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第三章 パートナー収益のファクターを分析する 『THE PARTNER SALES』

 本章ではパートナー販路の収益がどのように成り立つかについて分析してみましょう。因数分解して、各項に働きかける重要なファクターを探っていきます。次章以降では具体的な方法論に移りますが、もとを辿れば本章に行き着くため、本章の内容が本書の核であるとも言えます。抽象的な話ではありますが、少しガマンしてお付き合いください。

パートナー販路の収益方程式

 パートナーセールスとしてのミッションの一つは、受け持つ販路からの収益を最大化することです。本章ではその目的を遂げるために収益を構成するファクターについて分析してみます。

 営業の収益は各契約の受注金額を足しあわせた合計となります。平均を用いると次のように表すことができます。

収益=契約数×平均受注金額

上記をパートナー収益とすると、メーカー側の収益はそれに仕切率(卸率とも呼びます。また、紹介取次の場合は手数料率を引いた割合)を掛けた金額となりますので、次のようになります。

収益=契約数×平均受注金額×仕切率(1−手数料率) ーーー①

 続いてマーケティングのファネルという考え方を用いましょう。ファネルとは漏斗(ろうと)の意味で、集客された母集団が見込み客、顧客へと漏斗のようにすこしずつ絞り込まれながらになっていく過程をモデル化したものです。接点を持った潜在顧客をリードと呼びますが、そこから案件が生まれ、契約に至ります。次のように定式化することができます。

契約(社)数=リード数×案件化率×受注率 ーーー②

①②をあわせると、パートナー収益の方程式ができあがります。

収益=リード数×案件化率×受注率×平均受注金額×仕切率 ーーー③

③式をパートナー1社からの収益だとすると、パートナーA社からの収益+パートナーB社からの収益+…というように各社について③式を合計することでパートナーセールス全体の収益を表す方程式にたどり着きます。

パートナーセールスの収益=Σ(A社からの収益+B社からの収益+…)

さて、ここまでの内容でも分かることはゼロではありませんが、営業活動に再現性を求めていくにはまだ解像度が低いと言えるでしょう。それぞれのファクターについてさらに掘り下げてみたいと思います。

リード数

 前節のとおり、接点がある潜在顧客をリードと呼びます。このリードの数が契約数の分母となります。したがって百発百中の凄腕セールスがいたとしてもリードがなければ契約しようがありません。つまり十分なリード数を確保するということが営業力と同等以上に大切になるのです。
 さて、リードには相手からコンタクトしてきたもの(インバウンドリード)と、こちらからのコンタクトで発生したもの(アウトバウンドリード)があります。ホームページなどからの問い合わせが前者にあたり、過去に契約や提案をしたことがある企業などが後者にあたります。

 インバウンドリードは、メーカーやプロダクトにブランド力があったり、社会的な流行に乗ったりすることで増加します。すなわち積極的なマーケティング活動で知名度があるとか、社会状況に鑑みて利用を検討したい(例えば政府がテレワークをつよく推進しているなど)という状況であれば問い合わせは増えてくるのです。しかしながら、そのような恵まれた状況のほうが稀です。パートナーセールスにおいてはマーケターの活動の成功を祈りつつ、アウトバウンドリードを増やす方法を考えるほうが賢明と言えるでしょう。

 それではアウトバウンドリードはどのように増やしたらよいのでしょうか。パートナーセールスにおいて、アウトバウンドリードはパートナーがコンタクトできる潜在顧客数の総和であると言うことができます。パートナーを開拓する際や注力パートナーを検討する際に、どれくらいの顧客にコンタクトできるかということを想定しておくと良いでしょう。判断材料としては既存顧客数や営業人員数(これらはヒアリングするまで分かりません)、営業拠点数、二次代理店数などがあります。ここでは新規コンタクト可能な顧客数は、販路、営業人数、事務所数で求められるものとしましょう。※Y=F(a、b)という表記は変数Yは変数a、bの関数である、すなわちa、bによって決まるということを意味します。

リード数=インバウンドリード(ブランド力、市況)
    +アウトバウンドリード(既存顧客数+新規コンタクト可能な顧客数)
新規コンタクト可能な顧客数=F(パートナーの販路、営業人数、事務所数)

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タイトル:THE PARTNER SALES ー3名の営業チームで3,000人の営業組織を味方につける営業理論 パートナーセールスに関す…

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