章を書く際、これらは無視できない。 しかし、僕はいま、それらを意識しすぎて文章を書きあぐねてしまうことが多くなっている。 昔から小説や詩、エッ

          “特別”であると、信じていたかった。

          すこし、昔話をさせてください。 高校2年生の終わりに、私は高校を中途退学しました。当時、なぜそうしたのかと問われても、明確に答えることはできなかったと記憶しています。 今になって振り返ってみると、私が高校を辞めた理由は「“普通”になるのが怖かったから」なのだろうなという気がしています。 中学校まで、それなりに成績の良かった私は、県内でもそれなりに知られている進学校に入学しました。中学校の同級生や両親、塾の講師などからは「あいつは優秀」という評価を受けていましたし、自分で

          “特別”であると、信じていたかった。

          【感想】映画『ベルファスト』|何も知らずに観て欲しいと思った理由

          ※微ネタバレ? ストーリーについてはあまり触れていませんが、まっさらな目で本作を観たい方は、鑑賞後にぜひ読みにきてください! 職場の先輩に勧められていたことを思い出し、重い腰を上げ観てきました映画『ベルファスト』。 本日は11過ぎに起床。家から一番近い上映館を調べ、雨の中「ユナイテッド・シネマ浦和」へと向かう。浦和に来たのはかなり久々。 結論から言うと、最高の映画でした! 98分という短くも濃厚な上映時間。美しいモノクロ映像で写し出される街並みとそこで暮らす人々の暮ら

          【感想】映画『ベルファスト』|何も知らずに観て欲しいと思った理由