以倉敬之│まいまい京都/東京 代表

「まいまい京都」代表。御用庭師や考古学者など、600人を超える各分野のスペシャリストとともに、年間約1,000のまち歩きツアーを開催。2018年には「まいまい東京」スタート。京都モダン建築祭、神戸モダン建築祭、東京建築祭実行委員。NHK「ブラタモリ」清水編・御所編・鴨川編に出演

以倉敬之│まいまい京都/東京 代表

「まいまい京都」代表。御用庭師や考古学者など、600人を超える各分野のスペシャリストとともに、年間約1,000のまち歩きツアーを開催。2018年には「まいまい東京」スタート。京都モダン建築祭、神戸モダン建築祭、東京建築祭実行委員。NHK「ブラタモリ」清水編・御所編・鴨川編に出演

最近の記事

ガイドは「知識の伝授」より「愛情の伝播」を【まいまい京都のメソッド公開⑩】

■おもろい先生、おもんない先生はどう違う? つい先日のことだ。小6の娘が困った顔をしていた。彼女の手には、文字が詰まったレジュメの束。今度、ジュニアガイドとして建築を案内することになったのだ。「こんなに覚えられへんねん」とため息をついている。 巷には、ガイドといえば、正確な知識を淀みなく話す人というイメージがあるのかもしれない。けれど、私はそうではないと考えている。 娘に問いかけた。「学校の先生でも、おもしろい先生とおもんない先生おるやろ? どんな先生がおもしろい?」。

    • 企画会議は一見さん目線で〜トラベルジャーナル2023年10月16日号掲載コラム

      ぶらっとまち歩き着地型プランニングガイド vol.7 (2023/10/16) 企画会議は一見さん目線で ツアーに参加してもらうためには、その魅力を最大限に引き出し、他の人にも「面白そう」と思ってもらわなければならない。まさに愛情の伝播の事業 化である。 新コースは週に1度の企画会議で検討される。といっても、企画書やプレゼンテーションはない。発案者が企画のネタをスプレッドシートに1行書いておく。私や他のメンバーから「面白そう」の一言が出れば企画は承認だ。 発案者はつい

      • 自粛ムードに流されない【まいまい京都のめざすもの⑪】

        ■ツアー実施は、参加者さんとの「約束」 まいまいは、ツアーを実施することは参加者さんとの「約束」だと考えている。旅行代理店によるパックツアーの場合、「最少催行人数」が決められていることが多い。最少催行人数に達しなかった場合、そのツアーに参加したい人がいても、ツアーは実施されない。 まいまいでは、そのようなことは基本的にしない。正直にいえば、参加者が集まらず、実施するほうが赤字になるツアーだってまれにある。けれど、赤字になるからというこちらの事情で、さまざまな都合をつけて「

        • 参加者さんと呼ぶ理由〜トラベルジャーナル2023年9月18日号掲載コラム

          ぶらっとまち歩き着地型プランニングガイド vol.6 (2023/9/18) 参加者さんと呼ぶ理由 私たちは「お客さま」とは呼ばず「参加者さん」と呼ぶ。われわれのツアーは一方的なサービスの提供ではなく、参加者、ガイド、スタッフが一緒に価値をつくり上げていく共同プロジェクト型事業だからだ。同様に「商品」ではなく「ツアー」、「販売開始」ではなく「受付開始」。言葉から価値観を共有していこうと考え、そう統一している。一般的な旅行会社や観光事業者との違いといえるだろう。  私はか

          「京都モダン建築祭」のnoteができました!

          まいまい京都が事務局として関わる「京都モダン建築祭」のnoteページができました! noteでは、最新情報や今年のトピック、通なテーマからおすすめの楽しみ方まで、京都モダン建築祭がますます楽しみになる情報を配信していく予定です。ぜひ、フォローしてください。

          「京都モダン建築祭」のnoteができました!

