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【エッセイ】ポケモンで現実逃避
ほんとうにやりたいことがわからない。ぼくの場合、ほんとうにやりたいことについて考えはじめると調子が悪くなる。ぼくがほんとうにやりたいことは詩を書くことだということになっている。でも、最近は自分の書く詩に飽きてしまった。自分を上手く詩のモードにすることもできない。
ぼくは以前、詩を書くだけの人間だった。それが、最近は多趣味になっていった。詩を書いているのは詩しか書けないからだった。それなのに、い
【詩】大人になるための詩
いつの日か
大人になるとしても
いまのぼくは
曖昧な輪郭をしていて
外を歩いただけで
いろんなものがくっついてくる
すぐに不安になってしまう
雑踏のなかで
自分を見つけることさえできない
よく似たひとを見かけたんだ
暗い眼をした中年の男だった
大人になることは寂しいことだった
いつの日か
大人になるとしても
いまのぼくは
いつまでも言葉と戯れていて
未来には光を束ねるための
ガラスでできた場所
【詩】やさしいだけの一日
きょうはやさしいだけの一日だった
風がゆるゆると吹き
空にはもやもやがかかっていた
草花は半分眠っていた
やさしいだけの一日に
ひとは働いたりはしない
なんとなくゆっくりとした気持ちで
朝のコーヒーをいれる
きょうのような日には
うす緑色の映画を見よう
ぼくは彼女に電話をかける
いまからふたりでどこかに行こう
ぼくたちは海辺に座って
とくになんでもない風景を眺める
やさしいだけの一日には
怒
【詩】夜は昼で汚れている
夜は昼で汚れている
ぼくの影は行方不明になってしまった
影はいま 夜のなかに隠れている
影はタバコをふかしている
汚れてしまった夜は
更けていくにつれてまた澄んでくる
夜のなかを
どこまでも沈んでいくことができる
それでもぼくは呼吸をすることができる
偶然できた静かな場所で
いままでの人生のことを
振り返ることができる
ぼくはかわいそうな父と
かわいそうな母から生まれた
かわいそうな子どもだ
【エッセイ】なぜなのかはわからない
最近、いろんなことが上手くいかない。なぜなのかはわからない。もしかすると、あまり文章を書いていないせいかもしれない。たまには、こんな風にしてとくになにも内容がなく、読んでもあまり役に立たないような、そういうような文章を書くのもいいかもしれない。それによってすこしは頭が整理されるかもしれない。
短歌の結社に入っていない。結社に入ろうとおもって、半年が経った。この前のお盆に連休をもらったとき、そ
【日記】セロトニンが不足している
2024年8月26日(月)晴れ
変な夢を見たので、朝の八時に起きた。きょうは休日だったけれどスーパーに買い物に行っただけで、それ以外は家にいた。米不足なので麺類と食パンを買った。どちらかと言うと地味な一日だった。でも、地味なりに完成された一日だった。早起きしたお陰か、時間があったので映画を二本見た。一本は北海道のうつのフォロワーの好きな映画監督、キム・ギドク監督の『春夏秋冬、そして春』で、もう
【エッセイ】子どもの頃はゲームが好きだった
もうぼくはダメなのかもしれない。でも、まだ大丈夫なのかもしれない。それはわからない。
最近は、店長がつくった一日にやることのリスト、作業表を見ると憂うつになる。作業表はやることが書いてあって、それをやったらそこに確認のために名前を書く。ぼくともうひとり障害者雇用の同僚の二人でその表を埋めていく。ぼくはやる気がない。どの仕事も雑用ばかりだし、ほんとうはそんなに毎日やる必要もない作業だとおもう。こ
【エッセイ】二〇二四年の夏休みの記録
仕事はまあまあやっている。ぼくはお盆に六連休をもらった。ぼくは普段は、配送業者のひとが届けてくれる段ボールを開梱して、なかに入っている商品を仕分けしている。だから、配送業者がお盆休みに入ると、仕事がなくなる。そういうわけで、店長に頼んで休むことにした。
店長は自分が長期休みなんていらないひとだからか、ひとが長く休みたいと言っても、あまりそれについて理解がない。ぼくの目から見ると店長は働きすぎな
【詩】ソフトキャラメルのような午後
ひとりでいると
柔らかくなっていくのがわかる
自分で自分自身の
柔らかさにはまって溶けそうになる
とても心地いいけれども
ダメになっていくような気がして
すこし不安だ
でもたまに
知らない人間と会うと
私もそのひとの形を真似て
人間らしくなっていく
人間って退屈だ
だから私は
天気の話で適当にやり過ごす
きょうのような穏やかな天気の日には
ひとりで
自分の柔らかさにはまって
自分自身を溶かす
【詩】詩人たちの水切り
詩人たちが
川辺に集まって水切りをしていた
詩人たちは
丁度いい言葉を探して
うつむいて歩く
軽くて平たくて
色のついていない言葉が
いちばん役に立つ
ぼくは偶然見つけた
薄いグレーの小石を
水面に向かって
絶妙な角度をつけて投げる
でもぼくは
あんまり上手くないから
いい詩人は
複雑な形の言葉でも
上手く跳ねさせることができる
金平糖のような甘い言葉や
あられのようなゴツゴツとした言葉が
【掌編小説】かなしみの果て
ぼくは駅前の広場に立っていた。駅前の広場には大きな街路樹があって、その辺りにいろんなひとがいた。待ち合わせをしているように見えるひと、パチンコ屋のティッシュを配っているサンドウィッチマン、酒を飲んでいるおじさん、コンカフェの女の子などがいた。コンカフェの女の子はメイド服を着ていた。風が吹いて、街路樹の梢を揺らした。木の葉がハラハラと落ちた。十月の静かな午後だった。
電車が来たのだろう。駅からひ