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第四章 パートナーを開拓する 『THE PARTNER SALES』

 前章ではパートナーセールスの収益について理論的な角度から分析しました。本章からは実際のパートナーセールスとしての活動について考えていきます。パートナーセールスの業務を①パートナー創出、②パートナー育成、③顧客提案、④関係維持・深化の4つに分けることができるということは第一章でお伝えしたとおりです。これらについて本章から第七章にかけてそれぞれ取り上げていきたいと思います。

 パートナーセールスの売上はパートナー企業なしには立てられません。パートナーセールスの仕事はパートナー探しからはじまるのです。具体的には、候補となる企業をリストアップして、各企業に対してコンタクトを図り、そしてパートナーシップ締結について提案をするという流れになります。それぞれのステップでポイントとなるのはどんな点なのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

候補企業のリストアップ:どんな観点でリストアップするか?

 パートナー候補となる企業はどんな企業なのでしょうか。「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」は孫子ですが、パートナーセールスにおいては「自社プロダクトを知りパートナー候補企業を知れば百戦殆うからず」、まずは自社プロダクトについて理解を深めることが欠かせません。これまでの自社のマーケティングやダイレクトセールスの成果から、どんな顧客のどんなニーズにマッチして受注に繋がったのか分析します。このとき、なるべく解像度の高い状態で顧客像をキーパーソンを含めて描き出していくことが大切です。それは従業員300名程度の製造業の会社で総務を担当しているベテランの女性かも知れませんし、あるいは従業員数十名のIT企業を率いる若い社長かも知れません。そして、その方と接点がある人たちは誰か、他に何を購入したり使用したりするか想像をめぐらせていきます。そうすることによって、パートナーシップを結ぶメリットがありそうな企業を挙げていくことができるのです。そして実際に売る力がありそうかどうかを併せて吟味していくことになります。

 さて、みなさんとパートナーシップを結ぶ企業には必ずみなさんのプロダクトを取り扱う理由があります。その多くは提案コストが少なくアップセルを図れること、注力商材のクロスセルが図れることのいずれかに集約することができます。多くの企業にとって主たる目的が利益の最大化、注力商材の拡販(シェアの獲得)であることを考えれば当然と言えば当然かも知れません。
 少ない提案コストでアップセルできるということはすなわち営業効率が高いということです。例えば、みなさんのプロダクトと同業界の商材を既に扱っている代理店は、そうでない代理店と比べて取扱いのハードルは低いと言えます。周辺知識を既に持っているので新たにインプットする知識は少なくて済みますし、既にプロダクト周辺のニーズの所在について情報を持っているかも知れません。また、営業先が同一部門であるような企業もパートナー候補としてリストアップすることできるでしょう。新たに取引先の担当者と関係性を構築する手間をかけることなくみなさんのプロダクトを提案することができるからです。
 あるいは、みなさんのプロダクトを販売しやすくなるような商材を取り扱っている企業も提案コストが低くなります。例えば、みなさんがスマートフォンカバーのメーカーだとすればスマートフォンを販売する場所、家電量販店やキャリアショップで取り扱ってもらおうとするでしょう。自社プロダクトの上流にあたる商材は何か考えてみてください。
 反対に自社プロダクトの下流にあたる商材には何があるでしょうか。みなさんのプロダクトが導入されることによって販売しやすくなる商材があり、その商材を注力して販売している企業があるとすればパートナーとして活動してもらえる可能性があります。このように注力商材のクロスセルにつながるような企業はパートナー候補となります。
 その他のメリットからパートナーシップ締結に至る場合もあります。みなさんのプロダクトが顧客の興味を引きやすいものであれば、新規顧客開拓を目指す企業はパートナーとして名乗りをあげるかも知れません。彼らはドアノックツールを求めているからです。ゼロから顧客を開拓するには高いハードルを越える必要があります。だから、そのとき顧客を「話を聞いてみよう」と思わせる武器すなわち顧客のドアをノックするためのツールを欲しているのです。
 また、このような場合もあります。SaaSなどはアップデートにより新機能を提供することがありますが、そのアナウンスや活用サポートのために顧客と取るコンタクトを喜ぶパートナーもいるのです。彼らは売り切りの商材を中心に扱ってきたため、顧客との継続的な接点を持ちにくいという課題を抱えていました。なぜこれが課題かというと、顧客との接点がない期間中に別の出入り業者にビジネスチャンスを奪われてしまうことがあったり、それを防ごうとすると「ご挨拶」を名目とした(顧客からすれば余り有意義ではない)時間をもらわないとならなかったりするからでした。それが「今お使いのサービスを追加費用をかけずにもっと便利にお使いいただけるようになりました。よろしければ一度ご案内させていただきます。」ということであれば顧客にとっても有益な時間となるわけです。このような価値をパートナーシップがもたらしたことは、私も代理店の方から耳にして気づいた価値でありました。みなさんのプロダクトについても、きっとみなさんの想像以上にパートナーの方々に提供できる価値がまだまだあると思います。

 ここまではパートナーになってくれそうな企業の特徴について、みなさんのプロダクトとの相性という視点から考えてきました。以下では、もう少し別の視点について検討してみましょう。
 営業活動を行なっているかぎり、すべての企業に競合(ライバル)が存在すると言ってよいでしょう。みなさんにも恐らく競合企業がいるのではないでしょうか。もしパートナー販路開拓に関してみなさんが後発であるとしたら、競合企業のパートナーを確認しない手はありません。WEBサイトの製品取扱い企業が一覧になっていたり、パートナープログラム参画企業の名前が連なっていることでしょう。すべてのパートナーシップが円満関係にあるわけではありません。さらに競合企業のパートナー戦略について何か有益な情報を得ることができるかも知れません。現段階では「競合のパートナーだから無理か」と諦めずリストに追加していきましょう。
 みなさんの競合企業のパートナーにも競合関係はあるでしょう。「敵の敵は味方」という言葉もあります。ビジネスは敵味方ではないとは思いますが、ベンチマークにして事業方針に関する意思決定をおこなう企業もあります。このような企業が「右にならえ」で競合と同じプロダクトを採用する可能性もありますが、ライバルとの差別化するために別プロダクトを探しているということもよくあることです。競合のパートナー企業を眺めながら「この企業とライバル関係にある企業はどこだろう?」と考えながらリストアップを進めてみてください。

候補企業へのコンタクト:コンタクトの方法は?どこにコンタクトする?

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タイトル:THE PARTNER SALES ー3名の営業チームで3,000人の営業組織を味方につける営業理論 パートナーセールスに関す…

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