          建築ツアーを定着させたい【まいまいの目指すもの⑩】

          ■建築ツアーを定着させたい まち歩き事業をスタートさせてから13年が経った。3年前からは、京都モダン建築祭など、建築公開の大規模イベントにも携わるようになった。まいまい京都を設立した2011年に比べれば、ガイドさんとともに街を楽しむ「まち歩きツアー」の面白さは少しずつ認知されてきたように思う。 次の夢は、さまざまな建築に「建築ツアー」を定着させることだ。たとえば京都市内の魅力的な建築で週1回、定期的にガイドツアーが実施されている状態をつくってみたい。 ■「建築」を旅の目

          建築ツアーを定着させたい【まいまいの目指すもの⑩】

          京都モダン建築祭〜トラベルジャーナル2023年8月14日号掲載コラム

          ぶらっとまち歩き着地型プランニングガイド vol.5 (2023/8/14) 京都モダン建築祭  昨年11月、京都で建築一斉公開イベント「京都モダン建築祭」が開催された。京都市、京都市観光協会等からなる実行委員会と京都市が共催。市内3エリア36件のモダン建築が参加し、初開催ながら3日間で延べ約3万人が訪れ、予想を大きく上回る反響となった。まいまい京都は実行委員および事務局として京都市や実行委員会と共にこれを立ち上げ、現在も事務局を担っている。  なぜ、まち歩き団体が建築公

          京都モダン建築祭〜トラベルジャーナル2023年8月14日号掲載コラム

          まち歩き団体の事務局とは?【まいまいのお仕事紹介】

          まいまい京都/まいまい東京では、まち歩きの企画や運営を担う事務局メンバーを随時募集している。まいまい京都/東京の募集ページには、事務局の業務として「ツアー/イベントの企画や同行」「ガイドさん等とのやり取り」など書いてあるが、具体的にはどんな仕事なのだろうか。事務局メンバーに聞きながらまとめてみた。 ■仕事内容:まち歩き団体の事務局は「編集者」に似ている「まち歩き団体の事務局」と言われても、なかなかピンと来ないかもしれない。まいまい事務局の阿比留(あびる)さんは、ツアー企画の

          まち歩き団体の事務局とは?【まいまいのお仕事紹介】

          面白い人探しから 〜トラベルジャーナル2023年7月17日号掲載コラム

          ぶらっとまち歩き着地型プランニングガイド vol.4 (2023/7/17) 面白い人探しからまいまい京都のツアーは「どこへ」よりも「誰と」を重視する。従来の行政系まち歩きで多いのは、まずどこを歩くかルートを決める。そこに簡単なタ イトルを付けてガイドを募集。公募しても面白い人は集まらないので研修する。 私たちは逆だ。まず面白い人を探す。そしてツアータイトルを徹底的に考える。これが決まれば企画は半ば終わったようなもの。あとはタイトルに合わせてルート等詳細を詰めていく。大事

          面白い人探しから 〜トラベルジャーナル2023年7月17日号掲載コラム

          だから私たちは「値上げ」する【まいまい京都のめざすもの⑨】

          まいまい京都のツアー参加費は、段階的に上がっている。なぜ、私たちは値上げをするのか。その意図を説明したい。 価格は買い手へのメッセージそもそもの話だが、「価格」や「値段」がどのように決まるものなのか考えたい。社会の授業では、需要と供給のつりあうところで値段が定まると教わる。たしかにそうかもしれないが、それは最終的な話だ。 値段が落ち着くまえには、個別の売り手がそれぞれの価値観で「価格」を設定している。価格の前提には、いくらで売りたいかという「売り手の価値観」が潜んでいる。

          だから私たちは「値上げ」する【まいまい京都のめざすもの⑨】

          東京の風景を変えた!2024年、はじめての東京建築祭【まいまい京都のめざすもの⑨】

          東京建築祭が、2024年5月25日〜26日に開催された。東京ではじめての大規模な建築公開イベントだ。建築祭パンフレットを持つ人たちがあふれ、各建築には長蛇の列ができた。街の風景を一変させた東京建築祭の様子をレポートしたい。 想定以上の注目度が街をおおう初日の朝8時、東京建築祭のwebサイトが落ちた。アクセスが殺到している。日本橋の貸し会議室に事務局メンバーが集い、対応に追われている。注目度の高さを痛いほど感じる。日本橋や銀座、築地など、各エリアに散らばったスタッフから悲鳴の

          東京の風景を変えた!2024年、はじめての東京建築祭【まいまい京都のめざすもの⑨】

          「愛情の伝播を事業化する」〜トラベルジャーナル2023年6月19日号掲載コラム

          ぶらっとまち歩き着地型プランニングガイド vol.3 (2023/6/19) 愛情の伝播を事業化する創業以来、まいまい京都は着実に成長を続けてきた。コース数は11年春の31コースから現在の年間約1000コースへ拡大。売り上げはコロナ禍でも変わらず右肩上がりを維持してきた。ボランタリーな取り組みが多いこの分野で、なぜそんなことができるのか。なぜ成長と拡張を続け、次々と新規事業を展開できるのか。その核心はたった一文で言い表すことができる。 「愛情の伝播を事業化する」。これこそ

          「愛情の伝播を事業化する」〜トラベルジャーナル2023年6月19日号掲載コラム

          楽しくなければ「学び」じゃない【まいまい京都の目指すもの⑧】

          「知る」から「学び」が始まる前回の記事で、まち歩きツアーを通じて「知の民主化」をしていきたいと書いた。では、具体的にどのようにして「知の民主化」を進めているのか、まとめてみたい。 まいまいの企画会議でよく話題にのぼることがある。それは、「そのツアーに参加することで、参加者さんがこれまで知らなかった世界に出会えるかどうか」という点だ。まいまいツアーは、未知の世界に触れる驚きを味わえる。 ツアーに参加すると、「いま歩いたこの道、じつは暗渠で」とか、これまで知らなかったような知

          楽しくなければ「学び」じゃない【まいまい京都の目指すもの⑧】

          もっと「知の民主化」を【まいまい京都の目指すもの⑦】

          日本人は学ばない?びっくりするニュースを見た。社会人の勉強時間が「平均1日13分」だという調査結果だ。これは総務省が2022年に実施した「社会生活基本調査」によるもの。この報告を受け、「日本人が勉強するのは大学までで、働きだしてからは勉強しないのだ」と結論づけていた記事も見たが、私は異なる仮説をもっている。それは、日本人が「勉強」や「学習」だと考えている範囲がきわめて狭いのでは、ということだ。 この調査の設問はこうだ。「仕事・学業として行うものを除き、知識・教養を高めるため

          もっと「知の民主化」を【まいまい京都の目指すもの⑦】

          「心底面白がっているから」〜トラベルジャーナル2023年5月2日号掲載コラム

          ぶらっとまち歩き着地型プランニングガイド vol.2 (2023/5/2) 心底面白がっているから まいまい京都は昨年約1000コースのまち歩きツアーを開催した。どんなコースがあるのか。「仏師・我休さんのお仕事拝見!日本中から依頼が絶えない工房へ」など仕事への愛をガイドするツアーは多い。庭師、菓子職人、考古学者、お坊さんなど自身がガイドするからこその面白さ。愛をもって仕事に打ち込む人はクールで格好いい。いつもの景色がさまざまな仕事によってつくられていることを知れば、まちが一

          「心底面白がっているから」〜トラベルジャーナル2023年5月2日号掲載コラム

          建設コンサルタンツ協会 協会誌「Consultant」vol.303に寄稿しました

          建設コンサルタンツ協会誌「Consultant」vol.302(2024/4) 特集 違う景色に見える旅 〜大人の修学旅行〜  https://www.jcca.or.jp/kaishi/303/303_toku4.pdf 記事一覧は以下のURLからご覧になれます。 「Consultant」vol.302  特集 旅 〜知的好奇心に誘われて〜

          建設コンサルタンツ協会 協会誌「Consultant」vol.303に寄稿しました